受験算数には推理算という独特のジャンルがあります。たとえば、うそつき問題、順位当て、魔方陣、オオカミと羊問題などがこれに含まれます。推理して答えを見つけるという問題の寄せ集めなので、呼び方も「推理と論理」「推理問題」などいろいろです。
多くの場合、特殊算も図形も場合の数もひと通り終えたあとに、付け足し的にまとめて取り扱われる浮かばれない存在ですが、入試問題ではよく出てきます。
その推理算の分野から、今年の首都圏入試で出された魔方陣を今回取り上げます。
右の図の9つのマスに数を1つずつ入れて、縦、横、斜めに並んだ3つの数の和がすべて等しくなるようにします。このとき、Aのマスに入る数は□です。
(慶應義塾中等部2022)
推理算が不遇な扱いを受けている理由はおそらく比と逆比のような体系的な解き方が確立されていない(ので教える側にとって扱いづらい)ためかと想像しますが、本問のような3×3の魔方陣にはちゃんと攻略法があります。ただ正解するだけではなく、つねに最短手順で正解できる(時間をかけない)ようにしておきたいところです。
本問も次の2つの手順で(全部のマスを埋めなくても)解答が出せます。
❶重なりを見つける
数字が2コわかっている列があるのでその列を○で囲む(赤枠)。次に数字が1コだけわかっている列を、空白のマス1コが重なるように○で囲む(青枠)。
すると右下のマスは100だとわかる。なぜなら、赤枠内は合計 A+104(=28+76)なので、青枠内も同じ A+104 でないといけないから。
❷真ん中は外側2コの平均値
ここで3×3の魔方陣の真ん中は必ず両側の数字の平均値になる(=真ん中を3倍すると1列の合計になる*)ことから、ななめ列の真ん中は64(=(28+100)÷2)だとわかる。
つまり、1列の和は192だとわかり、A=88
別の学校でも似たような3×3の魔方陣が今年出題されています。同じやり方で解けますので、こちらは問題と解答のみ紹介させていただきます。
次の9つのマス目に異なる整数を入れて縦、横、ななめに並ぶ数の和がすべて等しくなるようにします。ア、イ、ウ、エ、オ、力に入る数をそれぞれ求めなさい。
(広尾学園小石川中2022)
*3×3の魔方陣で*部分がつねに成り立つことは次のとおり確認できます。
魔方陣の左上のマスから右下のマスにかけて順に①から⑨の番号をふる(真ん中が⑤になるように)と次の式が成り立つ。
(①+⑤+⑨)+(②+⑤+⑧)+(③+⑤+⑦)-(①+②+③)-(⑦+⑧+⑨)=⑤×3
ここでカッコ内はどれも「1列の和」で等しいから、左辺を整理すると (1列の和)×1 だけになる。
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