『ごみと暮らしの社会学』を振り返っておりますときに、ふいと思い出された映像がありまして。とある漁港で魚が水揚げされる場面ですが、大型魚を次々は陸に運ぶ一方で、残った大量の小型魚を海に投棄しているのが映されておりました。
日本でもいわゆる雑魚といいますか、本来狙っていたのでない魚、取り分け消費者にとって馴染みのないような魚(つまりは買値がつかない、売れない)は打ち捨ててられてきたのでしょうけれど、近頃はそうした中にも調理の仕方によっては実はおいしく食せるような種類もあって、未利用魚などという呼ばれ方で積極利用を図る動きがあったもするような。
と、ここで思い出した映像は日本の漁港ではありませんし、投機の量も尋常ではないのですな。ところはアフリカのガーナの港、映像の元はちょいと前に(BSスペシャルを地上波で再放送した際)見たNHK『デジタル・アイ 暗黒船を追え』という番組のものでありました。
「暗黒船」とは何とも怪しげな言葉であるなと思うところですが、「IUU漁業」という違法行為に携わる船のことを暗黒船と言っておるようで。ちなみに「IUU漁業」というのは、魚食普及推進センターHPの至ってやさしい解説によれば、こんなふうにあります。
わかりやすく言うと、密漁や、ルールを無視して自分勝手に獲っている状態の事で、国際社会・水産業界全体が無くそう、追い出そうと考えている漁業です。
Illegal : 違法・法律違反等の犯罪。他国の海での漁、密漁(泥棒)
Unreported : 無報告 何をどれだけ獲ったか報告せずに獲っている状態。
Unregulated : 無規制 ルールを決めずに自分勝手に獲る。決められた量以上に獲って報告しない等。
個人・企業で行う場合もあれば、国の方針として行っている(止めさせない・やめさせられない)場合もあります。どうにかしたいものですが・・・。
つまり、どこの国の領海だろうとお構いなし、資源保全のために一定の漁獲量制限があってもお構いなし、しかも乗組員には低賃金、重労働を強いてもお構いなしなどなど、なんでそんなことをするかいね!と思わずにはいられないことが行われているのであると。されど何故にそんなことが?と思えば、商売になるからなのですなあ。NHKの番組紹介ページには「ニッポンの食卓に欠かせない魚。魚の5匹に1匹が規制を無視したIUU漁業=違法・無報告・無規制だといわれているにまつわる」とあるくらいで、平然と流通しておるようで。
で、番組ではそんなIUU漁業に携わる船を監視・追跡する国際間の組織協調を紹介する一方で、ようやっと先のガーナのお話に到達いたします。
ガーナでは中国から支援を受けて大々的な港湾設備の改修が行われ、漁業関係者は使い勝手がよくなったと喜ぶのも束の間、地元漁業が比較的小さな船で日常の食卓に欠かせない小型魚を獲っていたところが、近代的な港湾設備を中国の大型船(船籍は便宜的置籍船として)他国に置いているようですが)が我が物顔で利用するになってしまったと。
でもって、行われるようになったのは先にも触れましたのように、海中を根こそぎして小型魚を大量投棄するというシーンが示す状況であるとは。投棄される小型魚こそガーナの人たちにとって日常食であるにもかかわらず。ま、このこと自体、中国という国が「国の方針として行っている」のではないにもせよ、「止めさせていない」のでもありましょう。その点ではやはりIUU漁業に当たることになりましょうね。
酷い話もあったものですが、中国の資金援助で行われることの全て、一事が万事ではないのでしょうけれど、ちょいと前に目にすることとなったマレーシア、マラッカの壮大なる夢の址?のことを思い出したりもしてしまいましたですよ。いやはやなんとも…。
ところで、日本の食卓にのる魚の5匹に1匹はIUU漁業由来となりますと、おちおち魚料理も食せなくなるような。安売りがあれば、なにもかも値上がりばかりのご時勢にあって、ありがたい!と飛びついてしまいがちですけれど、安い魚にはからくりがあると考えると、喜んでばかりもいられない。ですが、単なる消費者のひとりとしては、何事につけ、こうした違法行為にもよるからくりに絡めとられていくしかないのでしょうかねえ…。
「(IUU漁業を)減らすために世界中の関係者が頑張っています。消費者の皆さんは、応援したいモノ、応援したい場所のモノを購入する事が後押しになります。値段ではなく、ルールに沿って手間をかけている人たちが漁獲した魚を選んで購入してくださいネ。
先ほど触れた魚食普及推進センターHPでは消費者に対してこんな呼びかけをしていますけれど、適正な手段で漁獲された魚であるかどうかを、分かりやすく示してくれるものがあると有難いですなあ。ひとつとして「水産エコラベル」、「海のエコラベル」てなものがありまして、もっぱら環境配慮が主眼ながら、水産物を選択する際の材料にはなりそう…ですが、あまり普及してなさそうなのが難点かと…。