東京オリンピックと飲酒 | オーストラリア移住日記

オーストラリア移住日記

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東京オリンピック開幕まで後わずかとなった。

各競技会場では酒類の持込みや会場内での販売が禁止されるという。

コロナ禍で苦労を強いられる飲食店や様々な業種の困窮、国民のほとんどが我慢に我慢を重ねていることなどを考えれば、当然の判断なのかもしれない。

 

もし、それがオーストラリアだったら・・・

先週末、ラグビー「ジャパンXV V ライオンズ」の歴史的対戦を観戦しながら、シドニー・オリンピック・スタジアムで観戦した8年前の「ワラビーズ V ライオンズ」戦を思い出した。

試合の結果は覚えていないが、忘れられないのは私の座席前の通路に並んだ30杯ほどのビールの紙コップ、都度買いに行って売店に並ぶのが面倒なのだろう、数名のオージー・グループが他人の迷惑そっちのけで並べたものだ。

ハーフタイム前に全部飲み終えると、後半には前半以上の紙コップが並んだ。

トイレにも売店にも行けない私は「迷惑な奴らだ!」と爆発寸前だったが、隣に座ったちょっと太めのオージーが「一杯飲めよ!」と満面の笑顔でコップを差し出した。

そんなオージーならではのラブリーなシーンを思い出しながら、もしオーストラリアだったら、いかなる事態でもスポーツ観戦とビールを切り離すのは無理だろうと私は考える。

帝政ローマ時代(2世紀頃)、政治家などの権力者は、ローマ市民に無償で食料や娯楽を与え、市民を政治的盲目に置く政策を推し進めた。

権力者達は、円形闘技場で毎日のようにグラディエーター(奴隷階級)の闘い(殺し合い)を開催し、それを娯楽として市民に楽しませることで票集めを行ったのだ。

そして、権力者としての地位を安定させようとした。

*詩人ユウェナリスの「パンとサーカス(見世物)」より

帝政ローマ時代の経済の柱の一つはワインの製造販売と言われるが、その観戦にワイン(アルコール)は欠かせなかったはずだ。

 

円形闘技場でグラディエーター達の殺し合いに熱狂し、ワインに酔いしれるローマ市民を横目に、当の権力者達(貴族、政治家、富裕層他)、 いわゆる上流階級や上級国民達は、ラウンジで高級な酒類や豪華絢爛な料理を堪能しながら、グラディエーターの殺し合いを楽しみ、優越感を味わったに違いないのだ。

オーストラリアで暮らす私としては、真夏の大会にビールぐらいは何とかならないのかなぁという思いが残るが、コロナ禍の現状からの政府や東京都、組織委員会の苦肉の判断なのだろう。

ただ、「オリンピック・ファースト」を貫いている政府や東京都、組織員会の姿勢に、国民の疑念や反発が起こり兼ねない火種はまだ残っているように思えてならない。

 

ちょっと気になるのは・・・

真夏の会場で入場者は水やジュースを飲み、応援は拍手のみ、他にも様々な規制を強いられているのに、その頃、各国要人やIOC関係者、大会関係者、政治家、スポンサー他諸々・・・

いわゆる上流階級や上級国民、また五輪貴族達は、クーラーの効いたVIPラウンジで、贅を尽くした世界有数の高級な酒類や有名ホテルの一流シェフや板前がプロデュースした超高級食材を使った豪華絢爛な料理に舌鼓を打ちながら、観戦しているのが予想される。

あくまでも私の想像の域だが・・・

更に気になるのは・・・

コロナ禍で切札となるのは「ワクチン接種」、政府や東京都、組織委員会は、確信が持てない「安心安全」という見せ掛けの言葉や対応の下で、強行しようと目論んでいるはずだ。

そして、更なる狙いは日本選手のメダルを量産による、国民の盲目化に違いない。

 

そんな政府や東京都、組織委員会の計算の裏で、政権に批判的な民放でさえ、週毎のニュース・ランキングは大リーグで活躍を続ける大谷選手がトップに定着し、問題意識はゼロに近い。

地元東京でのオリンピックで日本選手のメダルラッシュともなれば、言わずもがな、トップは間違いなくそのニュースに置き換わるのだろう。

オリンピック観戦者数の上限がどうのこうの、会場への小中学生の学徒動員がどうのこうの、はたまた会場への酒類の持込みや販売がどうのこうの・・・

そんな "やってる感" は「そんなこともあったっけ」となるのは火を見るよりも明らかである。

 

世界の要人やIOC関係者他、VIPへの接待予算は数十億円と聞く。

VIPラウンジに国民の目は届かないが、一般客は真夏の観戦でさえ、ビール一杯も飲めない。

VIPとはVery Important Personの略

それを日本語に訳せば「とても重要な人」という意味である。

オリンピックに関する一番重要な人は、自らお金を払ってチケットを買い求め、スタジアムまで足を運ぶ一般の観客や開催の原資となる税金を払い続ける国民なのではあるまいか。

 

いずれにせよ、VIPラウンジには各国要人やIOC関係者(いわゆる五輪貴族)やその家族、大会関係者、政治家、スポンサー、その他諸々が招待されると思うが、会場の一般客に禁酒を強いるのなら、間違っても、「VIPラウンジは個室だから」と取って付けたような理由で「飲酒は問題無し」という判断だけは下さないでもらいたいものだ。

 

我慢に我慢を重ねている一般庶民は、今こそ厳しい目を持つべきだろう。

VIPラウンジ内での飲食は、一般庶民と同じように、水やお茶と弁当、コーヒー・紅茶と和菓子やケーキぐらいに留めてもらいたいものだ!

そして、余ったVIP向けの接待予算は、医療関係者やボランティア、下働きのスタッフ他、スポットライトの当たることのない人々に使ってもらいたいものだ。

 

もし、会場内のVIPラウンジだけに飲酒が許されるのなら・・・

招致の切札として使われた「お・も・て・な・し」という言葉が誰のために使われたものなのかと問いたくなるのは私だけではないはずだ。