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個人評価: ♪♪♪♪♪
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製作年/Sortie: 2009
監督/Réalisation: ラデュ・ミヘイレアニュ/Radu Mihaileanu
脚本/Scénario: ラデュ・ミヘイレアニュ/Radu Mihaileanu
出演/Acteurs:
アレクセイ・グシュコブ/Aleksei Guskov
メラニー・ロラン/Mélanie Laurent
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あらすじ
物語は1980年の旧ソ連、ブレジネフ政権がユダヤ人排斥の政策を強行、ユダヤ系の演奏家たちも例外なく排斥されることになる。
かつてはボリショイ交響楽団の天才指揮者だったアンドレイは、ユダヤ人敗訴政策に従わなかったため30年前に楽団を追われ、ロシアのボリショイ劇場で清掃員として働く。ある日、パリの劇場から届いたファックスを偶然目にしたアンドレイは、追放されていたかつての楽団員たちを集め、『ボリショイ交響楽団』になりすましてパリ公演をするという考えを思いつく。演奏する曲は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。
さて、肝心の楽団員だが、タクシーの運転手、ポルノ映画の効果音創作者、市場の業者等、様々な業種に転職、楽器も売り払い音楽から離れていたものばかり、プロとはお世辞でも言えぬ演奏に、楽団員も神に祈り始める。2週間後のコンサートまでに腕を上げられるのか。問題はそれだけではない、パリまでの飛行機代、宿泊費、偽パスポートの用意等大騒ぎ。何とかパリに辿り着いたが、今度は楽団員がパリで各々のビジネスに散りリハーサルにも参加しない。
このコンサートの目的は、パリ在住ヴァイオリニスト、アンヌ=マリー・ジャケをソリストに迎える事。30年前、アンドレイ率いたボリジョイ交響楽団最後の曲がヴァイオリン協奏曲、当時のソリストがレア。
アンヌ=マリーと楽団員は「レアの為に」心を一つに演奏を始める、、、果たしてコンサートは成功するのか?



感想・ネタバレ
なんとかコンサートが開幕するも演奏序盤では綻びが見られるが、アンヌ=マリーがソロを弾き始めた途端、オーケストラの演奏が一変する。アンヌ=マリーの母親はレア、レアと夫は旧ソ連に異を唱えたため、シベリアに更迭となった。アンドレイ達はレアの赤ん坊を守るためにフランスのエージェントに託し、亡命させる。レアはシベリアで人生の幕を閉じた。
ユダヤ系監督による映画、メラニー・ロランをはじめ、役者の多くがユダヤ系であり、よく見ると政治色の強い映画となっている。シナリオは「偽のボリジョイ・オーケストラが北京で講演、早期逮捕」というニュースに触発され、その後、1980年代に旧ソ連オーケストラで、ユダヤ人敗訴に反対したエフゲニー・スヴェトラーノフの物語をニュースと一緒に紡いだ結果、「Le Concert」が誕生。(因みにスヴェトラーノフはユダヤ人ではなかったが、ユダヤ人と一緒に追放。)
印象に残った監督の言葉、
・ユーモアは常に貧困層の野蛮人に対する最高の武器である
・チャップリンの「独裁者」やルビッチの「生きるべきか死ぬべきか」は影響を受けているかもしれない
確かに彼の物語はブラック・ユーモアに溢れ、映画鑑賞後は爽快な気分にもなるが、思想の相違や人種について考えさせられる。
映画の醍醐味は、俳優軍の音楽演奏。中でもメラニー・ロランは4か月に渡る猛特訓をしている。音は勿論吹き替えとなるが、特訓の成果で、彼女が本当に奏でているかのように見えるし、吹替音とヴァイオリンの先生が同じである事もあり、DVDでボーイングを比較すると面白い。また、細かい話だが映画用にヴァイオリン協奏曲を短く編曲しているが、鑑賞中に「旨いこと切ったな」と感心してしまった。笑
映画の舞台にも拘りがある。映画はブタペストやパリのシャトレ座で撮影、楽団がパリに降りたときには、舞台が一気に変化する。映画のディテールが本当に素晴らしい。
私的には映画タイトルは邦題「オーケストラ」ではなく、「コンサート」なのですが、、、。
メラニーのヴァイオリンの先生Sarah Nemtanuさん、勿論ユダヤ系です。ユダヤ人の絆は国境を越えて強いと感じてしまう映画。

Sarah Nemtanuさんの演奏