前回までの話で、道筋と例外の基本的な流れを説明した。
さて今回は、いよいよ 「物権」 について書く。
宅建では、大変重要な部分である。
その為、回を割いてでも詳細に記載したいと思う。
「一物一権主義」
一つの物には、一つの権利しか存在し得ないという、近代法の大原則である。
例えば、宝石の所有者は、Cさんだ! という事であり、逆の意味で「他の誰のものでもない」という事だ。
物権は、文字通り 「物」 に対する権利である。
その代表選手は、「所有権」 だ。
これは、「誰々の物」と確実に証明できる権利である。
さて、物には二つの種類が存在する。
一つは、「動産」 そしてもう一つが 「不動産」 である。
民法の規定上、物のやりとりは 「口頭」 で成立するとなっている。
口約束でも有効な取引という事だ。
余談だが、実務的には 「証明」 する為に 「契約書」 などを交わす。
もし、所有権を巡る裁判になったときは、「証明」 する必要がある為、記録を残すのだ。
話を戻して ・・・
問題なのは、「二重譲渡」 があった場合だ!
要するに、Aさんが、BさんとCさんに 「口約束」 で譲り渡した場合が問題となる。
この様な事態のために、民法はルールを作ったのである。
宅建の 「物権」 を問う問題では、この 「ルール」 を問われる。
先ずは、「口約束」。この事を、「意思表示のみ」と表現する。
要するに、口に出しただけでも、「有効」とする事だ。
これが、基本である。
そして、「口約束」があったかどうかの保証は、その後の処理の問題となる。
順を追って説明しよう!
もし、AさんがBさんに、「宝石を売るよ!」 と言って、Bさんが「買うよ」と言えば、売買契約が成立する。
「契約」は、有効って事だ。
そして、実際にAさんが、Bさんに宝石を渡し、BさんがAさんにお金を払えば、契約は終了する。
この、Bさんが宝石を実際に受け取るという行為が、「占有の開始」となる。
これによって、民法188条の「占有物への行使できる権利の適法の推定」となる。
しかし問題は、もしAさんが、BさんとCさんに 「口約束」 をしていた場合である。
「二重譲渡」の問題だ。
その場合は、BさんとCさんとで、契約の有効無効を問う問題が生じる。
この時に、「動産」の場合は、「実際に占有している」という状態で、優劣を判断するのだ!
前回までで、「利益衡量」と「帰責事由」という話をした。
要するに、「契約をしたのであれば、受け取るところまでやりなさい」 っていう理屈だ。
「受け取る行為まで」 を やった方とやらなかった方 さて、どちらが「利益」が大きいか?
又、どちらが責任があるか?
結果は、明白である。
保護に値するのは、実際に受け取った方である。
この事は、「動産」についての規定である。
民法178条(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
「
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗する事ができない。
」
条文を分解すると ・・・。
動産 = 宝石、鉛筆、電池、ストーブ、時計 ・・・・などなど。
物権 = 所有権(ここでは、所有権と思ってよい)
譲渡 = 売買(取引)
引渡し = 実際に物が移動する
第三者 = 二重契約になった相手方
対抗 = 「俺の物だ!」 っていう事
この事を 「対抗要件」 と言う。
単に当事者間(AさんとBさんだけ)の話なら、「言った言わない」の話で終わるだろうが、もう一人が間に入ってくると、かなりメンドクサイ事になる。
悪人が一人いて、善人が二人いる状態だ。
だから、この件の問題解決の方法として、民法は 「持っている方を勝ち」 と決めたのである。
これは、民法の道筋だ!
先ずは、ここが出発点になる。
そこから、例外がないかを考えるのが、民法の考え方だ。
宅建を勉強中の方々、まだまだ時間はある。
訳の分からない法律を考えるには、出発点を理解する事だ。
色々な過去問があるだろうが、大切なのは「問題の出発点」を見つけることである。