マラソン実況中継 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事に関連する話です。

 

箱根駅伝では今年もいろんなドラマがありましたが、次の問題を見ると、箱根駅伝の実況中継を取り上げた問題が出されてもおかしくないかも知れません。

 

下の文章は、あるマラソン大会の実況中継の一部です。午前11時時点での1位から3位までの順位は1位がA選手、2位がB選手、3位がC選手です。この時刻よりも前に3人の選手の走る速さに変化がありましたが、午前11時以降の3選手の速さは一定であるとします。
4つのグラフは、C選手から、A選手またはB選手のうち近い方の選手までの差を表していて、<実況1>から<実況4>に合わせて書き足されています。(品川女子2021算数)

<実況1>
リポーター:ただ今、時刻は午前11時です。現在1位のA選手は数分前から遅くなり1kmあたり4分30秒の速さになっています。
解説者:ずいぶん遅くなりましたね。2位のB選手が逆転しそうですね。前を走るA選手との差が3分間で100mも縮んでいますね。 
リポーター:ここで情報が入ってきました。3位のC選手の速さは①1kmあたり3分20秒になっていて、前を走る2人との差が縮まっています。
解説者:すごい速さですね。これはだれが優勝するかわからなくなってきましたよ。

*黄色マーカーは下線部

⑴ 下線部①「1kmあたり3分20秒」の速さは分速何mですか。

 

右矢印 3分20秒=¹⁰⁄₃分で1km=1000mを走る速さだから

 1000÷¹⁰⁄₃=1000׳⁄₁₀=分速300m

 

<実況2>
リポーター:ここでB選手がA選手に並び、追い抜きました。逆転です。
解説者:あっという間でしたね。

 

⑵ 11時時点のA選手とB選手の差は何mですか。

 

右矢印 実況によると、B選手は「前を走るA選手との差が3分間で100mも縮んで」いる。

そしてB選手は11時7分12秒にA選手に追いついた。その7分12秒前=³⁶⁄₅分前の「11時時点」の2選手の開きは

 3分:100m=³⁶⁄₅分:▢m より ▢=100׳⁶⁄₅÷3=240m

 

<実況3>
リポーター:さらにA選手がC選手に追い抜かれました。これでA選手は3位になってしまいました。
解説者:優勝争いは前の2人にしぼられたようですね。

 

⑶ [ア]にあてはまる時刻を求めなさい。

 

右矢印 まず「午前11時時点での1位から3位までの順位は1位がA選手、2位がB選手、3位がC選手」だったので、11時7分12秒までのグラフはBC間の距離をあらわしたもの。

そしてBがAを抜いた(順番が①B②A③Cとなった)11時7分12秒からア秒までのグラフはAC間の距離をあらわしたもの。となるとアは3位のCが2位のAに追いついた時間となる。

 

11時時点でAB間が240m差(小問⑵)、BC間が600m差(グラフより)だったから、11時時点でAC間は840m離れていた

そして「A選手は…1kmあたり4分30秒の速さ」だから1000m÷4.5分=分速²⁰⁰⁰⁄₉m

Cはこれを分速300m(小問⑴)で追い上げているから、CがAに追いつくには

 840÷(300-²⁰⁰⁰⁄₉)=840×⁹⁄₇₀₀=10.8分

かかる。よって11時10分48秒

 

右差し ここまでをふつうの速さのグラフにすると次のとおり。

この問題に使われているへだたりグラフは上の青でぬられた部分のたての長さを取り出したものということになります。

 

<実況4>
リポーター:いま、1位の選手が、ゴールテープを切りました。11時13分に、1位でゴールしたのは[イ]選手です。
解説者:手に汗にぎる展開でした。とても面白いレースでしたね。

 

⑷ [イ]にあてはまる選手は、A、B、Cの3選手のうちだれですか。記号で答えなさい。

 

右矢印 Cが最後にBも追いぬいたか、それともBが逃げ切ったかが問題。

アはCがAに追いぬいた(2位になった)時点なので「近い方との差」がゼロになっている。しかしグラフがゼロになっているのはこの1回だけ。Cがもし1位のBも追いぬいたのであれば「近い方との差」がゼロになる場所がもう1か所でてくるはず。これがないのはBを追い上げる途中でレースが終わったことを意味する。

よって、CはBを追いぬくことはできなかったから、1位でゴールしたのは完了