甲子園てのはお化け屋敷か?
これは、あだち充先生の国民的野球漫画「タッチ」の登場人物、原田正平君の名言である。
人間離れした野球力を持つ高校生が出現するたび「怪物」だとか「化け物」だとか呼ばれ、ビックリするプレイが出ると「魔物」が棲んでいると騒がれる。それを皮肉ったわけだが、大笑いした。
今年も大盛り上がりのうちに幕を閉じた高校野球。広陵の中村君が清原氏のホームラン記録を32年ぶりに更新した。これも「怪物」のうちに入るのだろう。
が、自分が思ったのは別のことである。
なぜ、こんなにも大逆転ができるのだろう。
最近はプロ野球のひいきチームがふがいなくて、そういうどんでん試合から縁遠いせいもある。1点がとても遠い、というケースもよく見る。だから、もうあと1アウトで終了、でもランナーなしで点差は6点ある、なんて状況でひっくり返すのが信じられないのである。
なのに、高校野球では珍しくない。
諦めない。そういう土壇場でも絶対諦めていない。その集中しきった目が、その力一杯のスイングが、そう叫んでいる。一人が決死のファイトで一塁に生きると、次が同じように続き、またその次がつなげ、そうして奇跡がやってくるのだ。
その現象を、一体どう思ったらいいのだろう。科学的に説明がつくものなのだろうか。
高校生。その年代は、感情に左右される度合いが大人より大きいだろう。だから感受性はこちらの想像よりよっぽど大きくて、それがもたらす伝染力はとてつもなく強いのではなかろうか。
そうしてチームに濃く漂った「勝ちたい」「勝てる」「できる」という思いが全員に深々と浸透する。たとえそれをできる実力が足りてなくとも、その伝染力は実力を2倍増し3倍増しにするのでは。
結果。大人には信じがたい崖っぷちからの巻き返しが、大逆転が起こり得る。
と、そんな風に思うしかない。もちろんしんどい練習をさんざん重ねた努力の結晶であることは間違いない。だけどそれを超えた、精神力というか、熱力というか、理屈じゃないものがある。
もはや「超常現象」と言っちゃっていいのではないだろうか。これは個々の天才の「怪物」や「化け物」だけではなく、他の選手達にも表れる。一般に勢いとか流れとか言われる頼りないものだが、確かに存在している。
つまり、やっぱり甲子園はお化け屋敷なのだ。なるほど、だから私達観客はこの2週間、絶叫するわけだ。
花咲徳栄、埼玉初優勝おめでとうございました。
(了)
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