連載4 城野遺跡/帰ってきた弥生人 第2章 発掘調査の内容① “城野物語の幕開け”
帰ってきた弥生人-城野遺跡発見の一部始終をたどる-第2章 発掘調査の内容①“城野物語の幕開け”何はともあれ、城野遺跡は52年ぶりに発掘調査のメスが入れられました。発掘対象面積は21,600㎡におよび、城野の台地をほぼ丸ごと調査することになったのです。つまり、そこで見つかる遺跡は、集落の広がりであったり、墓地の範囲であったりが、地形的に完結した形でみつかることになるのです。城野台地に営まれた遺跡の規模や変遷がより正確につかめるわけですから、その地域の歴史や文化を一層明らかに出来るのです。こうして2009年(平成21年)6月に始まった調査は、順次調査班を拡大し、3班同時に調査が進められた時期もありました。合計100名以上が毎日遺跡の発掘に携わるという一大事業になったのです。調査区は初回のブログでも区割図で示しましたが(図1)、中央を駅に向かって通る道路部分(城野駅南口線)とその東西の国有地部分に大きく分けられ、工程にしたがって発掘順位を決めていきました。■図1 城野遺跡発掘調査区割図中央のカーブした地区が城野駅南口線の調査区、東西が国有地部分の調査区当初開発計画はこの道路部分で、地元の強い要望もあり開発者である北九州市建設局街路課は早期に調査終了と共に建設工事に取りかかる予定になっていました。しかし東西の国有地については、福岡財務支局小倉出張所の管轄で、トップの行政官庁は財務省になりますが、発掘調査当時は当面開発の予定もない地区でした。行政機関が行う文化財の発掘調査は、その土地が開発行為によって、所在する埋蔵文化財が破壊される場合に事前措置として行うのが通例ですが、なぜか国有地も当初から発掘計画に上がっていたようで、その理由は当時ただの発掘調査員であった私にはよくわかりません。おそらく、国はこの土地を売り払うのに埋蔵文化財があれば、買い手がつかない、あるいは発掘経費がのちにかかってくれば買い手が不服を申し立てる、と思ったのではないでしょうか。この国有地部分では1A区と称する地区が最初に調査対象になったのです。ちなみに私は道路部分2区の担当で、1A区と同時併行で調査を開始しました。このブログの初回に医療刑務所の旧航空写真を紹介しましたが、私の調査区には医療刑務所の本体建物(地上3階建て)西半部が存在した箇所にあたるため、その基礎で遺跡はかなり壊されていると考えられました(写真1)。一方となりの調査区では西側にやや小高い部分もあり(写真2)、当時の建物は中規模ほどでしたので、遺跡があれば残っている可能性が高いと考えていました。案の定、調査区の南にいくほど、柱穴や土坑、貯蔵穴などがみつかり、弥生土器もちらほら顔を出し始めました(写真3,4)。■写真1 空から見た城野医療刑務所中央にコの字型の大きな3階建て建物がみえる。遺跡は破壊が激しいと予測された。■写真2 1A区、2区空中写真写真右側に緑の草が生えた小高い敷地がみられる。ここで世紀の発見が…。■写真3 1A区の発掘調査風景敷地の南側ほど、柱穴や土坑などの遺構が多く残っていた。■写真4 2区でみつかった竪穴住居跡弥生時代後期の竪穴住居跡の1/4が調査区の端にひっかかった。 しかし、この時点では城野遺跡の巨大な方形周溝墓が見つかることになろうとはだれも予測だにできなかったのです。(次回に続く)【寄稿/佐藤浩司氏のプロフィール】 1955年福岡県生まれ、九州大学文学部史学科卒業。1979年北九州市教育文化事業団(現・市芸術文化振興財団)入所。埋蔵文化財調査室で開発事業に伴う城野遺跡をはじめ市内の数多くの遺跡の発掘調査に携わり、2015年4月室長に就任後、2020年3月退職。2014年から日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会の幹事として九州各地の文化財保護にも携わる。現在、北九州市立大学非常勤講師。【動画 城野遺跡発掘調査記録 朱塗り石棺の謎】(14分)発掘調査の唯一の録画です。発掘当時の感動がよみがえります。ぜひご覧ください。↓ここをクリックしてください。https://www.youtube.com/watch?v=QxvY4FBnXq0.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・城野遺跡/帰ってきた弥生人 目次-城野遺跡発見の一部始終をたどる- ※日付は掲載日第1章 城野遺跡発見の経緯と経過(3回) 城野遺跡はどのように発見され、どのように取り扱われてきたのか? ☞ ①2020/8/2 ②8/10 ③8/17 第2章 発掘調査の内容(12回) 発掘調査により、どのようなことが明らかになったのか? ☞ ①2020/8/24(今回)第3章 注目すべき事実(6回) 城野遺跡は弥生時代の北九州の歴史にとって、何が重要なのか?第4章 立ち退かされた弥生人(4回) ここで暮らした弥生人たちは、どこへ?第5章 遺跡保存への道のり(3回) 発掘担当者の悩みと苦しみ第6章 立ち上がる市民と城野遺跡(6回) 守ることと伝えること…第7章 立ちはだかる壁(4回) 行政判断の脆弱さを問う最終章 帰ってきた弥生人(3回) 新たな歴史の誕生 ※内容や回数は変更することもあります。週1回程度のペースで連載予定です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・