子供の頃、江戸川乱歩原作のテレビドラマ「少年探偵団」を見ていた。
もう記憶はいい加減であやしいけれど、いつもラストは「わはははは、君の負けだよ、明智君」と二十面相が捨てゼリフを吐いて消える、といった感じだったと思う。
だから最終回、その正体がわかるとあって、それはそれは超真剣にテレビ画面に向かった。ちなみに原作は読んではいなかった。
そしてその時がやってきた。二十面相がいつものセリフか違うセリフだったか、とにかく高笑いしながらそのマスクを取る。そして正体がわかる――。
この時。まさにちょうどこの時に、テレビの画面がシュウウ~と小さくなって、プチンと消えてしまったのである。映らなくなったのである。
家族全員が「ぎゃー!」と悲鳴を上げ、慌ててテレビを叩いたり揺すったり。当時はそうすることで直すのが一般的だった。そうしてどうにかもう一度画像と音声が出た時には、もちろん二十面相が正体を現す場面はとっくに終わっていた。
嘘のようだが本当の話である。自分で作る物語にこんなシーンを登場させたら、「作りすぎ。ベタ。リアリティがない」と却下されるに決まっている。だけど本当の話なのである。
その後その正体をあちこち聞き回ったか、原作を読んだのか、何も覚えていない。でも「わかって満足した」という記憶がないので、おそらく知ることはないままだったのだろう。
それから気が遠くなるほどの時間が過ぎてから、最近になって突然その正体がわかった。昔見たドラマの話になったときに、「あれはないよね」と言った知り合いがいたのだった。
もう役柄も人物関係もほとんど忘れている。だから今更正体の名前やキャラを言われても「ふうん」てなものだ。だけど、その知り合いの話は興味をひいた。「正体は『団時朗さん』だなんてさ」と言ったのだ。
ドラマで怪人二十面相を演じていたのが団時朗さん。その名前の登場人物が出てきて、それが二十面相の正体だった……という、笑って良いのかどうかよくわからないギャグ?だったというのである。一応「へえボタン」押し、である。
ようやく真相がわかった。ずいぶんかかったものである。数十年である。
でも、今の世の中、すぐに結果を求められる。すぐに答えや続きを知りたがる。だからすぐにそれに応える仕組みや関係ができていく。ときどきそれについていけなかったり、息苦しさを感じることもある。
だから、謎が解けるまでこのくらいゆっくりしたものがあってもいいのかもしれない。
……「横着者のほったらかし」の言い訳に過ぎない、ただの戯言です。(了)
(注)団時朗さんのお名前は、当時旧芸名だったかもしれませんが、今のお名前で表記致しました。
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