本当に日本にカジノがオープンするの? | オーストラリア移住日記

オーストラリア移住日記

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日本ではカジノを含むIR (Integrated Resort/総合型リゾート)法案が取り沙汰されている。

私の住むオーストラリアは世界でもギャンブル好きな国民性で知られ、当然カジノもある。

ほとんどのスポーツがベット(賭け)の対象となっており、一般向けのスポーツ・ライブ放送の合間に、普通に「スポーツベット」の愉快なコマーシャルが登場する。

もちろん、ラグビーもその対象であり、勝敗だけでなく、「最初にトライする選手は誰か」「最初のトライはキックオフから何分以内か」等々、ベットには細かい賭けの種類があるようだ。

スマホで簡単にベット出来るが、アナログ世代の私はついていけない。

 

スーパーラグビー「サンウルブズVワラタス」戦。

シドニーフットボールスタジアムで開催された。

試合前、息子から「最初にトライする選手、アキに5ドルベットするよ!」と電話があった。

サンウルブズやジャパン代表として活躍するアキこと山田選手、慶大時代を含め2度のラグビー留学の際に、ガーディアン(身元保証人)を任された縁から、彼は私達家族の一員のような存在で、同世代の息子達とは兄弟のような関係を続けている。

今回もシドニー到着後に直ぐ連絡をくれ、息子達とはトレーニングやミーティングの合間に滞在先のホテル近くのカフェで再会したようだ。

サンウルブズは惨敗だったが、その中でアキは2トライの大活躍、それもあのワラビーズの正FBファラオを抜き去ってのトライは圧巻で、彼の世界レベルを証明するトライだった。

 

その結果、彼は先週のスパーラグビー・ベスト15に選出された。

心残りは、アキのトライはその試合の2番目であり、息子はベットには勝てなかったようだ。

もちろん、ベットに勝とうが負けようが、アキの活躍を喜んだことには変わりない。

負けても5ドル、オーストラリアではこんなベットが家族を和ます楽しみの一つなのだ。

 

さて、「ギャンブル等依存症対策基本法案」の概要が政府のウェブサイトにPDFで記載されているが、どのような対策がなされるのか?そのサイトからは具体的な対策が全く見えて来ない。

今週月曜日の新聞記事に、元関脇「貴闘力」親方のインタビュー記事が記載されていた。

彼はギャンブルで今までに5億円は負けたそうだが、自殺者も何人か知っているという。

 

インタビューに対する彼の具体的な回答が記載されていた。

「お金を稼ぐ云々よりもギャンブルそのものが目的となる」

「入場制限があっても依存症対策にはならない」 

「韓国人が入場できない韓国のカジノ」 

「日本に1万軒あるというパチンコ屋には営業時間があるが、カジノは24時間営業」 

「レジャーランドにカジノをくっ付ければ手っ取り早いと考える国会議員」 

「依存症の気持ちなど政府には分からない」 

「日本のお金持ちは日本のカジノには行かない、なぜかと言えば、マイナンバーカードの提示で履歴が残るし、大負けすればうわさになる」

 

ギャンブル事情に詳しく、実体験を踏まえた貴闘力親方の回答は面白く説得力がある。

親方は行きませんか?という質問に、「そりゃ、行きますよ」と締め括っているのが笑える。

訪日の際に彼の経営する東京江東区の「焼肉ドラゴ」を何度か訪れたが、客と気さくに会話する親方の姿勢が客を呼び、とても繁盛しているようだ。

奥のテーブルでTVでよく見掛けるお笑い芸人グループが大騒ぎをしていたり、プロのスポーツ選手がいたり、きっと彼らはこの店の常連客なのだろう。

「相撲協会をクビになったのはギャンブルのため!」と公言する親方は、「ギャンブルの怖さを伝えることが私の義務と」胸を張る。*写真は焼肉ドラゴにて

ロシアで開催されているサッカーW杯も終盤を迎えているが、日本戦で退場になったコロンビア選手に対する「暗殺予告」がネット上で話題になった。

かつて、コロンビアではW杯でオウンゴールした選手が暗殺される事件があった。

今回のレッドカード(退場)を観た瞬間、私は「また、同じような事件が繰返されるかもしれない」と咄嗟に考えた。

画面に映し出された監督の表情も、そのような状況を連想させた。

オウンゴール選手の暗殺事件を、私は「自国のサッカーを愛するあまり」とか「国の名誉を失墜させた報復」など、熱烈ファンの行き過ぎた行動と能天気に考えていたが、その真相は勝敗の裏に隠された金銭的なやり取り(賭け)が起因していると考えてしまう。

 

もちろん、それは私の単なる推測に過ぎないが・・・

 麻薬大国コロンビアで、例えば麻薬組織は「ローリスク、ローリターン」の試合に大金を賭け、小さな配当でも結果として合法的に大金を手にしようとするようだ。

W杯の全ての試合が賭けの対象となる中で、コロンビア国内の下馬評は、第一戦目の日本戦は楽勝間違いなしだったはずで、大金を賭ければ間違いなく合法的に大きなリターンがあると踏んでいたに違いないのだ。

その的が外れたことで、その矛先は、当然その原因を作った者に向けられる。

 

「暗殺予告」は、そんな流れだったのではなかろうか。

オーストラリアでは、よくポリスの水際作戦で大量の麻薬取引(末端価格で数十億ドル規模)が摘発されるが、私はそんなニュースを観る度に、この摘発で何人殺されるのだろう?と考える。

