わたしは海の手から自分の手をするりと抜く。
彼は振り返って首を傾げる。
「本当、どうしたの?」
わたしは首を横に振る。
海は困ったように溜め池を吐く。
「水藍は、いつも、」
わたしは思い出している。彼女の輪郭、彼女の声。彼女の手。
「水藍はいつも、わたしの手を放さずにいてくれて、」
子供の頃、泊まりに来た彼女と手を繋いで寝た。雷が怖いと怯えるわたしの手をずっと握ってくれた。
女の子たちからハブられてしまった時も、祖父が亡くなった時も。
水藍はわたしの手を握っていてくれた。
わたしは己の手を見つめた。
「それ、」
「え?」
顔を上げる。海(カイ)は戸惑っているような表情を浮かべている。
彼は「それ、水藍(スイラン)もやっていた」とわたしの手を示す。
「自分の手を見ていた」
(水藍が?)
それは。
水藍が見ていたものは、彼女が掴めなかった誰かか。それとも、手の中にあるものか。
彼女が見ていたものは、どちらだろう?