つい数年間から徐々にではありますが
遠くのものばかりに目が行っていたことに気が付き始めてきたのです。
外国の見たこともない景色、また国内でも東北から遠く離れた九州などの地域や
行ったことの無い景色に憧れて
「行ってみたい」と欲求を掻き立てられ続けてきました。
そして、力任せにパチンコ玉のように遠くへ行くことばかりやってきました。
それは、外的な目線に追いやられるという意味では、若さゆえの自然の事であり行動なのでしょう。
逆を云えば、病気に苛まれて身体に痛みがある人にとっては
歩くことさえも苦痛であり、遠くへ足を運ぶことなど到底不可能
と思えるほどに遠くの旅行というものに対しては勇気のハードルが上がっていくことのようにです。
健康であるが故、体力があるが故に身近の所では満足できずに、身軽に遠くを目指し飛行機に乗れる。
そんな自分肯定によって、旅行は遠くへ行くものとばかり考えていた時代もありましたが
金を払って飛行機に乗ることよりも、そのうち自然の成り行きが故なのか?
体力や技術力が必要な登山にも目覚め始め
大雪山トムラウシ山の縦走などの山登りを行い、熊野古道中辺路などを歩いていくうちに、
何かに気が付き始めてきたのです。
絶景と云う景色の素晴らしさ、自然環境の独自性など・・・そこの現場に行かなければ
本を読むだけ、人から聞くだけ、ユーチューブで予備学習をするだけでは、分からなかったことが
実際にその空気に身体をさらし、息を吸うことによって
嗅ぎ分けられる雰囲気と云うものがあることは確かでした。
それを何度もやってみた結果、
種の繁殖と似たような行動動態に近いものを感じ始めてきました。
つまり、結婚したい相手と云うものは、近親血族などではなく、より遠い遺伝子を求めることは
人間の免疫防衛本能という観点から当然の事であり、
人は住む地域から離れることによって、異性を求めるように、
異国を求め旅行したいと魅力を感じる心理に自然となり得ていくのでしょう。
しかし、先ほども述べたように、それほどまでに別世界に魅力を感じるのならば、
そこへ移住すればよいものを
何故だかまた、自分の住処に帰ってきてしまう。
結局、自分の住んでいるところこそが、最高であるという証明をするために
遠い場所へと観光へ出向いてみたり、絶景と云う場所へと赴いてみたりするのは、
やはり、そこは自分の住むべきところではないという除外確認をしに行っているようなものです。
以前、熊野古道を歩いていた時に、いにしえの道としての魅力は十分に感じられましたが
と同時に、道端に生えている植物が、自分の知識上では食べられないものばかりで
こんな所には住めやしないな~と直感的に感じたことがあります。
今住んでいるところは、雑草が食用です。
春の七草などが至る所に生えています。
一番魅力的な所は、実は自分の足元に存在していたのです。
茨城県ひたちなか市の国立公園の外来種ネモフィラは有名です。
しかし、面白いことに、ネモフィラは、自分の目の前の畑に在来種オオイヌノフグリという名称で
4月になると一面に青色となり目を楽しませてくれます。
確かに、蛍光色っぽい青色のネモフィラが丘一面に咲き誇る色の鮮やかさには目が奪われます。
その鮮烈な青色に目が奪われて、一瞬来場している多くの人が見えなくなるほどです。
しかしながら、とかく西洋の花は、華やか過ぎるきらいがあります。
対して日本固有種の群青色に近いオオイヌノフグリは、ひっそりと畑を青色で彩ってくれて
注意深く見ないと気づけないほどです。
しかし、よくよく注意深く畑一面に目を凝らすと、随分と多く、
何億、何兆と咲いていることに気が付くことが出来ます。
またその群青がかった青色は、どこまでも深い色合いで目に優しく、心を落ち着かせてくれ
まるで洞察力が向上したかのように集中力を高めてくれます。
あれほどまでに苦労して、ひたちなか市に行き、
そして第5駐車場もある遠い駐車場から道路を跨いで歩いて入場口にまで到着し
そしてそこから20分も人混みと一緒にベルトコンベエアー様の移動をして
ネモフィラ現場まで到達したかと思えば、ゆっくり写真などとれるはずもなく
また人・人・人でネモフィラを撮りに来たはずなのに、
なぜだか人ばっかり写真に映しているという矛盾に気が付いてしまう訳です。
それはある意味でのミーハー的群衆心理に見事ハマった行動だったのかもしれません。
しかし、やはり、自分の畑一面のオオイヌノフグリは、私以外に見る人はおらず
誰もそんなものは見に来ませんので、ゆっくりと鑑賞し、妄想にふけることが出来ます。
これも、年齢によるホルモンの減少によって
遠くに行かずとも、足元にも様々な魅力があることに気づかせてもらった
と云っても過言ではないかもしれません。
もしくは、老眼によって近いものが見やすくなってきた効能もあるのかもしれません。
今日はそんな風に畑一面のオオイヌノフグリを見ながら、思った所でした。
本日もお付き合いいただきましてありがとうございました。