「貸家と唐様で書く三代目」 | 六月の虫のブログ

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「貸家と唐様で書く三代目」


初代が苦労しながら経済的基盤を作った商売は、その姿を間近で見てきた二代目によって保持されます。ところが、先々代の苦労や失敗を知らない恵まれた環境で育った三代目になると、簡単に身代をつぶしてしまうことがよくあります。


(中略)


この句が詠まれた江戸時代には、家を借りたり買ったりしに来る人の大半は、一般の生活に馴染みのない唐様の文字は読めなかったことでしょう。先々代の苦労や失敗をまったく知らないために商いの道にはうとく、そのくせ使えない知識だけは持っているという、そんな愚かさを皮肉ったのがこの句に込められた意味なのです。


これは畑村洋太郎氏が書いた『失敗学のすすめ』の中の、『第三章 失敗情報の伝わり方・伝え方』「失敗情報は伝わりにくく、時間がたつと減衰する」の項に書かれている文章です。


この項の次の事例を見て愕然としました。なぜなら、その事例というのが、三陸海岸の津波に関するものだったからです。著者の畑村氏が三陸海岸の町々を歩いたとき、多くの津波の石碑を発見したのです。


以下は本文より抜粋しました。


中には波がやってきた高さの場所に建てられ、「ここより下には家を建てるな」という類の言葉が記された石碑も少なくありません。


しかし、人々は、便利さゆえに先達たちが残した残した教訓を忘れて、人が次第に海岸線に住むようになるのです。


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「津波の石碑とその下に立つ住居」(本文の写真より)


この本、『失敗学のすすめ』が発行されたのは震災の10年以上前の2000年11月です。


この章の最後、畑村氏は次のように締めくくっています。


このように、一度経験した失敗がごく短期間のうちに忘れられ、再び同じ失敗を繰り返すことは珍しくありません。三陸海岸という津波常襲地帯で行われてきた過去の例にも、「失敗は伝わりにくい」「失敗は伝達されていく中で減衰していく」という、失敗情報の持つ性質がはっきりとうかがえます。


『第六章 失敗を立体的にとらえる』『「訓練失敗」を組み入れる・・・・・人の心理と失敗』の項を読んでさらに驚きました。この本が書かれた時点(2000年)では、大津波の対する避難訓練はしていたようです。


「三陸海岸周辺のどの地域でも、年に何回かは訓練大津波といって、大津波を想定した訓練を行っていますが、これらは過去の恐ろしい事実を生かしたものです」(本文186ページ)


もしそうなら、訓練はあまり役に立たなかったということです。


東日本大震災の津波の悲劇の原因を、被災者の皆さんがかわいそうだということで、タブー視して直視しないと次の津波が来たときに悲劇は繰り返されるのです。


この本は先に紹介した『失敗の本質』(第二次世界大戦の日本軍に学ぶ)に通じるものがあります。


http://ameblo.jp/junebugmaymolly/entry-12034085848.html


日本の大学は知りませんが、アメリカの大学の場合、経営学で学ぶのはほとんどが失敗事例です。なぜなら、「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」だからです。


本屋で見かけるビジネス書もほとんどが成功にスポットを当てたものです。失敗にもっとスポットを当てて、悲劇を繰り返さないようにしたいものです。



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