私は神宮外苑地区再開発に反対します! | オーストラリア移住日記

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日本では神宮外苑地区再開発の問題が顕在化している。

秩父宮ラグビー場でプレー経験のある私には、"なるほど" と安易に納得することはできない。

未来予想図等が公開されているが、都民ばかりでなく国民の誰もが利用する権利を有する施設や広場等が含まれており、「国民ファースト」の観点から決着すべき問題ではなかろうか。

野球場と思われる神宮球場はハッキリと分かるが、秩父宮ラグビー場は一体どこに?

元の神宮球場跡地と聞いた記憶があるので、たぶん、国立競技場下の白い部分だろう。

このプロジェクトに大手商社も含まれているようだが、毎晩ナイターが丸見え、たぶんビルの窓際の部屋に特別ラウンジ計画なんていうのも満更冗談でも無さそうに思えてしまう。

そう考えてみると、ホームベースの位置も観戦におあつらえ向きだったりして・・・

かつて、あの商社ビルの窓から元ジャパンの宿沢監督が秩父宮ラグビー場の試合を偵察した伝説を思い出すが、そこが神宮球場として取って替わる計画のようだ。

 

SNSなどにも様々な投稿がなされているが、この再開発が実施されることで、国民にとって、都民にとって、はたまた未来を担う子供たちにとって、どんな利点やどんなに素晴らしい変化が得られるというのか? 明確なコメントには一切お目に掛からない。

私が不勉強なだけかもしれないが、この着工にはどれだけの費用が掛かり、完成後にはどれだけの効果が見込めるという費用対効果の説明なども見たことも聞いたことも無い。

 

神宮外苑地区再開発は、2021年に開催された東京オリンピックが計画された時から続く既定路線上にあると考えるが、東京オリンピックは招致から競技場建設、業者の選定等々、様々な部分で不正な便宜供与や金銭に絡む汚職が表沙汰になっている。

明らかになった部分は間違いなく氷山の一角であり、起訴された者は、責任の擦り付けやトカゲのしっぽ切り、それも何も困らないような心のふてぶてしいオッサンばかりに見える。

結局、本当に悪い奴はのうのうと眠っているのだろう。

 

私の住むオーストラリアでは、例え自分の庭の樹木でさえ、勝手に伐採することは出来ない。

伐採が必要な場合はカウンシル(市役所)に申し出て許可を得なければならないのだ。

神宮外苑からは1,000本の健康で立派な樹木が伐採されると言う。

その全てが長い歴史の中を生き抜いて来た樹木であり、国民から愛されてきた樹木のはずだ。

植樹を行い、トータルでは以前より多くなると発表しているそうだが、混沌とした日本に必要なのは、何十年後の緑の豊かさではなく、今の緑や木々の持つ癒しなのではないだろうか。

 

2000年シドニーオリンピックを思い出す。

シドニーっ子の宝と言われるボンダイビーチがビーチバレーの会場に決まり、オーストラリア政府やAOC(オーストラリア・オリンピック委員会)の決定により、10,000席を超えるメインスタジアムとウォームアップコート2つとトレーニングコート3つが設置された。

元々、スタジアム建設に地域住民の反発は強く、完成が遅れに遅れたのを記憶している。

私達家族はシドニー移住以来ボンダイ地区に20年間住んだが、オリンピック開催前から開催後のボンダイビーチやスタジアムに関する記憶が一切無い。

工事車両の出入りが激しく、開催中には物凄い人混み! それが嫌で近付かなかったのだ。

私達はあの静かで自然溢れる美しいボンダイビーチを愛していたのだ。

そう、ボンダイビーチは3歳と1歳でシドニーに住み始めた息子達の格好の遊び場だったのだ。

そんなことを思い返すだけで、地域住民へのメリットは何も無かったのだと思えてしまう。

過去の歴史を紐解いてみると、バッハ氏(IOC会長)やコーツ氏(AOC会長)の名前も見え隠れし、20億円掛かったと言われるスタジアム建設の費用はどう使われたのか?

いずれにしても、オリンピック終了後、コンサートや様々なイベント開催により莫大な収益を生み出し地域住民に還元するという一見美味しそうな話もあったようだが、結局住民の反対から、スタジアムはアっと言う間に取り壊されてしまった。

ボンダイビーチには有史以来の美しい景観が戻り、地域住民はもちろん、このビーチを訪れる国内外観光客の驚きと癒しの場は完全に元通りに復元された。

ビーチの汚れや生態系などへの影響の心配もなくなった。

 

シドニーに住み始めた頃、数多く残る歴史のありそうな建物を眺めながら、「オーストラリアでは外壁を壊すことは許されないのだ」と聞いたことがあった。

近年は新しいビルも目立ち、今はその法律がどうなっているのか分からないが、シドニーは古い建物と新しい建物の景観のバランスがしっかり取れているように思う。

ビーチや巨大な公園などの自然や環境に関わる部分は、あるべき場所にしっかりと存在し、シドニーに住んで35年経った今も、景観の違いを感じることはほとんど無い。

もちろん、時代の流れで工場などの跡地が住宅街に変わっている地域は存在する。

 

神宮外苑地区、千駄ヶ谷駅から歩いても、信濃町駅から歩いても、青山一丁目駅や外苑前駅から歩いても、洗練された美しい自然や文化に出逢える素晴らしい地区である。

あの美しい地区を再開発する必要があるのだろうか?

秩父宮ラグビー場には血と汗と涙の歴史があるのだ。

それは恵まれた時代の私達の歴史では無く、戦後復員した先人達が、飲むものも食べるものも満足に無い中で、未来の若者達のために血と汗と涙で造り上げた東京ラグビー場の歴史なのだ。