水そう問題⑦ | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

今年も数多くの水そう問題が出されていますが、とくに目を引いた問題がこちらです。

 

図のように、しきりで2つの部分A、Bに分けられた直方体の容器があります。しきりは直方体の各面に平行または垂直な面を組み合わせたものです。両方とも空の状態から、それぞれに毎分1.2Lの水を入れていきます。Aがいっぱいになってからちょうど1分後に、Bがいっぱいになりました。次の問いに答えなさい。ただし、容器としきりの厚さは考えないものとし、しきりをこえて水が移動することはないものとします。(攻玉社2023)

⑴ Bの水の深さが10cmのとき、Aの水の深さは何cmですか。

 

右矢印 水そうを正面から見た図(水そう図)を書く。たては高さ、横は底面積を書いておくのがわかりやすい。

Aの底面積は25×20=500㎠、Bの底面積は15×20=300㎠

 

小問⑴の答えを出すだけならこのあと「底面積の比と水の深さの比は逆比の関係にあるから、底面積の比がA:B=5:3なら水の深さの比は3:5。よってBの水の深さが10㎝ならAの水の深さは6㎝」としても出せます。ただ、あとに問題が続くときは水量の情報が必要になるため(二度手間にならないよう)ここはふつうに水量を計算して出しておきます。

Bの水の深さが10㎝のときその体積は300㎠×10㎝=3000㎤=3L。

一方、同じ深さ10㎝までのAの容積は500㎠×10㎝=5000㎤=5L。

よって5L入るところに3L入るので、水の深さも⅗となり 6㎝

⑵ Aの容積は何Lですか。

 

右矢印毎分1.2Lの水を入れて」いくと「Aがいっぱいになってからちょうど1分後に、Bがいっぱいに」なるから、Aの容積はBの容積より1.2Lだけ小さい

 

容器の高さ30㎝なので、容器全体の容積は

 (25+15)×20×30=24000㎠=24L

よってAの容積は

(24-1.2)÷2=11.4L

 

⑶ Aの水の深さが10cmのとき、Bの水の深さは何cmですか。

 

右矢印 Aの容積11.4L、Bの容積12.6L(=24-11.4)とわかったので、問題にとりかかる前にこれを先ほどの水そう図に書き入れる。

高さ10㎝まで(下部)の容積はAが5L、Bが3Lとわかったから、残りの容積(Aが6.4L、Bが9.6L)だけ書き入れる。その比2:3より、高さ10㎝以上のところ(上部)の底面積の比は2:3。全体の底面積は800㎠なので、上部の底面積はAが320㎠、Bが480㎠とわかる。

 

問題に入ると「Aの水の深さが10cmのとき」の様子を小問⑴で使った水そう図に書き足すと次の通り。

Bに深さ10㎝まで水が入っているところにさらに水が2L入ると 

 2000㎤÷480㎠=²⁵⁄₆㎝

だけ水位が上がるから、Bの水の深さは 10+²⁵⁄₆=14⅙㎝

 

⑷ 水を入れ始めてからAとBの水の深さが初めて同じになるのは、何分何秒後ですか。

 

右矢印 Aの水の深さが10㎝になったところ(小問⑶)をスタート時点として考える。

 

底面積の比がA:B=320㎠:480㎠=2:3だから、A、Bの水位の上がる速さの比はその逆比の3:2。となると(距離は速さに比例するから)上がる水位の比も3:2となり、Aの10㎝より上の水位を③㎝とするとBの14⅙㎝より上の水位は②㎝とおける(黄色部分)。

そしてスタート時点でA(水位10㎝)とB(水位14⅙㎝)は4⅙㎝はなれているからこの追いつき算を考えると

 ③-②=4⅙㎝ より ①=4⅙㎝

したがってAの水位が4⅙×3=12.5㎝上がったところでBに追いつき、水の深さが同じになる。

これは320㎠×12.5㎝÷毎分1200㎤=3⅓分 より 3分20秒後

 

そしてAが水位10㎝になるのは 5L÷毎分1.2L=4⅙分=4分10秒後 だから、これを足して 7分30秒後

 

次に、AとBを両方とも空の状態にして、辺XYを床につけたまま手前に45度傾け、それぞれに毎分1.2Lの水を入れていきます。
⑸ AとBのどちらが何秒早くこぼれ始めますか。

 

 

右矢印 「手前に45度傾け」たとき、これを右横から見ると下の図の様に、直角二等辺三角形(二等辺が20㎝)を底面とする高さ40㎝の三角柱部分の容積がへることとなるのをまずイメージする。

このときできる三角柱のうち、Aにあるものを三角柱A、Bにあるものを三角柱Bとする。

この三角柱A、三角柱Bの体積を(上部の直方体を半分切り取ったものと考えて)それぞれ求めると

 三角柱A=320㎠×20㎝÷2=3200㎤=3.2L

 三角柱B=480㎠×20㎝÷2=4800㎤=4.8L

これがなくなるから、水をいっぱいにするとき

 Aでは 3.2L÷毎分1.2L=2分=2分40秒

 Bでは 4.8L÷毎分1.2L=4分

の時間が短縮されることとなる。

つまりBはAとの時間差を1分20秒ちぢめることとなる。

 

となると「Aがいっぱいになってからちょうど1分後に、Bがいっぱいに」なるという1分遅れの状態だったBがAとの時間差を1分20秒ちぢめるから、Bが20秒早くこぼれ始める。完了