「ガラスの仮面」をご存じだろうか。なんて愚問か。まだ連載中の、美内すずえさんの演劇大河マンガである。長年見守ってきた者としては、マヤと亜弓さんの決着を早く見たいものだが、永遠に妄想していたい気もする。このマンガがそれくらい深く心に刺さっている方は、私以外にも大勢いらっしゃるだろう。
ところで、「ガラスの仮面」より前(あるいは並行して)、美内すずえさんは恐怖系のマンガもたくさん描いておられる。「13月の悲劇」「金色の闇が見ている」「白い影法師」「黒百合の系図」「妖鬼妃伝」と……タイトルを並べるだけでも怖い。
そんなことを思い出したのは、最近ニュースで、神奈川県寒川町のひまわりのことが報じられたのがきっかけである。
寒川町はその名前からどうしても寒い冬のイメージが強い。それをどうにか払拭したいと「冬のひまわり」にトライし続け、近年咲かせることに成功したのだという。
背丈40センチ程と少し小さめだが、7万5千株が咲き誇る映像は壮観。摘み取りもできるというので出かけたいと思っていたのだが、結局行けずに来年への課題となった。
「冬のひまわり」。
美内すずえファンならばこのタイトルの短編を読んだ方も多いだろう。私は傑作選の文庫を買い集めたときに初めて読んだ。これも、どちらかと言えば恐怖系に近かった。
内容は……(これから読みたい方、ネタバレすみません)
偶然見た絵画の背景に、雪の中に咲くひまわりを見つけ、強く惹かれた少女。「冬に咲くひまわりなんて」と笑われ、バカにされる中、何年も探し追い求めていく。辿り着いたのは永遠に冬の幻の村。そこでようやく「冬のひまわり」を見つけたものの恐ろしい思いをし、逃げ切った後にはロマンを追うのをやめ、現実を歩き出す。……そんな話だった。
このタイトルが秀逸だと思う。
読み手100%の立場の初読の時、「え? 何のこと?」と引っかかりを感じた。書き手になりたいと四苦八苦している立場の今、そういう引っかかりがあり、かつ内容にピッタリリンクするタイトルを付けるのは、実に難しいとわかる。
「冬のひまわり」とは、現実にはあり得ないものの象徴とされていると想像する。
話には、ロマンばかりを追い求めて失脚したお金持ちも登場するし、ひまわりを追っかけたために主人公も、当時女性の幸せと思われていた玉の輿のチャンスや友人達を失う。
でも非現実的なものに浪費するのは無駄、といった一般論の中で、希望を持ち続けた主人公は真の理解者を見つける。また、彼女が知らないうちにその希望のバトンが次世代に継がれていく、というラスト。
あり得ない幻に導かれることもある、と。でも。
これは40年以上も前に描かれたお話。
今や寒川町には「冬のひまわり」が咲き誇る。12月に摘み取ることができる何万株が存在する。素敵だな、と思う反面、もう「あり得ないものの象徴」としては使えないんだろうな、と、一抹の寂しさも感じたのは、贅沢なのだろうか……。
(了)
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