得意楽器はボキャブラリー -8ページ目

出た!

$得意楽器はボキャブラリー

あの、オードリーTAKAが東京にやってきます

平凡な毎日に飽き飽きしてる人

刺激に飢えてる人

秋の夜長に人生を考えたい人

いらっしゃい

騙されたと思って・・・


11月13日(土)
開場:18時 開演:19時
赤坂 スタジオ レヴール
港区赤坂2-14-13シャトレ赤坂B01
チケット 6,000円(税込み)1ドリンク付
(全席自由席 定員30名)

K子に捧ぐ

日曜日はK子の通夜だった。

もう20年以上も前の話だけど彼女とはバイト仲間だった。
その店は吉祥寺にあった当時流行のカフェバーで
経営者がいい加減だったことも我々バイトには都合がよく
好きなように店を仕切っていた。

おれは週に5日ぐらいシフトに入り
そのうち3日ぐらいは仕事が終わるとそのまま飲みに行き
だいたい朝まで飲んでいた。
夏にはみんなで海へ行き、冬にはスキーに行った。
恋愛沙汰も喧嘩沙汰も青春ドラマに必要な要素は
ほとんど全部揃っていた。

おれが卒業してまもなくカフェバーブームも去り店は潰れた。

みんなバラバラになったけれど
驚くべきことにバイト仲間の中で3組のカップルが結婚した。

その一組がK子とSだった。

一番性格が温厚で大人びていたK子はみんなの姉貴的存在で
バラバラになった仲間の間を取り持っていた。

この何年かは会うこともなかったけれど
K子の律儀な字で書かれた年賀状は毎年届いていた。

今にして思うと、2年ぐらい前から
年賀状に添えられる彼女のメッセージが変わったと感じていた。
それが彼女の闘病生活の始まった時期と一致する。

とにかく彼女の訃報は唐突だった。
「Kちゃんが亡くなった」と電話で告げられて
その「Kちゃん」が「K子」のことだとすぐには理解できなかった。

通夜に出てみてもSの顔を見ても祭壇に飾られたK子の遺影を見ても
それでもどうにも腑に落ちるものがなかった。

一緒に参列したHも同じ気持ちだっただろう。
式場の2階に用意された席でビールを飲みながら二人とも無言だった。

「出ようか」Hが言った。
おれも同感だった。

「吉祥寺に行って飲もうか」
阿吽の呼吸で我々は「いせや」に行って飲んだ。
Tも合流して3人で飲んだ。

当時のおれたちぐらいの年齢の若者ばかりの店内で
礼服姿のおれたちは明らかに浮いていたけれど
本人たちはあの頃に戻ったつもりで飲んだ。

やがてHが新幹線で帰ることを諦めて言った。
「おれの我が儘にもう少し付き合ってくれ」

おれたちは当時の面影が残るプチロードに行き
その中でHが一番思い出深いという「MORE」に入った。

当時と同じように
Hはジムビーム、おれはオールドグランダッドのロックを注文した。
3杯目のおかわりをするときに
Hが「こりゃボトルを入れた方がいいな」と言った。

名案だった。

おれたちはバーボンで一番安いものを一本とマスターに頼んだ。

本来6ヶ月のボトル期限をマスターに頼み込んで1年にしてもらった。

真顔でTが言った。
「Kちゃんはおれのことが好きだったんじゃないかと思うんだ」

実はおれも同じことを思っていたので
これまた昔のようにくだらない言い争いを楽しんだ。

そして最後に
「やっとおれたちらしい通夜ができたな」
と3人で話した。

ボトルはK子の名前で入れた。

そしておれたちはルールを決めた。

このボトルを絶やさずに繋いでいくこと。

ボトルを空けた者は現状より高いボトルを入れること。


昔からちっとも成長しないおれたちを見て
きっとK子は笑ってくれるだろうと思った。




---------- あとがき ------------


K子がどちらを好きだったかTと言い争っていたら
TとK子と旦那のSとのある思い出が蘇ってきた。

Sが二輪の免許を取ったとき
Tとツーリングに行こうという話になった。
すでにSと付き合い始めていたK子も連れて行くことになった。

しかしSは若葉マークなので
Tとおれが交代でK子を後ろにのせて富士まで走った。

あのときおれたちはどんな思いで
後ろのK子の重みを、つかまる腕の感触を、感じていたのだろう。

そんな不思議な関係のままおれたちは齢をとって
おれたちの勝手な思い込みも永遠の謎になってしまった。


もちろんボトルに書かれたK子の名前は旧姓のままである。


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富士山

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富士山を撮るのは飽きることがない。

これも齢をとったしるしなのか
年々この富士という山に魅かれていくようだ。

この後、湖畔を散歩していたら
昔の会社の先輩とばったり会った。

嬉しい出会いだった。

前日に富士に登ったらしい。

今年も登らなかった。
少し後ろめたさがある。

山が好きな父と何度か登ったが
齢とともに父が体力と自信を失い
登ることをやめてしまった。

来年、もう一度一緒に登ろう。
お盆にそんな約束をしてきた。


富士は不思議な山だ。