オーストラリアの魅力ってなんだろう? | オーストラリア移住日記

オーストラリア移住日記

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オーストラリアを訪れる日本人観光客数が年々減り続けているという。
シドニーに長く住む私の実感としても、減少しているのは間違い無さそうに感じる。

たまにシドニーのダウンタウンを訪れるが、かつて日本人観光客で溢れていたロックス地区(植民地時代の歴史が残る)に日本人観光客をほとんど見掛けることはなくなった。

 

仕事でゴールドコーストを訪れる機会があるが、サーファーズ・パラダイス付近にも、日本人観光客らしき姿を見掛けることは少なくなっている。

日本人は複数でツルんで歩くため、直ぐに分かるのだ。

日本の海外への渡航者数は増加の一途と言われ、年間に1,700万人が海外に脱出していると発表されているが、その内オーストラリアは3%に過ぎないようだ。

「オーストラリアへの日本人観光客のリピーターが少ない」とは以前からよく聞いた。

確かに日本人の旅の嗜好からすれば、手付かずの自然が観光の目玉であるオーストラリアは、歴史や文化に培われた奥の深いヨーロッパなどに比べれば魅力に欠けるのかもしれない。

 

それでも、オーストラリアは単に数の上では日本よりも "世界遺産" の数が多いのだ。

それは意外だったが、日本が世界で14位なのに対して、オーストラリアの11位なのである。

ただ、オーストラリアの世界遺産のほとんどは、自然遺産なのである。

 

世界遺産が大好きな日本人には、ある程度観光の呼び水にはなるかもしれないが、オーストラリア政府や国民は、世界遺産に対する意識が日本人とは異なるようだ。

世界遺産登録には登録されてからも様々な制約が義務付けられるようだが、オーストラリアでは世界遺産をビジネスチャンスに繋げる意識は低いようだ。

”自然遺産なのだから自然のままにしておくべき”

それがオーストラリア人のスタンスなのだ。

2013年6月に富士山が世界遺産に登録され、その後、よく登山者の渋滞が話題になっているが、オーストラリアではまずもってそのような現象はあり得ない。

 

2000年シドニー五輪の時に、シドニーッ子の宝 "ボンダイ―ビーチ" にビーチバレー会場として巨大な鉄骨のスタジアムが建設された顛末を、以前ブログに記した。 

豪州政府やAOCは、五輪後にボンダイ地域が経済面で潤うようなビジネスチャンスを提示したが、「有史以来の景観を損ねる」という民意が尊重され、瞬く間に取り壊されてしまった。

どこを訪れても観光地化されていないオーストラリア。

自然のままは、オーストラリア土産や食文化にも表れている。

シドニーに住んで25年、いつどこに行っても、食のご当地名物は見つからない。

シドニーから5,000km離れたパースでも、パースで手に入るものや食べられるものは、シドニーと何ら変わらず、それが海沿いでも内陸でもほとんど同じというのが笑える。

 

シドニーから100kmの "ブルーマウンテン" (世界遺産)に日本の客をよく連れて行く。

まず聞かれるのは、「美味しいコーヒーが飲めるの?」である。

"ブルーマウンテン" は、ジャマイカ産のコーヒー豆のことで、こことは何の関係も無い。

ユーカリの木から出るガスのために、山全体が青く見えることからブルーマウンテンと呼ばれているが、ここの名物と言えば、"ユーカリ・オイル” ぐらいだろう。

昨年末に発行された「世界の絶景・秘境100」という本が、日本で人気のようだ。

その本の腰巻には、「世界の果ての秘密の場所へ。死ぬまでに行きたいベストオブベスト !!」と謳い文句が書かれているが、旅行代理店が企画/編集/発行した本ではなく、目の付け所が観光ガイドブックとは異なるのでとても面白い。

 

100件の選定基準は不明だが、オーストラリアは7件選ばれており、アメリカの12件に続き、堂々の2番手、3番手にはスペインとブラジルが共に5件ずつで続く。

"絶景・秘境"という視点で選ばれているのかもしれない。

オーストラリアの7件全てが、ありのままの自然の造形である。

そのほとんどは "秘境" の名の通り、人が近付くことすら出来ないスポットばかりなのだ。

正確に言えば、人の侵入を禁止しているスポットである。

例えば、カップルで見ると永遠の愛が約束されると言われるグレートバリアリーフのハミルトン島近くにある「ハートリーフ」などである。

”ハートリーフ” を紹介したついでに、たぶんオーストラリア領ではないと思うが、パプアニューギニア近辺に「バタフライ・アイランド」という島がある。

その周りをサンゴ礁が囲み、その呼名の通り蝶の形に見える。

雨の多い地域のため、余程運が良くないと見ることは叶わないようだが、ハートリーフ同様、「この島を見ると幸せが訪れる」という言い伝えがあるようだ。

 

この3月に日本に向かうフライト中、25年間で初めてバタフライアイランドが見えた。

その後、幸せが訪れたかどうかは分からないが、訪日中、セミナーの成功やその後のキャンプの成功、多くの嬉しい再会や新しい出逢いもあった。

凄まじい日程だったが、なぜかストレスは無かった。

そんな状況が今は幸せと言えるのかもしれない。

この写真は私が写したものでは無いが、雲の合間から見えたバタフライアイランドは、正にこの写真の通りだった。

在日オーストラリア大使館や政府観光局、航空会社、旅行代理店などを中心に日本人観光客のオーストラリアへの誘致について様々な思索が開始されているようだ。

スポーツ王国という特徴を活かし、スポーツ関連の誘致に可能性を追求しながら、ささやかではあるが私達も努力を続けている。

その一環として2011年には「NPO法人日豪スポーツプロジェクト」も起ち上げた。

語学やスポーツの学びの地として、若者のリピーターを増やすことを目指そうとしている。

 

ただ、問題は日本とオーストラリアを結ぶ高額な航空運賃や近年の物価高(ホテルや飲食等全般)であり、来豪者の減少に拍車を掛ける可能性を私は否定出来ない。

中国人富裕層がオーストラリアの不動産を買い漁り、オーストラリア中に中国人御用達が溢れている昨今、オーストラリアを訪れる日本人は更に減るかもしれない。