麦の御加護を受け、海の精霊に見守られながら、闇夜のとばり様が来ると共に
深いやすらぎの底へと誘われ、心と身体が癒されたこの地に別れを告げ
十勝地方を後にして、導かれるが如く海岸線を釧路方面へと進みました。
美しい海岸線は遠浅なのでしょう、遠くから波が押し寄せてくるのが分かります。
荒々しい神が拙速に作り上げたのではなく、ゆっくりと楽しみながら作ったであろう
美しい遠浅の海は、眩しく輝いています。
などとちょっとメルヘンチックな気持ちにさせてくれるような穏やかに打ち寄せる波に
アルファ波の居心地さを感じつつ、このままでは安寧という呪縛に
身動きが出来なくなるようで、冒険心を奮い起こしてすっくと立ちあがり進みます。
海岸線はどこも
昆布を干すための玉石が敷き詰められ、昆布漁が盛んであることは、一目瞭然なのですが
山間部に住む私にとって、海辺は憧れの地でもあり
しかしながら
あまり長居していると、もの凄く寂しさを感じ始めてくる場所にも感じられます。
住めば都と云いますが、私にはやはりこの何とも云えない寂しさには
耐えられそうにありません。
そんな風に思わせる風景と、潮風と精微な回復力を持つ
この地から噴き出るヒーリングエアーを浴びながらバイクを走らせます。
この突如として心に襲って来る寂しい感覚は、
サロベツ原野に居る時も・・・・猿払村を通過する時にも感じました。
北海道では3か所が私の心に土足で勝手に入り込み、そして強制的に露わにして、
寂しい感情を擦り付けられ、
人恋しいという感情を無性に掻き立ててくるスポットです。
何で、スイッチが入ったかのように、このようにいきなり感情が爆発するんでしょうか?
そんな風に辺りを眺めて・・・何で?
何がトリガー?
と自問自答しながら走ります。
あまりうわの空で運転しているとあっという間にカーブに追突しそうになるので
邪心に囚われかける気持ちを振り切って、心に鞭を打ち吹き飛ばします。
途中で、オジロワシを見つけて道脇に停車し、
トップケースから200-600mmの望遠レンズを取り出して
ブロアーで埃を飛ばしてから装着し、狙います。
飛びました。
海辺だからミサゴか?とも思いましたが、しっかりと尻尾が白かったです。
最近、オジロワシは北海道へ住み着くようになったようで、
道東根室を起点に見る事が出来るようです。
オジロワシは別名、神になれなかった鳥と呼ばれています。
オオワシは崇められるのに、何故だかオジロワシは蔑まれて見られることに、
何故と腹が立ちますが、命名した方々には訳があるのでしょう。
そんな風にまたもや何故?という疑問を抱きつつ黄金道路をひた走ります。
その後、国道沿いの釧路湿原手前の草原地帯では、
何気にタンチョウ鶴があちらこちらに居ました。
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本州人から見れば・・・ウルトラレアな野鳥です。
私の地元は鶴の恩返しで有名な所ですので、
果して、江戸時代には寒冷化でタンチョウ鶴が
東北南部まで来て生息したことがあるのだろうかと思いをめぐらせます。
せっかく釧路湿原に来たので、湿原を一望に見渡す所まで
遊歩道で歩いてみる事にしました。
左回りに1周です。
左から先端まで行くと平坦ルートで、右側から行くと階段地獄でした。
広大な湿原にはまだまだ夢が詰まっています。
先端の展望台から釧路湿原を眺めたところです。
広い面積が、あまり手つかずの状態で維持されています。
しかしココに大規模ソーラーパネルを設置する企画が上がっていると知り、
残念で仕方がありません。
一周も歩くと、望遠レンズなどの重量物も運んだとあって、なかなかに
いい汗をかいたので、厚岸の道の駅で、まるえもんという牡蠣貝を食べる事にしました。
まるえもんは、広島の牡蠣、宮城の牡蠣、鳥海山の夏牡蠣のどれとも違う味で
本当に新鮮で濃厚な味で旨かったです。
今年は水温が高く、牡蠣が不漁で1種類しか食べられませんでしたが
3種類を食べ比べすることも出来るそうです。
またこの場所に来る機会があったら、是非ともまたまるえもんを食べたいと思いました。
一番右が今年から乗り始めた10年前に製造された初期型水冷GSです。
一路、厚岸を離れ、霧多布岬へ
切り立つ海岸線が印象的です。
帰りは、ルパンの故郷である浜中町へと訪れますが、下調べ不足につき
ルパン刻印のマンホールなどは見つけられずに、ただ浜中町を通っただけになりました。
一応、ラッピングカーの写真を記念に残しておきました。
霧多布の国定公園の中にある住宅が珍しいと聞いたので、写真を撮ります。
あーなるほど、確かに国定公園の中に住宅がありますね。
そして
10年間ムツゴロウさんがヒグマと暮らして居た島、
嶮暮帰島
読めますか?
けんぼっきとう
と呼ぶそうです。
海の中に要害のようにそびえ、どこから上陸するのか?と思う程
周囲が切り立っています。
映画で見る様な圧倒的な風格を持つ弧島の立た住まいに、
しばし呆然と仁王立ちしながら、溜め息をもらし見とれていました。
そして、本日の宿泊地、根室の尖端、納沙布岬まで到達しました。
辺りは、キリで何も見えません。
今日はゲストハウスにお世話になります。
有料でテントを張る場所が2か所ありますので、
そこでテント泊させていただきました。
シャワー10分200円でした。
静かな時のうつろいをテント内で過ごします。
キリに包まれたまま、僅かずつローライトになっていく様子が心地よく、
唯一無二という言葉がありますが、その場所、その瞬間、その静けさや
その場所の匂い、その時の肌温度などなど
新鮮に感じながら、夜が更けていきます。
テント泊では、荷物を下ろしたり、飯を作ったりとやることは多いのですが
精神的には本当にのんびりできます。
ゲストハウスから、時折漏れる自己紹介の声や会話や
酒を飲んだのでしょう笑い声などをうっすらと耳にしながら
辺りは風もなく静寂に包まれ最高な晩酌の夜でした。
意識はまるで探知レーダーのように周囲をサーチし、その範囲は広がりを見せます。
まるで100m先から人が歩いてきても足の運びが分かるほど
感覚は研ぎ澄まされ、鋭敏となり
野生とはこのような感覚が当たり前だろうから、いわゆる本能が僅かに覚醒したのだろう。
などと思ったのも束の間、アルコールに脳は浸潤され麻痺して
それ以上、理知的人間の表現力は溶かされていきました。
その3に続く