以前の記事の続きです。
以前取り上げた問題のなかにもありましたが、3つの食塩水が登場することがあります。
3つの食塩水と見ただけでこれは難しそうだとさっさとあきらめてとばしてしまう小学生もいそうですが、そこは受験算数の制約もあり、三元一次連立方程式(のような消去算)としてゴリゴリ解かなくても正解できるよう工夫されている問題がほとんどです。
たとえば次の問題。
濃さのわからない3つの食塩水A、B、Cがあります。先生がA、B、Cを1:1:2の重さの割合で混ぜた食塩水と、2:3:4の重さの割合で混ぜた食塩水をつくったところ2つの濃さは同じになりました。次に、ある児童が140gの食塩水Cに水を50g入れて、先生のつくった食塩水と同じ濃さの食塩水をつくろうとしたところ、まちがえて水のかわりに1.9%の食塩水を50g入れてしまったため、8.9%の食塩水ができました。このとき、次の各問いに答えなさい。(明治大学付属明治2021)
⑴ 食塩水Cの濃さは何%ですか。
情報量が多すぎてどこから手をつけるかが最初の悩みどころですが、最後までよく読むと「140gの食塩水Cに」「1.9%の食塩水を50g入れてしまったため、8.9%の食塩水が」できたのは間違いないので、これを使えば食塩水Cの濃度が計算できそうだとわかります(小問⑴が食塩水Cの濃さを問うものになっている点とも合います)。
「140gの食塩水C」の濃さを▢%とする。これと「1.9%の食塩水」50gをまぜた状況を天びん図にすると次のとおり。
この図から
▢=(8.9%-1.9%)×⁵⁄₁₄+8.9%=11.4%
⑵ 食塩水Bの濃さは何%ですか。
まずは「A:B:C=1:1:2」と「A:B:C=2:3:4」とをじっと見くらべて、A:Cのところだけみると比は同じ(1:2=2:4)になっていることに気づけるかがポイントです。
児童は「140gの食塩水Cに水を50g入れて、先生のつくった食塩水と同じ濃さの食塩水をつくろうとした」。Cの濃さ11.4%なので、この児童がつくろうとした食塩水は食塩15.96g(=140×11.4%)を含むことから、つくろうとした濃さは
15.96÷(140+50)×100=8.4%
つまり先生は「A、B、Cを1:1:2の重さの割合で混ぜた食塩水と、2:3:4の重さの割合で混ぜた食塩水をつくったところ2つの濃さは同じ」8.4%になった。となると
A、B、Cを1:1:2で混ぜると濃さ8.4%…①
A、B、Cを2:3:4で混ぜても濃さ8.4%…②
このとき、①の食塩水の量を2倍にしてもその濃さは変わらないから
A、B、Cを2:2:4で混ぜても濃さ8.4%…③
が言える。ここで③と②を見くらべると、AとCの量は一緒で、Bの量だけ2→3に増えている。なのに全体の濃さは8.4%のまま変わらない=Bはあってもなくても全体の濃さに影響しない濃さだとわかる。
つまりBの濃さは8.4%
⑶ 食塩水Aの濃さは何%ですか。
A、B、Cを1:1:2で混ぜると食塩水の濃さは8.4%、このうちBの濃さも8.4%だから、AとCを1:2で混ぜただけでもやはり濃さ8.4%となる。
Cの濃さは11.4%なので、Aの濃さを△%として天びん図にすると次のとおり。
この図から
△=8.4%-(11.4%-8.4%)×2=2.4%