ヨーロッパ方面に旅行に出た。実に30年ぶりのことである。
前回は、学生の時だった。卒業前に海外へ旅するという風潮があった時代。それに乗って自分も格安ツアーで出かけた。
今回、そのときとかぶっている旅先もあったが、何一つ覚えていなかったので新鮮に楽しめた(いいのか悪いのか……)。
その果てしなくおぼろな記憶力でも、卒業旅行の時とは変わったな、とオドロいたことがいくつもあった。
まずはもちろんスマホ。
自分の場合、便利さの面でそう言うのではなく、むしろめんどくさくて思ったのだった。
当然昔はそんなものはなかったので、何も考える必要はなかった。ところがこれ、持ち歩かずにはいられない必需品となった。けど、自分のようなあまりスマホに長けてない人間がヘタに持っていると、便利さより不安が先立つ。渡航先でへらへら何も考えずに使うとぺらぼうな高額料金となる、なんて話を聞くわけで。
どういう電波が出ていてアプリがどうの、電話とネットは違うの、データローミングがどうの、と、この器械をよく理解していないので考えるのがイヤになり、家に置いてっちゃおうかな、とすら思った。
結局、旅行会社お薦めの「Wi-Fiレンタル」を借りることにしたが、その検討段階であちこち聞き回って疲れ果てた。
ドイツ語圏内に行くので辞書とか必要? とまたまたジタバタしていたら、Wi-Fiレンタルのお店で翻訳機も勧められた。おお、こんなものまで今は存在するのか。ドラえもんに出てきた翻訳こんにゃくが、現実に存在する時代になったというオドロキ。
昔は「地球の歩き方」とか旅行フレーズの翻訳集的な重たい冊子をバッグに突っ込み、それぞれの国の「ありがとう」「こんにちは」などをしゃべってみたりした。
が、この機器は、日本語を言えば即座にそっちの言葉に言い換えてくれるという優れ物。74言語にも対応しているとな。
ただし、結果的にはどちらもほぼ必要なかった。Wi-Fiならホテルで使えたし、めちゃくちゃ拙くても英単語のつなぎ合わせであちらの人は親切に教えてくれたし。
それからカメラの進化のオドロキ。
昔はフィルムを白い円筒ケースにいくつも持って行って、しかも旅行後現像に出してから手振れや変顔に気付いて歯噛みしたものだった。
今じゃちっちゃなデジタルで荷物にもならず、その場ですぐに出来映えを確認、何度でも撮り直しが可。
あらためて考えると感極まる。
また、ガイドさんの解説を受けるイヤホンマイクというのを初体験。ガイドさんが発信器に話し、こちらが受信する仕組み。
離れていても聞き逃すこともなく、音声もクリア。いつの間にかガイドつき観光とはこんなシステムになっていたことにオドロキ。
ただ、声が近くに聞こえるもんで一緒に動いているものと錯覚する。あちこち目移りしている間に迷子になる危険性は大。
そして、昔はメールなんかもちろんなかったから……送り出す親が自分に一つ約束をさせた。
「毎日絵葉書を一枚出す」こと。
忠実に必ず寝る前、ハガキにびっしり感想を書いた自分にオドロキだ。内容は全く覚えていないけれど、今思えばほっこりする風流な約束だった。
実家を探せばどこかに取ってあるのだろう。でも、読みたいような読みたくないような。もしかしたら今回の旅行とほとんど変わらない感想かも。30年の成長がまるでない、と思い知らされ、それが一番のオドロキかも知れないから……。
(了)