彼はわたしを見つめている。
「誰かの、一生を決めてしまうかもしれない。それが、自分にはとても怖いんです」
彼は「覚悟がないんです」と苦笑する。
情けないですね、と瞼を伏せる。
そんなことない。
「先生は、ちゃんと考えているってことでしょう?」
わたしは「情けないなんてこと、ない」と断言する。彼は瞬きして「ありがとう」と笑う。
(あ、この人、)
こんなに話したことも初めてだし、こんなにじっくり見たのも初めてだから気付かなかったけれど。
(キレイね)
いつも白衣や、やはり足に目がいってしまう。それに彼に会う時は大抵、自分が不調の時なので余裕がない。
(男の人に『キレイ』は変かしら)
でも、よく見たら肌もつるつるとしているし、髭も薄い。二重で睫毛は長くて多い。
眼鏡で隠れてしまうけれど、印象的な目をしている。
「世の中の親たち、君たちのご両親も、すごいと思います」
彼は感嘆している。
「虐待する親とかもいますケドね。モンスターペアレントとか」
彼は力強く、頷く。
仕事柄、実際に目にしたことがあるのかもしれない。口を開かなかったけれど。