巷では「一芸家電」が人気らしい。ゆで卵だけを作る器械、ピザ窯、ヌードルメーカー、アイスクリーム専用スプーン、USB電動うちわ等々。
確かに魅力的だけど、一度使ったら満足して放置し、機能細分化に一対一となる機器の置き場所に四苦八苦、という危険は大。
だから多機能がよい、と思う。コンパクトで場所を取らず一台であれもこれもこなしてもらえれば、便利便利。
……と思って失敗した人は大勢いると想像する。自分もその一人。
うちのイエデンの話である。
FAX、スキャナー、プリンター、コピー、そして電話を兼ねた画期的なお利口家電。大きさは、大体35×40×10のコンパクトさで、お値段も手頃だったため飛びついた。しかしそんな数年前の自分を愚かだったと笑える。
最初はその多機能にうっとりしていた。しかし目が覚めたのはプリンターのインクが切れたとき。結構な頻度で訪れるこの状況のたびに全ての機能がストップするのである。留守電も聴けない(これに関してはまもなく裏技ボタン押しで何とか打開した)。
とにかく「インクを変えて下さい」表示が画面に出っぱなしで、他のボタン操作をさせてくれないのだ。
それでもプリンターが使えた時は渋々従ったが、紙送りの型が壊れた。しかもその部品はもう生産されていないという。
紙送りがダメなんだからコピーもダメ。で、別のプリンターを買いに走った。
プリンターとしては使わなくなったというのにインクなしでは他の機能まで使えない。お利口どころか融通の利かないあほんだら。
FAXはコンビニに走り、そのうちメールの発達につき、ほとんど不要になった。
残るはスキャナーだが、裏技ボタンを駆使すれば何とか、というレベルで、それがめんどくさくなり、これも単品で買い直した。
結局、どでかい電話と化しただけである。しかも最近は子機の液晶が壊れて映らなくなり、プッシュした番号の確認もリダイヤルもままならない。
ーー要らないな、これ。
「インクを変えて下さい」表示を見るたびそう思う。なのになぜイエデンを残しているかというと、メールと連動しているから。
長年使い続けたパソコンのメアドは、NTTを解約すると解除となる。友達や勤めの連絡先ならスマホにも登録してあるが、ネットショッピングやメールマガジン、何らかの会員、ブログのあれこれ連絡、などが全部このメアドなのである。把握しきれてないものも絶対あって、移行するのが億劫……。
結局はプリンターもスキャナーも二台ずつ、電話はスマホですませていることになり、全然場所の節約にもなってないし、全然便利遣いもしていない。
電話は電話。プリンターはプリンター。使いこなせる器量のない自分には「一芸家電」が一番だ。壊れた時に、それだけですむ。いまだ部屋の真ん中にどっかり居座る「インクを変えて下さい」ボックスを見るたび思う。(了)
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