わたしは、似ていると言われて嬉しいのだろうか。それとも不満なのだろうか。

 そもそも従姉妹だから血縁関係がある。似ていても不思議はないのだ。

 わたしは水藍の、他人の意見に流されたりしないところを尊敬している。

 同級生の女の子たちからハブられた時も、水藍だけがわたしの傍にいてくれた。どんなに他の子たちに誘われても。

 水藍がそうしていてくれたから、やがて少しずつ変わっていった。

 水藍がいなかったら、わたしは彼女たちに負けてしまっただろう。

 わたしは水藍の強さが羨ましい。

(でも水藍になりたいわけじゃない)

 水藍は水藍でしかなく、わたしはわたしにしかなれない。

「水藍と菖蒲ちゃんは雰囲気が似ているよね」

空気かな、と付け加える。

「気付かないヤツも多いケドさ、」

 海は振り返ってわたしを見た。

「菖蒲ちゃんも強いよねぇ」

 そう微笑する。

 わたしが強い?

 いつも、いつだって水藍に守られ続けているのに。

 海自身、初対面の時には水藍に守られているわたしを責めたのに。

 それが何故?

 海の考えを変えられるのは、やっぱり水藍のような気がした。

 海は突然、振り返る。

「水藍と菖蒲ちゃんて姉妹(きょうだい)みたいだよね」

「は、」

 わたしは突然のことに、間抜けな合いの手を入れてしまう。

 海はといえば一人で納得している。

「だから、話したんだな」

同い年だから双子かな、なんて呟いている。

(ふたご、)

 また前を向いて歩き出した海の背を見ていたら、ひねくれた自分が湧いてくるのを感じた。

「姉妹なんて。まして双子なんて、」

 海はちらりとわたしを振り返った。

「水藍とわたし、全然、似ていないのに」

 海は「そうだね」と笑う。

 紫藤は水藍とわたしを似ていると言ったけれど。他の人から見たら、やっぱり似ていないんだわ。

「でも似ているよ」

 あまりにも、さらりと自然に言うので一瞬、聞き流してしまった。

「え?」

「え? だからさ、水藍と菖蒲ちゃん。従姉妹だけあるし、似ているよね」

 たった今、似ていないと言った口で真逆のことを言う。

(何、言っているの?)

 結局、彼はどっちだと思っているの?

 海は「俺は、」と語り続ける。

「せっかく空手やっているし、活かせる仕事を目指そうと思っていたんだ」

 そういう言い方をする、その次には必ず否定の接続詞が繋がる。案の定、海は「だけど」と続けた。

「俺には、兄貴はずっと完璧見えていた。尊敬もしているけれど、負けたくないって。そう思っていたんだよね」

その兄貴がさ、と続ける。

「俺に『期待している』って言ったんだ」

 海は「それだけ」と息を吐く。

「法学部にするか迷ったケドね~」

 少しおどけて見せたけれど、海の瞳は真剣だ。


「水藍も知らない俺の事情だよ」

 わたしは海を見上げた。

「どうして、わたしに?」

 水藍にも話していないのに、何故、嫌っているはずのわたしに話したのかしら?

 海は「どうしてかな?」と首を傾げた。首を捻りながら歩いている。

 わたしはその背を追う。

 彼の背に、水藍の姿を思い浮かべる。彼女の姿は、すっぽりと海の中に収まってしまう。