世界で一番住みたい街 | オーストラリア移住日記

オーストラリア移住日記

憧れから、移住決行、移住後の生活、起業、子育て、そして今・・・

シドニーは、常に "世界で一番住みたい街" の上位にランクされている。

しかし、その実態は、"世界で一番住みづらい街" の上位にランクされるかもしれない。

もちろん、人々の希望に基づいた「住みたい街」の上位にランクされているのが、住みよい街と住みづらい街の比較では無く、私は、なぜ住みたいの?は分からない。

 

いずれにしても、住んでいる私の視点に違和感を感じる人も多いと思う。

ただ、新しい年明けに向け、今後のオーストラリア経済や金融の展望、生活環境の変化にはしっかりと目を向けていかなければならない。

緑や公園等の保善状況は抜群に良く、教育・スポーツ等の文化的環境の面も良い、治安も悪くはない、普通に生活していれば差別や格差も感じられない。

ただ、生活基盤となる物価の面でシドニーは "安穏と生活できる街" ではなくなってしまった。

移住や留学、ワーホリ等の長期滞在について相談を持ち掛けられることがしばしばある。

正直、昨今のシドニーならそれを手放しで勧めることはできない。

とにかく、生活のベースとなる家賃や食費が日本の比ではないからだ。

 

安易に留学やワーホリでシドニーを訪れる若者は今も後を絶たないが、シドニーで生活するには、それ相当の覚悟が必要になるだろう。

「アルバイトをすれば何とかなるし」

「オーストラリアは日本に比べて時給が高いって聞いてるし」

「農作業の人員が不足してるようだし、最悪はフルーツピッキングでもすれば」

私はそんな彼らに「そんな甘くないよ!」言いたい。

 

かつては、日本レストランや免税店、観光客向けの土産屋の仕事があった。

モグリ、いわゆる正規に契約しないアルバイトに対し、給料の現金払いで金額を下げ、政府が義務付けた従業員の税金や年金の積み立てをゴマかす・・・

そんなことが当たり前に行われていたが、その規制が厳しくなり、簡単に人が雇えなくなった。

アルバイト一人雇うのに幾ら掛かるか?

そう、よほど語学力やスキルが無ければ簡単に働けなくなってしまったのだ。

 

「テレビでオーストラリアが紹介されてたけど、相当物価が高いらしいねェ」

日本の友人と話す際、開口一番、そんな話から会話が始まった。

テレビでどのような報道されたのかは分からないまま、友人は続けた。

「他の都市に比べるとシドニーは月に20万以上多く掛かると言ってたけど」

確かにシドニーの物価は高い。

土地や家賃など不動産の高騰に連動し、状況は毎年悪化の一途を辿るような気がしてならない。

 

シドニーは空前のラーメンブームである。

日本語情報誌には毎月のようにラーメン店が特集される。

日本の有名チェーン店も含め、至る所にラーメン屋が開店し、「いつの間に?」と感じることが何度もあるが、そこで普通に食べれば、一杯、最低でも20ドル(2,000円弱)する。

最近は日本でも一杯1,000円以上のラーメンは当たり前のようだが、シドニーで食べるラーメンは日本のような食後の満足感が全然感じられないのだ。

ちこちに回転寿司も目立つが、質は日本なら安い皿に載ったレベルの寿司なのに、妻と2人だけでも、満足に食べようとすれば確実に100ドルを超えてしまう。

"朝マック" でさえ10ドルを超える。

300円で腹一杯になる日本の朝食を考えれば、満足度の差は比較するのも嫌になる。

 

最近はほとんど外食をしなくなった。

ただ、スーパーの食材や日用品も、外食同様にその高額さは日本の比ではない。

たぶん、シドニーのスーパーに日本のスーパーより安価な食材や日用品はきっと無いだろう。

その上、質は悪く、キャベツなど硬い上に全く甘さが無い。

フルーツも然り、全然甘くない上にみずみずさが無い。

どうして?

いつの間にこんなことになってしまったんだろう?

正直に言えば、子育ても終え、ある程度生活に余裕が出てきたから、そう感じるのかもしれないが、農家にしても労働者にしても意欲を無くしているのではないか? 

そう考えるとちょっと怖い。

 

昔からスポーツ観戦はシドニーの最大の楽しみだが、それも簡単には出来なくなった。

例えば、ラグビーのテストマッチをスタジアムで観戦するなら、100ドル払ってもゴールポスト裏の席、Bシートで150ドル、22m以内で観戦するなら300ドルはするだろう。

日本もそうかもしれないが、富裕層がコントロールしているように思えてならない。

最近の統計によれば、2,300万人の人口に対し、富裕層(100万ドル/約1億円以上保有)は90万人強で約4%、因みに日本は全土で約3%だそうだ。

オーストラリアの数字の内訳には中国系富裕層の割合が高い。

彼らがシドニーの不動産を現金で買い漁っている。

シドニーの不動産価格はこの25年間ずっと急激な右肩上がりが続いており、市内中心部から1時間圏内に、1億円以下の2LDKマンションを探すのは至難の業だ。

 

世界金融の現状についてのTV番組で、「1%の富裕層の持つ資産が、99%の一般世帯の資産と同額」というニュースが報じられていた。

なるほど、だから世の中は良くならないんだと嘆いてみたり、世界を見れば俺達と同じ仲間が99%もいるんだと安堵したり・・・

いずれにしても、不動産価格の高騰は住みづらさのバロメーターである。

中国人富裕層のために中国人御用達の不動産屋や銀行がシドニーに増えている。

シドニー市内でよく見掛けるドイツ製の高級スポーツタイプの車のドライバーは、必ずと言っていいほど中国系と思われる若者で、そのナンバーのほとんどが888。


つい先日、妻が数日入院した。

オーストラリアの医療水準は高く、設備も充実している。

プライベート保険に加入しているため、手術費用も入院費も、食事もカバーされた。

もし、保険に加入せず、全額自己負担なら目が飛び出るほどの金額になったはずだ。

ただ、プライベート保険の年間費用も、掛け捨てなのに、とてつもなく高額なのである。

それでも、なんなのだろう?

そんな住みづらさの中にも、このシドニーの生活にはどこか魅力があるのだ。

ゆったりと流れる空気と言うか、生活感と言うか、街の色合いと言うか・・・

やっぱり、私にとってシドニーは世界で一番住みたい街なのかもしれない。