西ノ川~天柱石
べったりと疲れが、全身にこびりついている。
しかも、雨だ。
行くのヤダなぁ、と思いながらだらだらと朝飯を摂り、準備をする。
雨は強くもならず、止むこともなく・・・結局行く。だったら、とっととでかけりゃいいのに。
相当疲れているようで、思うように身体が動かないよ。
雨の中で撮影をするのは、自分で立ち止まるきっかけを作っているのかな?
西ノ川に絡みつくように道がある。
いくつもの滝が落ちる。
複雑な地形に縦横無尽の道。
いつの頃からあるのだろうか?どうやってこの複雑な地形に見当をつけて、道を通したのだろうか?
杉林の中に忽然と現れる十字路。
ここで悪魔と契約できるのだろうか?
濡れた木橋、崩落、風倒木・・・気温が低いな、帰りたいな。
いつの間にか下ばかり見て歩いていた。
ただならぬ雰囲気に顔を上げる。
あいつか?
ほっとするのと、がっかりするのと。
天柱石まできてしまった。夜明峠まで抜けてしまおう。
雨雲に閉ざされてはいても、夜明峠は明るいような気がする。安心感がある。
ここまで4時間もかかってしまった。なにやってんだよ。
八丁経由で帰ろう。八丁までは快適な下りだ。
だーっと下る、力を抜いてクネクネと歩く。下山は二時間半・・・。
久しぶりに湯之谷温泉にでも行こうと思ったのに、睡魔に引き止められて路肩で昼寝、起きたら夕方。
だめだ、帰ろう明日は畑仕事がある。
二箆山~雑誌山
また車中泊で山へ。
まずは二箆山(ふたつのやま)と雑誌山(ぞうしやま)という変換できなかったり、読みにくかったりする山。
この山がまた遠いのだ。
遠い上にぼんやりしていて道に迷い、登山口に到着するのがものすごく遅くなってしまった。
歩く前にそこそこ疲れた。
通帳の残高は常にマイナスだが、疲労は溜まるばかり、まさに潤沢である。
二箆山が美川村で、雑誌山は吾川村。
県境に並んだ山で、ヨラキレ山保安林管理道(また変な名前)で、それぞれアクセスできるはずだったが、ゲートが設けられて行き来ができない。
地形図を見るといけるじゃん、縦走できるじゃん、なんか楽しそう♪
歩き始めて30分ほどで、二箆山に到着してしまう。
間違いようのない尾根を通していくのだが、間伐材やイバラが邪魔をする。
ちょっと避けると、とんでもなく立派な作業道がある?!
しゃくなので山の中を歩く。
1258,7mピークは東の尾根に乗らないように注意して、南東へ屈曲する尾根にのる。
ずっと境界杭と境界線のテープがあり、時々山歩きの赤テープが見えるが、踏み跡は笹と藪の中に消えている。
黒滝峠からは登山道が出てくる。尾根の西を辿るトラバースから、主稜線の南側に回り込んだところから雑誌山に取り付く。なんだかまわりくどい道のつけ方だな。しかし、中津明神山への縦走路からの派生という意味では、やはり理にかなっているだろう。
時折、地鳴りのような不気味な音が響いてくる。夜から天気が崩れるので、遠雷かと思ったが、どうやら高知側にある鳥形山の発破のようだ。あまり気持ちのいいもんではない。
歩いてきたそれぞれのピークに、キティ山岳会の標識があった。同じ道をきっと歩いてきたんだろうな
。どこまで歩いたんだろうか?一度でいいから会ってみたい。
帰りにカラ池へ寄り道する。山懐に抱かれた湿原だ。
吾川村へと下る源頭に挟まれた凹地で、自然林に囲まれた素敵な場所だが、異界の入口のような不気味さもある。
帰路は往路で黒滝峠まで行く。ここから同高度を保ち、作業道をつないで登山口までトラバース。17時前に下山・・・迷うことはないとわかっていても、ちょっといやな時間帯だなぁ。
古岩屋温泉で汗を流し、石鎚山、西ノ川へ移動する。途中のコンビニでビールを買ってポックリ・・・。
清明
下見に行ってきた。
初日は国見山を南西尾根から。
長い・・・まっすぐで長い・・・なんだこりゃ。
積雪期以外で初めて登ったよ。
山頂はさすがにいい眺め、でもかなり霞がかかっている。
花の準備は足踏みだ。
芽吹いたはいいが、寒さのあまり戸惑っているようだ。
枯葉と同化するようにカタクリの葉も展開している。
が、うんざりするほど長い・・・下山も長い・・・。
下山後、愛媛に移動する。
途中で気になる温泉の看板を見つける。
奥小歩危温泉。
誇らしげにテンカラをくるくる回して誘っている。
行くしかないだろう。
国道から7kmほど脇道を遡る・・・。
営業していない。
ぶっ殺そうにも相手がいないので、黙って空を見上げる。
塩塚峰に抜ける道沿いに、前から気になっていた温泉があった。
賢見温泉。
居酒屋っぽいところが温泉受付?
油断しきっている店員たち、虚をつかればたばたする。
ここで入浴料を支払い、再び外へ誘導される。
怪しい通路の奥の階段を降りろと言う。
言われるがままに進むと、胡散臭いマンション風の扉・・・。
仰々しい金メッキの装飾にたじろぐ。
が、中は普通の脱衣所だった。
油断した・・・。
温泉の扉を開く・・・・・・・・・・・魚くさい・・・鯉の泳ぐ池の臭い?・・・・・熱帯魚店の臭い?・・・・
拒絶する意識、しかし冷え切った身体は、脳の命令を無視して自らを浴槽へ沈めてしまったのだ。
この徳島の悪意に満ちた陰謀に完敗である。
屈辱、陵辱・・・甘美な響き。
うっとりとした気分で塩塚峰へ向かう。
デスラーが星空撮影会を兼ねて、そこで車中泊をしようというのだ。
とっぷり日も落ち、谷あいの道に車を走らせる、とスカイラインが真っ赤に燃えている?!
なんと塩塚峰の野焼きだった。
テレビでしか見たことないし、よく人が死んでるし、人ごみ嫌いなのでマイントピア別子へと移動し眠る。
翌日は中七番から平家平~冠山~ナスビ平~中七番の周回コース。
沢沿いの道から、鉄塔保線道、そして稜線へ。
美しい笹原は強風が運ぶ雲滝に見え隠れする。
足下には樹木から落ちた霧氷が散乱する。
わずかな雲間から届く日差し。
何を求める。
カタクリが槍のように葉を尖らせて地面を突き破る。
高度を下げると春だった。
清浄明潔な春がそこにあった。
稜線の上で、消え入りそうな冬の残滓を思い、少し切なくなった。