面白い映画には愛を捧げ、そうでない映画には鉄槌を下す
てるおとたくおの
ぶっちゃけシネトーク
●今日のちょい気になることシネ言
「ジョニー・デップが出てるならそれでOK!・・・でいいのか?」
シネトーク118
『ダーク・シャドウ』
DARK SHADOWS
監督:ティム・バートン 製作・出演:ジョニー・デップ 原案・脚本:セス・グレアム=スミス
出演:ミシェル・ファイファー/ヘレナ・ボナム=カーター/エヴァ・グリーン/ジャッキー・アール・ヘイリー/ジョニー・リー・ミラー/クロエ・グレース・モレッツ/ベラ・ヒースコート/ガリー・マクグラス
2012年米・ワーナー・ブラザース映画/113分/ビスタサイズ/ワーナー配給(2012年5月19日公開)
●作品解説
1966年から71年まで放映されたアメリカの同名TVシリーズを
ティム・バートン監督&ジョニー・デップの黄金コンビで映画化。
18世紀半ば。捨てた魔女のアンジェリークの呪いで吸血鬼に変えられ、
墓に生き埋めにされてしまった青年バーナバス・コリンズ。
200年後の1972年、解放された彼は、すっかり落ちぶれた
コリンズ家の末裔たちと出会い、没落した一族の再興のために
立ち上がるのだが、再びアンジェリークの魔の手が迫る。
※ネタバレしてます! ご注意ください
この映画のどこを楽しめというのだ!?
てるお 「俺は今日は喧嘩売るよ」
たくお 「誰によ?」
てるお 「ティム・バートンとジョニー・デップに」
たくお 「ジョニデは長年のパートナーであったヴァネッサ・パラディと破局したばっかりだからお手柔らかに」
てるお 「なので、バートン映画ファン、ジョニデ大好きな女子は今回のシネトークは読まない方がいいかも。読んでてムカついてくるだろうから」
たくお 「バートンとジョニデ、今回で8回目のコンビ作か。ここまでくると2人の間にホ○説が流れるのもしょーがないわな」
てるお 「てかさ、この映画、ど・こ・が・面白いの? 誰か教えてくれ!」
たくお 「久々のBOMB映画だね、コレ」
てるお 「ハッキリ言って、ぜ~~んぜん面白くなかったんですけど? バートン、本当にあんたが撮った映画なのか?」
たくお 「ここ近年のジョニデ映画=ハズレの方程式がつくづく当てはまってるよね。『パイレーツ4』といい、『ツーリスト』といい・・・・。『アリス・イン・ワンダーランド』以降の彼の映画って全部ハズレじゃん」
てるお 「ノンクレジットでラジー映画『ジャックとジル』にも出てるよ」
たくお 「バートン×ジョニデ企画で1億5000万ドルの製作費をかけたメジャースタジオの大作なのに、このブザマな出来は一体・・・・」
てるお 「だってさ、観るべきところって最後ぐらいじゃん? そのクライマックスにいくまで大した見どころがないというのも、ある意味、スゴイんだけど」
たくお 「あのクライマックスにしたって思ったほど盛り上がってくれなかったし。エヴァの肉体崩壊とか、シマリのないダラダラした展開は『永遠に美しく・・・』
を思い出したよ。ゼメキス映画の中ではかなり出来はひどいけど今となってはカルト的な人気があるから、本作も10年経ったら再評価されるかもよ」
てるお 「いやー、この映画はカルトにはならないよ。人物がキャーキャーわめいてドタバタしてるだけじゃん。カルト的面白さなんかないでしょ」
たくお 「ま、これだったらまだバートンの『ピーウィーの大冒険』のほうがマシだよね」
てるお 「おいコラ、『ピーウィーの大冒険』は面白いぞ! 『PLANET OF THE APES 猿の惑星』のほうがまだマシと言え
」
たくお 「『アリス・イン・ワンダーランド』はヒロインが説教を始めるラストですべて台無しにしてるけど、それでもバートンセンスの効いたビジュアルやキャラクターを見てるだけで楽しめる部分はあった。でも今作はそれすらない」
てるお 「唯一ハッキリしてることは、バートン映画の中では最低の出来ということ」
たくお 「ジョニデもここ7、8年まともなキャラを演じてない。でもその奇をてらったキャラに一定の説得力を持たせる“ジョニデ・パワー”で観客を魅了してたところはあったけどさ、今回は大の大人がただ吸血鬼ゴッコをしてるだけにしか見えないよ」
てるお 「いくらトップスターが白塗りしてキバを付けておどけた演技をしても、そんな程度で観客はもう喜ばないよ」
