積の魔方陣(学習教材に使わないのはもったいない入試問題⑫) | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

魔方陣というと一般に、正方形のマス目に並んだ数をタテ、横、ななめに足したとき合計が同じになるものをいいますが、近年「積の魔方陣」というのも出はじめています。

これを会話形式で取り上げた次の問題などでその基本的な考え方についておさえておきたいところです。

 

梅子さんと松子さんは、算数の授業で先生から出された課題についての会話をしています。下の会話を読み、[あ]〜[え]にあてはまる数を答えなさい。(十文字2023第4回)

課題
次の9つのマス目に異なる9個の整数を書き入れて、縦、横、斜め、どの1列の3個の数の積も等しくなる「かけ算魔方陣」を作ります。Cにはどんな数が入るでしょうか。

梅子:どこに注目すれば良いか分からないな。
松子:縦列を見ると「4×C×9」、横列を見ると「36×C×D」になっているね。3つの数をかけたときに同じ数になるから、Dは[あ]だ!

 

右矢印[あ]=1

 

梅子:なるほど!斜めの列の「A×C×12」も同じ数になるはずだから、Aは[い]になるね。

 

右矢印[い]=3

松子:その他は、あてはまる数が分かりにくいね。
梅子:横列の「E×9×12」と縦列の「4×C×9」も同じ数になるはずだから、CはEの「う]倍になるね!Cを[う」×Eに書きかえてみようよ!

 

右矢印[う]=3

 


松子:<図>のようになるね!こうすれば、同じように考えることで、Eにあてはまる数が分かりそうだね。 Eが分かれば、Cも計算できるね。
梅子:Cは[え]になるね!

 

右矢印同じように考える」と

  • 横列の「い(=3)×4×B」と縦列の「い(=3)×36×E」も同じ数になるはずだからBはEの9倍になる
  • そこでBを9×Eに書きかえるとななめ列どうしも同じ数になるはずだから「3×(3×E)×12」=「(9×E)×(3×E)×E」 より  108×E=27×E×E×E  だから E×E=4 で E=2

よって C=3×E=6 なので[え]=6 

 

 

  出題例2(高槻中2023)

 

下の表は、縦、横、ななめの3つの数字の積がすべて等しく、ア〜カには0でない整数があてはまります。
オにあてはまる数字を答えなさい。

 

右矢印 前問の考え方をそのまま使うと

  1. 横列を見ると「6×ア×27」、縦列を見ると「ア×ウ×9」になっている。3つの数をかけたときに同じ数になるからウは18
  2. ななめ列を見ると「6×ウ(=18)×力」、横列を見ると「オ×9×力」になっているからオは12
よって 12
 

 

  出題例3(渋谷教育学園渋谷2023)

 

下の9マスに、次の2つの条件にあてはまるように数を入れていきます。

条件① 36の約数をすべて使う。
条件② 縦、横、斜めのどの3つの数をかけても同じ数になる。

このとき、白いマスに入れる4つの数の積はいくつですか。

 

右矢印 3×3の魔方陣では真ん中のマスを使う組が4組ある。

この4組について考えると「どの3つの数をかけても同じ数」なので共通する真ん中をはずして考えると

 あ×ア=い×イ=う×ウ=え×エ

という関係になっている。

 

一方、36の約数を表にして書き出す(過去記事)と

と約数は9個あって、その9個の約数は「4組+仲間はずれの6」という関係になっている。

 

これを先ほどの魔方陣の図と見くらべると

  • 真ん中には6が入ること
  • あ×ア=い×イ=う×ウ=え×エ=36

がわかる。

よって(イやエに入るのがどの数か具体的に決めるまでもなく)「白いマスに入れる4つの数の積」は

 (い×イ)×(え×エ)=36×36=1296 完了