わたしは彼の横顔を見ている。
彼は校庭へと視線を向けている。
(あぁ、そういう、)
彼もまた『置いて』いかれたのだろう。彼の友人たちが『置いて』いった過去の一部。
だから、たぶん『捨てた』なんて思いたくないのだろう。誰も自分が捨てられたなんて思いたくない。
「先生は、出て行こうと思わなかったんですか?」
彼の視線がわたしに戻る。
しばらくきょとんと、わたしを見つめていた。わたしが誰だか判らないとでもいうような顔をしていた。
やがてハッとしたように「自分は、」と口を開いた。無理矢理、自分の口唇を動かしたように見えた。
「その頃に、事故に遭ったので」
足をさする。
「実は意識が曖昧で、その辺のことはハッキリ覚えていないんです」
苦笑する。
彼は「後から聞いたんです」と肩を竦めた。