たくお 「200年の眠りから覚めた吸血鬼が1970年代の世界についていけない“カルチャーギャップ”効果が圧倒的に足りてないから、今ひとつ面白味も欠けるよね」
てるお 「なんかバーナバスのキャラが定まってない歯がゆさがずっとあって、最後まで全然感情移入できない。 キャラ紹介では没落したコリンズ家の復興を目指すと書いてたけど、そんなことしてたかなあ?」
たくお 「わりと平然で人を噛み殺しまくってるから、少なくとも共感できるキャラじゃないよな」
てるお 「バーナバスの時代遅れの言動にコリンズ家が振り回されるような“笑い”があればもっとマシな映画になってたと思うけど、別にそうでもないし」
たくお 「あの家族構成、関係性もよく分かんないよ」
てるお 「特にロジャーとデヴィッド父子なんている? 彼らはいなくても話は全然成立するよね。なんだったんだ、あの親子は?」
たくお 「クロエ演じるキャロリンが実はオオカミ人間でしたー!というあの伏線なしの強引な展開に、ほとんどの観客が“鳩が豆鉄砲食らった”状態になった」
てるお 「劇中で一番ビックリしたよな、アレ。俺、『クロエ、なにフザけてんの?』と思ったもん」
たくお 「コリンズ家も“秘密”を抱えてる奇っ怪系ファミリーであることが後々になって分かるんだけど、キャラの描き方もバートンにしてはフツーすぎて、一向に面白味が増してこないから退屈」
てるお 「誰かが『アダムス・ファミリーみたいな話でしょ?』と言ってたけど、あの面白さを期待すると思いっきり肩透かしだから。 バートンも昔は『ビートルジュース』という奇っ怪系ファミリー映画の傑作があったのにねえ」
たくお 「本作って、オリジナルとなったドラマ・シリーズをある程度知ってる人向けという前提で作られてるよね。でも日本では放送されていないし、DVDにもなってないから知らない人がほとんど。だから日本人には馴染みがほとんどない」
てるお 「“一見さん”にでも分かる作りをしなきゃいけないのに、ドラマの大ファンというバートンやジョニデの脳内で勝手に整理した話を一方的に見せられるだけだから、ストーリーやキャラにのめり込めるわけがないよ」
たくお 「バートン映画のパラサイト女優、ボナム=カーターの出演は毎度のことだけど、ファイファー、クロエ、アール・ヘイリー、さらにはクリストファー・リーまでゲスト出演させておいて、全員がジョニデのただの添え物になってるだけでコレといったインパクトもないし・・・・」
てるお 「これほどスターの無駄遣い映画も珍しい」
たくお 「結局はバーバナスとファミリーの関わりを羅列しただけのエピソードを並べただけ。すべてのキャラの描き方があまりに投げやりなんで、途中からどうでもよくなってくるんだよね~」
てるお 「物語の背景となる1970年代感だってそんなになかったし、そのためだけに出したとしか思えないアリス・クーパーも無駄遣い」
たくお 「彼のライブ・シーンだってムダに長くてイライラしたよ。俺はアリス・クーパーのミュージック・ビデオを観に来たんじゃねー!と何度思ったことか」
てるお 「アリス・クーパーのカットインが不自然に多くなかった? アレってアリス側の要望だったのかな?」
たくお 「あんなクリップ映像、DVDの特典にでも入れとけや」
てるお 「これまでのバートン映画にあった“異形者(フリークス)の疎外”といったテーマ性は希薄だし、愛着のわくブラックキャラも特にいない・・・・・。なんかフツーの監督がフツーに撮りました、という平坦な印象しか残らないのはいかがなものか」
たくお 「決定的にダメなのは、バートン映画なのにキャラクターに愛が全く感じられないんだよ! だから別にバートンが撮る必要もないよね?にしか映らない。それじゃダメでしょ」
てるお 「ジョニデとエヴァ・グリーンのドタバタなエッチシーンにしても、予告編で全部見せちゃってるから大して盛り上がらないし。てか、生ぬるい!」
たくお 「予告編を観たときから思ってたけど、あのシーンの演出、ヒドくなかった? でも本編ではそれ以上のものが観られるんだろうと淡い期待があったけど、結局、予告編以上のものがない・・・・」
てるお 「あの予告編を見てもなんか面白そうに思えなかったけどね」
たくお 「普通、見どころを寄せ集めて観客の興味を引かせるのが予告編なのに、そうなってなかったもんなあ」
