海は「そういうことかぁ」とにやにやしている。
「それで水藍と離れるかもって? 心配しちゃってんだ? 可愛いねぇ」
たいして変わらないくせに、年上風を吹かせて……。
(何かイラッとする)
海は緩い顔をしてはいたけれど。
「こればっかりはね」
呟く。
「それぞれの進路だからね」
紫藤と似たようなことを言う。否、言い方が違うだけで言っていることは同じだろう。
「俺が経済学部を希望しているのは、会社に入って兄貴を手伝いたいからだ」
わたしは海を見上げた。彼は少し照れたように微笑する。
「兄貴とはちょっと年が離れているから、向こうはもう社会人なんだけど」
家族の話を聞くのは初めてかもしれない。
父親が社長だと耳にしたことはあるけれど。それは同級生からの情報で、海から聞いたわけではない。
「兄貴は跡を継ぐ気で会社に入っているし、親父もそう思っているみたいだし」
わたしは黙って海の言葉に耳を傾けていた。