麻薬組織にしてみれば、サッカー選手は国の誇りでも英雄でもなく、言ってみれば、単なる賭けのコマに過ぎない存在だろう。

日本にカジノがオープンすれば、その流れとして、間違いなくスポーツベットなどのギャンブルにも波及するのは間違いない。

その場合、日本では麻薬大国のような事件までは進展することはないかもしれないが、"八百長試合" などが蔓延(はびこ)る可能性は否定できない。

 

FOXクラシックムービーで「ゴッドファーザー」パート1~3までを観る機会に恵まれた。

パート1を観たのは中学生であり、退屈な映画のイメージだけが脳裏に残っていたが、今、この歳になって観てみると、なるほど凄い名作だった。

特にパート2では、初代ゴッドファーザー 「ビトー・コルレオーネ」の後を継いだ若き「マイケル・コルレオーネ」が、父親の歴史を辿りながら、頭角を現して行くストーリーで、マイアミやキューバへのカジノ事業の利権拡大についても克明に描かれている。

そして、利権争いの中で、多くの人物が無残に殺される。

100年程前の話であり、今とは時代背景こそ異なるものの、ネットの情報等を拾い読みすれば、日本にカジノがオープンすれば、アメリカのカジノ業界の参入が確かなようで、それでクリーン且つ安全性を保てるのだろうか?

もちろん、日本の反社会的勢力がその利権に群がってくるのは必至だろう。

 

10年以上前、息子が大学院生時代に、親友の父親が支配人をしていた「べネロング」というシドニー・オペラハウス内にあるレストランでウェイターのアルバイトをしたことがある。

その支配人がシドニーのカジノ「スターシティ」(現在の「ザ・スター」)のレストランの支配人としてヘッドハンティングされることになり、その際に息子も引き抜かれ、彼の下でアルバイトとして働くことになった。

ウェイターとしてフロアに立った初日、タイガー・ウッズが客として現れたそうだ。

シドニーで開催された大会に出場し、リラックスやリフレッシュのために訪れたのだろう。

様々な問題で叩かれたが、カジノ通いもその一つだったかもしれない。

守秘義務があり、息子は詳しくは話さなかった。

 

働き始めた頃、息子は「チップが凄いんだよ、給料よりも多いことだってあるんだ」とはしゃいでいたが、息子が決めたアルバイトであり、私は息子に一切口を出さなかった。

働き出してから数週間後、「僕、あのレストランで働くの辞めたよ」と電話があった。

一晩に大金(時には1億円以上)をスッた客が、レストランを訪れ、彼らには何を飲んでも食べても良いというカジノのルール(特典)があるらしく、ドンペリやレミーマルタン・ルイ13世を1本がぶ飲みし、ロブスターを何尾か食べて帰るのを目の当たりにしたようだ。
「毎日のようにそんなの見てたら、そこで働いているのが嫌になったよ」

まあ、息子にとって、そのアルバイトは良い社会勉強の機会だったのかもしれない。
息子は大学院卒業後に教員となり、幸せな結婚もして、一歩一歩確かな道を歩んでいる。

 

私は日本にカジノがオープンすることに賛成でも反対の立場でもない。

私自身は、ギャンブル(賭け事)を一切やらないという訳ではなく、ゴールドコーストなどを訪れた際には、有名なコンラッド・ジュピターズ・カジノを訪れることもある。

ただ、ゲームのルールを知らないため、ゲームが限られるし、タイトな日程の合間だったりするため、どっかり腰を据えて楽しむことはない。

また、使う金額の上限を決めているため、いつも大した勝ちも負けもない。

仕事柄、私は日本からオーストラリアを訪れる人たちと接する機会が多いが、時には彼らを案内してカジノを訪れることもある。

「日本に戻ったら、直ぐに送金するので、5,000ドル貸してくれないか?」

私は、彼が滞在中にカジノに入り浸りだったのを知っていた。

団体のリーダーであり、彼は私が断れない立場と知って無理を言ったに違いなかった。

貸せば、戻ってこないのは目に見えている。

以前同じようなことがあり、不覚にも私は現金を渡し、その後連絡は途絶え、最終的に知人を介し、返してもらうことはできたが、1年以上の時間を要した。

そんな彼らが別世界の人物かというとそうではなく、高学歴、家族もあり、一見誰からも尊敬される人物だったり、また、誰もが知る有名人だったりするのである。

 

正に「金の切れ目は縁の切れ目」なのだ。

日本にカジノがオープンすれば、家族や親戚縁者、友人から金を無心する連中が増えるのは間違いなく、そして、それが犯罪に発展する可能性は極めて高い。

また、パチンコ屋の駐車場に子供を置き去りにし、尊い命が失われるニュースが絶えないが、そんな日本に24時間不夜城のカジノがオープンすれば、一体どうなるのだろう?

 

賛成、反対よりも、私は日本にカジノは似合わないと思う。

オーストラリアに住み、私は日本に住んでいた頃よりも日本は良い国だと思うようになった。

日本を訪れたオーストラリアの仲間達の誰もが日本を絶賛し、また行きたいと言う。

歴史に培われた落ち着いたお国柄や季節毎に変る自然の美しさ、クリーンさや安全性、そして何と言っても世界に誇れるのは日本人の "おもてなしの心" なのだ。

多くの政治家がバカの一つ覚えのように言う。

「カジノができれば、世界から日本を訪れる観光客が増え、必ず経済効果が上がる」

もちろん、それは分からないが、怪しいギャンブル客が増えのだけは間違いないだろう。

経済効果にしても、爆買いに見るように、日本には世界の誇れる製品が溢れているではないか。

 

日本にカジノがオープンしても、私が行かない。

なぜなら、私には日本にまだまだ行きたいところがいっぱいあるからだ。