てるお 「いつもカミさんのヘレナ・ボナム=カーターをどのキャラよりもインパクト強めに撮るバートンだけど、今回の彼女はあまり役得感ないよね。正直、不発キャラだったし、別にアンタ出てこなくてもいいんじゃね?」
たくお 「園子温映画のパラサイト女優、神楽坂恵が『ヒミズ』に出てきた時を思い出した。『アンタ、いなくてもいいよな?』って」
てるお 「言えてる」
たくお 「良かったとこって、エヴァ・グリーンのエロい魔女っぷりと、キューティーなベラ・ヒースコートちゃんぐらいかな」
てるお 「確かにベラちゃんはカワイかった。『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカといい、バートンの美少女発掘力は冴えてるよね。ただ今回のエヴァは大してエロくないよ。赤のパンティがエロいぐらい。『ドリーマーズ』の思いっきりが欲しかったなあ
」
たくお 「あんなエロエロ映画にしてどーする」
てるお 「あまりに退屈だったんで、俺がアクビばっかりしてたのが気になったのか、2つ隣の席で観てたオッサンが上映終了後に『なんかあまり面白くないよね』と声をかけてきてさ。俺も『はあ、ちょっとコレはないッスよねえ』って
」
たくお 「確かに、上映が終わって明かりが点いた時、場内は観客の気まずい空気感が漂ってたなあ。『なにコレ?』オーラが蔓延してた」
てるお 「話は支離滅裂、展開は冗長、演出は凡庸、ギャグは不発、キャラは魅力なし。劇場から1歩出たら内容をほとんど忘れちゃってるぐらい、今回はダメダメ感たっぷりなバートン映画。すべてにおいて『残念な展開であった』」
たくお 「バートン擁護派が多い日本のファンも今回ばかりは辛口。ヤフー映画レビューは2.8点
と、彼のメジャー映画の中では最下位。『PLANET OF THE APES 猿の惑星』よりも低い」 ※6月21日時点
てるお 「『映画 ホタルノヒカリ』とほぼ同点じゃん。あんなTV映画よりかはまだマシだったような・・・・いや、どっちもどっちか」
たくお 「こっちも一応、TV映画なんだけどねー」
てるお 「アメリカでもウケは悪かったようで、ロッテン・トマトでもバートン映画最下位の40%
」
たくお 「向こうでは『ティム・バートンはジョニー・デップともう組まないほうがいい』とまで言われているみたいよ」
てるお 「まだ、同じスッカラカン映画でも『貞子3D』のほうが観客を楽しませようとする作り手のほんのわずかな志が感じられた分、マシだった。こっちはそんなもん微塵も感じなかったけど・・・・」
たくお 「笑ったのが、パンフレットのイントロダクションの解説。『最強コンビの最新作が2012年5月、スカイツリーと肩を並べてやって来た! (中略) さらなる進化と、新鮮な驚きと、予測不可能などよめきと、思いもよらぬ感動をひっさげて、デップ&バートンの新たな魔法が炸裂する!』だってさ」
てるお 「なんだ、その開き直りとも取れる解説は!? 誇張表現にもほどがあるぞ。JAROに電話してやれ」
たくお 「『スカイツリーと~』と書いてる時点で、明らかにワーナー宣伝担当者の迷いが見られるよな。まあ、担当者も本作を観て『どうしよう、どこをPRしよう~。全然分かんね!』とか、よっぽど苦慮したに違いない」
てるお 「ジョニデの奇人変人ごっこはより『進化』し、あまりのつまらなさに『驚き』、大した見せ場もなく話が終わったことに『どよめき』、『感動』とは違う、こんな映画を見せられて情けなくなって泣けてきたのは確かだけど」
たくお 「今回はガックリ映画だったけど、次回作の3Dアニメ『フランケンウィニー』
(12月日本公開)ではいつものバートン節の効いた作品になってそう。記念すべき実写短編デビュー作のセルフリメイクだし!」
てるお 「俺もそっちのほうが期待だな」
●ココGOOD! エヴァ・グリーン/ベラ・ヒースコート
/ところどころにバートン・センスが冴える美術
●ココBOMB! 誰が観てもつまらない/ストーリーが支離滅裂=脚本が良くない/思ったほど見どころが少ない/カルチャーギャップ的な面白さがあまりない/笑いがスベってる/キャラが全員薄い=バートンのキャラ愛が感じられない=豪華俳優陣の無駄遣い/主人公のキャラがブレまくり。よって共感しにくい/ジョニデの吸血鬼ごっこ/クロエのトートツなオオカミ人間/ヘレナ・ボナム=カーター、いらない/アリス・クーパーのシーン、しつこい
●満足度料金
てるお 500円
たくお 700円
『ダーク・シャドウ』 35点