土門拳に魅了される | 独学の道Ⅲ

独学の道Ⅲ

自分で自分を変えることは、到底無理なことかもしれないが、それに望む気持ちの自力論は高尚で偉大である。
仮にその結果が甚だ振るわなかったとしてもだ。
By幸田露伴(努力論より)

先日の酒田方面のついでに土門拳記念館にて以前からちらっと見たことはあるが、対峠して見ることはなかった。入り口すら不明な記念館に入って、いきなり「母のいない姉妹」というタイトルの写真にボディーブローを受けたような衝撃を感じる。

というのも写真一枚一枚に添えられているエピソードがなんとも昭和で泣けてくる。
年を重ねてくると涙もろくなるのか?自分がそういう感情移入タイプなのかは分からないが、立ち止まってしばし見入ってしまう。

全体の内容が濃いので数年に1度の来館で充分だとは思うが、何か人生につまらなさや不足を感じた時など・・、いやそういうもんじゃないなーー!?
ま~山形県酒田市に来た時には是非足を運んでいただければとプッシュしておく。
それぞれのエピソードにも感動したが、現代でも共通することに気がついた。
モノクロームの写真である。

現在のデジカメでは白黒写真の諧調が豊かに表せない。カラー写真が当たり前なので、いかに色を正確に綺麗に見せるかや、私の所持しているキャノン製カメラは人肌を美しく表現するエンジンが入っているので余計に諧調が貧素である。そこはセンサーサイズのダイナミックレンジで補ってはいるのだが、カラー写真をモノクローム化してもイマイチなことが多い。

一番簡単なのはライカMモノクロームというカメラで写せばいいのだろうが、なんせ本体のみで100万コースなのだから、レンズを含めて手が出せない。とある情報では、シグマさんのスタッフで白黒に強い関心のある方が居るそうなので、シグマさんに注目しています。

それはさておき土門さんの頃のライカ製カメラでレンズはニッコールというフィルムカメラの白黒の諧調がとても豊かで、カラーだったらがっかりするけどモノクロームだから写真が生きてくるという写真ばかりで、記念館はそういう意味でモノクロームの素晴らしさを改めて悟らされるいい場所でもあった。
特に仏像の生々しさには驚いた。

白黒で見せられてから、後で写真集のカラー写真を見た時、がっかりしてしまった。
モノクロームだから人間の想像力を最大に活かして、最高に魅せる写真にする。
という手法がとても印象的であった。

美しい色はより美しく表現する方法。
モノトーンの方がより美しく見える場合は、より光と影に敏感にモノを見るという視線が自分に植え付いたことが何より嬉しかった。

帰りは正直高かったけど、土門熱に熱せられて買ってしまった1冊
店員さんがすごーいと一言いうもんだから余計に色々と躊躇してしまったが時既に遅し。
展示作品がほぼ掲載されているが、やはり土門拳の作品観覧1回目は記念館でのエピソードを見ながら眺めた方が、この作品集が生きてくると思う。

まだモノクローム熱が冷め切らない一日でした。
ご覧下さりありがとうございました。