学生時代、出席を取られたとき。
今時は男女混合のあいうえお順なのかも知れないけれど、当時は男子あいうえおの後に女子あいうえお、の順だった。
だから、後半の返事はみんな可愛い高い声。……なのにあるとき男子が間違って挟まったのか? と思うようなことが起こる。急に1オクターブくらい落ちる低音になるのである。そしてその次の返事からはまた高くて可愛い、に戻る。あるときとは、もちろん私が呼ばれたときである。
……この切なさをわかってもらえるだろうか。
私はそれほどに低く、しかもくぐもって通らない声の持ち主なのである。
出席を取られるときはもちろん、音楽で合唱するときも、授業で何か発言するときも。とてもじゃないが、可愛いとは縁遠い、しかも男らしくカッコイイとかからもかけ離れている部類だった。
何か言っても声が通らないので相手が聞き逃したりする。小学校の頃は無視されたのかと思って本気で悲しかった。返事をしているのに「しかと?」とか言われたりもして、嫌われているのかと悩み抜いた。
何年かして、初めて声の低い女子を発見。彼女から「私可愛くないんだよね……」と愚痴られて、ああ同じ悩みを持つ人がいた! と、少し明るい気持ちになったのを覚えている。
いつだったか、NHKの女子アナウンサーの「声が低いことがコンプレックスだった」みたいな話を聞いたことがある。女子アナといえば、才色兼備、女子のトップクラス集団ではないですか。なのに同じ悩み? 食いつくと、彼女らのお仕事は、むしろ声が低い方が落ち着きが感じられて良いのだそうだ。
初めて聞いた「低さ」の長所!
前向きの要素があると知った喜びもつかの間、……それはそれで、私の場合はちょっと困った。
声へのコンプレックスがあったせいで、私は口数もそう多くなかった。それは、声の低さと合わさって、すごく落ち着いたしっかりした女子、というイメージになってしまうみたいで……。
いえいえいえ。
実際、めちゃくちゃ間抜けでスットコドッコイ、つまらないミスを百万回も二百万回も繰り返してきて、自分のやることなすこと全てに自信が持てない人間である。
だから、しっかりしている、といった第一印象を持たれると、いきなりのハードルが高すぎて、後はどんどん落ちていくだけ。印象は悪くなっていく一方。
と、そういった具合に、声が低いせいで随分と人付き合いに苦手意識を持ち続けてきた。正直、得をしたと思えた覚えは1度もない。
宝塚で、下級生の子達が一斉に足を振り上げるロケットと言われるダンスがある。そのときに「ヤッ」と入れる掛け声は、男役娘役問わず可愛く高い声でなくてはならない、のだそうだ。
私、宝塚には入れない……(←声以前でアウトです)。
でも、次に女子に生まれてくるときがあれば、高くて可愛い声を持っていたいなあ。そして人生どれだけ違うんだろう、と比べてみたいと思っている……。