TVを捨て町へ出よう! 私のやりたいこと | オーストラリア移住日記

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憧れから、移住決行、移住後の生活、起業、子育て、そして今・・・

このところ、尻に根っこが生え、出掛けることがめっきり減った。

週3回のトレーニングも、やり過ぎなのか? アキレス腱の痛みが続き、1ヶ月ほど休んで様子を見ているが、改善の兆しは多少あれど痛みが残り、歳のせいなのか? 回復が遅い。

 

それに輪を掛け、6月末からTVの前に釘付け状態で、不健康街道まっしぐらなのだ。

クリケットのテストマッチ「Ashes」のTV観戦は、毎日7時間座りっ放しのまま5日間続くが、この1ヶ月間に第3戦まで観戦し、今日から始まる第4戦を含め後2戦を観戦予定。

ラグビーのテストマッチ(南半球チャンピオンシップ)観戦は毎週2試合、目が離せない。

 

そしてラグビージャパン、オールブラックスXV戦に始まり、当然全試合応援するつもりだ。

女子ゴルフUSオープンも、友人の娘 "畑岡奈紗" のメジャー初制覇へ一喜一憂の応援だった。

ラグビーリーグ「ステイト・オブ・オリジン」も3試合観戦、最終戦でNSWが意地を見せた。

日本の大相撲7月場所も気になり、特に今場所は、オーストラリアでも大人気のネットフリックス "サンクチュアリー" の主人公にちょっと似た感じの新入幕力士、まだ髷(マゲ)の結えない伯桜鵬の活躍が楽しみだし、大関取りの3関脇の星取りも気になっている。

NHK大河ドラマも面白くなってきたし・・・

あ~あ! このままラグビーW杯に突入したらどうなるだろう?

実は、このところアキレス腱に加え、腰の痛みもちょっと気になっているのだ。

 

妻はそんな私の体調を気遣っている。

「もっと、どこかに出掛けたり、あなたがやりたいことをやれば!」

やりたいことは "スポーツ観戦" と "ネットフリックス" の映画やドラマの鑑賞なのだ!

私の身体は実に正直で、座りっ放しが悪いのを私も分かっているし、何事にもアクティブのはずだった私の性格を知る妻が私のTV三昧を喜んでいないのも知っているのだ。

 

随分昔、「書を捨て町へ出よう」という寺山修司の論評集があり、映画にもなった。

まあ、妻の言葉に従うつもりで、私も久々にシドニーのダウンタウンを出掛けることにした。

私の場合は「TVを捨て町へ出よう」だが、まあいいや。

 

NSWステイトシアターで催された「ピンクフロイド・トリビュートコンサート」。

言ってみれば、コピーバンドのコンサートであるが、ライブの雰囲気や音量はCDやYoutubeの比ではなく、10年ほど前にも似たようなコンサートに出掛けたが、その時のイメージが悪くなかったので、今回もチケットを購入した。

随分昔のことだが、この由緒あるステイトシアターで開催された「アート・ガーファンクル」のコンサートに妻や子供達を誘い、家族揃ってウットリ聴き惚れ、感動したことがあった。

ガーファンクルの歌声も然ることながら、1929年に開館したこのシアター、アリーナ席と2階席、3階席に別れ、ゆったりとした座席や前後スペースの広さ、通路は広く、床は分厚いフカフカの絨毯で覆われ、その洗練された気品と贅沢な空気感が私の記憶に残っていた。

30年前のその記憶は私を裏切らなかった。

重厚感のあるエントランス、100年の歴史に浸りながらそこを通り抜けると、正にレトロなシアター(劇場)にタイムスリップしたような感覚になる。

そんな雰囲気や歴史に包まれながら好きな音楽を聴くことは私にとって至福の時であり、こんなことこそが妻の言う "私のやりたいこと" なのかもしれないと思えてくる。

やはり、たまには街に出なければいけないのだ!

プログラムはピンクフロイドの代表的アルバム「ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」。

世界で最も売れたアルバムランキングで4位に輝く傑作であるが、私が驚いたのは、コピーバンドのコンサートでありながら約3000席が満席だったことだ。

土曜の夜、圧倒的に夫婦連れが多く、そのほとんどが私よりも年上に見えた。

それもあってか、どこにもロックコンサート独特のザワザワした喧騒は感じられない。

多くの夫婦が静かにワインを呑みながら開演を待ち、バンドの演奏中も静かに首を前後に振り、リズムを取りながら肩を寄せ合い曲を楽しんでいる、なんて素敵な光景だったことか!

コンサートは1部と2部に分かれ、1部はアルバム「ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」の全曲が演奏され、2部はピンクフロイドのヒット曲をピックアップして演奏、多少ボーカルに不満は感じたが、インストルメンタル(楽器)の部分はほぼ完璧だった。

アンコールは「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」。

観客は総立ちとなり、バンドと客が一体となってシアターが揺れるような大合唱になった。

日本を出発する直前の1988年、私は本家本元のピンクフロイドのコンサートを日本武道館で観たが、「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」の演奏中、数人の外国人グループが立ち上がり曲に合わせて腕を振り上げながら一緒に歌っていたのが印象的だった。

そんな若者たちを観て、「なんてカッコいいんだろう!」と思った。

あれから35年、まさか、私自身がその一人になるとは・・・ 

それって、なんて素敵なことだろう!

 

アルバム "ダークサイド・オブ・ザ・ムーン(狂気)" の一曲「タイム」は私のお気に入りだ。

これからどう生きるべきか? 

なぜか、その曲の歌詞が今の私への提言のように思えてくるのだ。

 

退屈な一日の時を刻みながら

その場しのぎの時間を浪費する

故郷のちっぽけな街から出ようともせず

誰かが、あるいは何かが道を示してくれるのを待っている

 

陽だまりの中で寝そべることに飽き飽きし

家の中から降りしきる雨を眺める日々

まだ若く、人生は長い

どんな無駄に使っても、有り余るほどだ

だが、ある日お前は

10年がアッと言う間に過ぎ去ったことに気付く

いつ走ればいいのか、誰も教えてはくれない

 

太陽に追いつこうとお前はひたすら走る

太陽は沈んだかと思うと、再び顔を出し

太陽は変わらないが、お前だけが年老いていく

息切れは益々激しく

お前は刻一刻と死に近づいていく

 

歳月は年ごとに短くなり、時間が見つからない

残るのは書き掛けの計画表だけ

そして英国流の静かな絶望にしがみつく

時は過ぎ、歌は終わった

もっとやりたいことや言いたいことがあったはずなのに