私が小学生の頃、”兼高かおる世界の旅” というTV番組があった。
世界の街を映像を交えてレポートする番組で、毎回ワクワクさせられたものだ。
あの兼高かおるが、世界で一番住みたい街と言ったのが ”パース” だった。
世界を知る旅慣れた女性ジャーナリストの言葉から、一度は行ってみたいと思っていた。
ただ、長年シドニーに住み、オーストラリア国内のどの都市を訪ねても、街の景観も特に ”食” が変わらないため、この25年間ほとんど国内旅行をしようという気が起きなかった。
そうは言っても、”結婚30周年のアニバーサリー” 私達はパースへの旅に決めた。
早朝7:00のフライトで出発すると、5時間のフライトで到着するが、同じ国なのに3時間の時差があるため、パース時間の9:00に到着する。
1日が長く感じられ、何か得した気分になる。
結婚30年は真珠婚と言うそうだが、今回の旅は妻の誕生日も兼ねた旅である。
初めて訪ねたパースは、私達夫婦を期待した以上にリラックスさせてくれた。
これと言ってガイドブックにあるような名所旧跡を訪ねるつもりが無かったため、何かに囚われることなく、私達の時間を勝手気ままに楽しむことが出来た。
適当な時間にホテルを出発して、好きな時間にホテルに戻ってプールやジャグジーでくつろぎ、夕焼けの ”スワンリバー” を眺めながらラウンジルームでワインを楽しんだ。
そう、30周年を記念して、妻はラウンジルームの有るちょっと贅沢なホテルを予約したのだ。
無料のバスがパース市内を引切り無しに走っているため、主要な場所ならどこへ行くにもそのバスが利用できるのはこの上ないサービスだった。
そんな素晴らしいサービスをパース市民も使えるのは驚きであり凄いことだ。
パースでは歩行者の信号無視に厳しく、違反すれば150ドルの罰金が課せられるそうだ。
無料バスの影響もあるのかもしれないが、シドニーから比べれば圧倒的に車の量が少ない。
そのため、いつでも渡れるような気がするのだが・・・
確かに、横断歩道以外を横切る歩行者をほとんど見掛けなかった。
私は25年シドニーに住んで、車が来なければ道を渡るという習慣が体質化している。
シドニーでの暮らしのまま、私は何度か道路を渡ったが、その際に何となく視線を感じた。
幸いにも警官やポリスカーに鉢合わせすることは無かったが、後でそんな厳しいルールがあるのを知り、ホッとしたと同時に、マナー違反がちょっと恥ずかしかった。
街を歩いていてゴミが落ちていない。
オーストラリアでは州毎に法律が異なる。
住宅街はもちろん、公園もレストランもバスの中でさえ、パブリックエリア(公共の場)が極端に清潔に保たれているのがとても印象的だった。
国内外を問わず多くの人から愛される理由はそんなところにあるのかもしれない。
滞在した3日間、毎日35℃を超えたにも関わらず、飲み物の空缶やペットボトルやコップ類が道端や公園に投げ捨てられているのを一度も目にしなかった。
シドニーなら、飲み掛けのボトルやジャンクフードのロゴ入りパケット、紙コップ、プラスチックバッグ類を至る所に見掛けるが、パースにはそれが無かった。
パースでは、ゴミ処理システムが完璧に整備され、街全体に徹底されているそうだ。
システムだけあっても、市民のモラルが必要不可欠で、ゴミ収集の職員の質も重要だろう。
シドニーに比べ、ゴミ箱やその周辺が汚れていないのだ。
きっと市も市民も誰もが美しい街を保つための努力をしているに違いない。
今日の予報は晴天、気温は41℃と予想されていたが、結果的には38.8℃だった。
湿気が極端に少ないため、肌を刺すような暑さはあるものの、ジトッとした日本の夏のような暑さは感じられず、日陰に居ると涼しく感じ、そよ風がとても気持ちいい。
つい先日、シドニーで46℃を体験したばかりだったため、今では41℃なんて大したことじゃないじゃないか!と思うようになっているのは異常なことだ。
温暖化が進み、一体全体地球はどうなってしまうのだろう?
あまりの暑さからだろうか?
ショッピングモールを上半身裸で歩いていた酔っぱらいが警官に聴取を受けていた。
公衆の面前で上半身裸になるのが悪いのか?酔っているのが悪いのか? そのどちらかは分からないが、それも市民に対するモラルの徹底の一環なのかもしれない。
9日からチャイニーズ・ニューイヤー(旧正月)が始まり、猛暑にも関わらず、ショッピングモールはとても賑わいが感じられた。
パースには中華街という特定の場所は無いようだが、パース駅の北側、ノースブリッジ地区にチャイニーズ・レストランが集中しているようで、観光客風の中国人の団体を多く見掛けた。
もし私がパースに住んでいれば、この地区にきっと行きつけの店を見つけるだろう。
この界隈には怪しげなショップも多く、昼と夜は全く違った表情になるに違いない。
パースにもカジノがあり、ホリデー気分で夕食後にちょっと顔を出そうか思ったが、ワインの量が多くなるにつれ、3時間の時差が睡魔を誘い、今回は夜遊びには出掛けなかった。
もちろん、今回の旅の目的を考えれば、最初から出掛けるつもりはなかったのだ。
旅の醍醐味は、やはり非日常を感じたり体験することである。
その意味からすれば今回の旅は実に有意義だった。
また、いつかパースを訪ねるかどうかは分からない。
「やっぱり、食事なんだよねぇ」
妻は、どうせお金を掛けるなら、もう少し貯めてやっぱり日本に行きたいようだ。