8月に読んだ本は5冊(図書館本5冊)でした。
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<満足度>★★★ オススメ ★★ 面白い ★ 収穫少なめ
『「太平洋の巨鷲」山本五十六』大木 毅(角川新書 2021.7)
【満足度】★★★
【概要・感想】
「独ソ戦」の著者が、戦略・作戦・戦術の三次元で山本五十六の用兵思想を考察した本。映画やドラマで取り上げられる山本五十六は有名過ぎて逆になんとなくしか知らなかったのですが、本当の人物像に近いと思われるイメージが持てました。日米開戦に進んでいく理由やその臨場感、ミッドウェイ海戦の敗戦を経て、なぜラバウルという場所で戦死する結末になってしまうのか、よく理解できました。連合艦隊司令長官の職を辞してでも開戦を止めなかったのか? 果たして凡将なのか名将なのか?300ページ強の新書でしたが、あっと言う間に読めました。
【ポイント】
*山本は、=中略= 職人の修業のような教育・訓練ではなく、合理的なやり方で、均質化
された伎倆をもつ搭乗員を育成しようとした(p.62 霞ヶ浦航空隊副長兼教頭時代)
*中国とのいくさを、敢えて戦争と呼ばず、「北支事変」=中略= などと命名したのも、
=中略= 戦争指導機関である大本営を設置すれば、日本は戦争状態に入ったとアメリカに
認定されかねないと懸念し、反対だった。(p.116)
⇒国際法的に戦争となれば、アメリカから輸入できなくなってしまう
*ドイツの勝利は、=中略= フランスの植民地蘭印といった地域に対し、「南進」を実行
すべし、=中略= という主張が力を得てきた(p.162)
*対英戦の停滞とロシア侵攻というお家の事情から、ドイツはまたしても日本を必要とする
ようになっていた(p.168)
*「私は大臣に対して絶対に服従するものであります。只心配に堪えぬところがあります
ので、お尋ね申し上げます。=中略= 三国同盟の成立したときには、英米よりの資材は
必然的に入らぬはずでありますが、その不足を補うため、どういう計画変更をやられたか、
この点を聞かせて頂き、連合艦隊司令長官としての任務を遂行していきたいと存じます。」
(p.173)
*南部仏印進駐の報を聞いた米国務省は、=中略= 間髪いれずに「征服行動」であると声明
を出した(p.184)
⇒これくらいでアメリカは出てこないと実行したが、対日石油禁輸の決定が下された
*軍令部は、平時においては国防方針、=中略= 戦時にあたっては、=中略= 海軍戦力の
最善活用ができるよう、艦隊長官に指示することを任務・職掌としていた。(p.211)
⇒軍令部は天皇の意志に基づく形で、艦隊長官に命令する権限を持つ。連合艦隊司令長官は
ラインのトップで、軍政は海軍大臣、作戦は軍令部総長の指示を受けることになっていた。
*空母を一艦隊に集中させ、強大な打撃力を持たせる発想を持ち込んだのは、小沢治三郎
だった。(p.215)
*山本は「真珠湾攻撃の主目的を敵の士気低下においていた。」(p.229)
⇒海軍力の象徴である戦艦を港内万人環視の中で撃沈するのが最も効果的と考えていた
*国家の興亡が懸かった戦略が、連合艦隊と軍令部の力関係や駆け引きによって、決まった
のである。(p.253)
⇒この案が通らなければ山本長官は辞職すると言っておられる
*山本戦略は、開戦およそ半年で、早くも挫折したのである。従って、山本はMI作戦で重大
な戦略的失敗を犯したと判断せざるを得ない。(p.258)
*明治のころは、陣頭に立って現場の総指揮を取るのが、連合艦隊司令長官の機能であり、
責務だった。だが、昭和の連合艦隊司令長官は、通信機能に優れた中央司令部から、広大な
海域に展開した艦隊や航空隊の全般的統帥に当たるべきだと、山本は考えはじめていた (p.294)
*山本のラバウル進出には、連合艦隊司令長官と軍令部の二元性、硬直した年功序列といった
日本海軍の制度組織上の問題が露呈していた(p.296)
⇒機動部隊司令長官・小沢治三郎が航空艦隊司令長官の草鹿任一より後任であるため、
関係がぎくしゃくしており、山本の直接指揮を仰がねばならない
『「静かな人」の戦略書』ジル・チャン(ダイヤモンド社 2022.6)
【満足度】★
【概要・感想】
話題書。著者をよくよく調べるとエリートで美人。著者は本当の意味での内向型なのか?(内向型として成功したのか?)という気がします。内向型の傾向にはとても共感したのですが、内向型/外向型とカテゴライズしているだけで、実務的な解決策としては至って普通のビジネス書の内容・・・。内向型だからといって外向型に比べて、特になにかが優れているという気もせず。要は著者のエッセイでした。
【ポイント】
*うまい試合運びができたときは、試合後のインタビューで「僕たち」という主語を使う。
でも、うまくいかなかったときは、「僕」という主語を使う(p.340 J・スピース)
『早期退職時代のサバイバル術』小林 祐児(幻冬舎新書 2022.3)
【満足度】★
【概要・感想】
タイトルや「働かないおじさん」というキャッチーなキーワードで釣ってはいますが、中高年の働き方について想像よりもアカデミックな内容でした。過去から現在までの日本的経営の特徴や、社会構造からの分析を絡めて男性中高年の働き方を分析することで「働かないおじさん」にならないためにはどうすべきか?といったところでしょうか。
【ポイント】
*コンピテンシー・トラップ(p.247)
特定の事業が成功すると、それとは異なる新しい事業の芽を広く探索する努力を怠り、
中長期的なイノベーションを停滞させてしまう。
⇒既存の範囲を超えて知見を広げていく&特定分野の知を深掘りしていく両面が必要
『最強リーダーの「話す力」』矢野 香(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2022.9 )
【満足度】★
【概要・感想】
著者は元NHKのアナウンサー。普段の話す力向上策として読んでみましたが、メルケル氏や豊田社長、田中角栄そして北条政子など大勢の人前でプレゼンや講演をする人向けの内容でちょっと期待ハズレ。本書のキモのセルフ・パペット(離見の見・ペルソナ・演じる)の概念や、定番のPREP法など特に目新しい内容もなかったのですが、amazonの口コミでは高評価。これは一体・・・。
『宇宙人と出会う前に読む本』高水 裕一(講談社ブルーバックス 2021.7)
【満足度】★
【概要・感想】
アメトーークの読書芸人で薦められていた本。気軽に手に取ってみたのですが、これが意外や意外、ガチの理系本。物理&科学など一定の知識があればそれなりに楽しく読めるのかもしれないが、文系の自分には難しすぎてほとんど理解できず・・・。視点は面白かっただけにもう少し初心者向けだと良かったです。