東北地方の歴史を広く扱う東北歴史博物館の常設展示では、歴史を辿って行きつく先にかような、昭和世代には懐かしい光景が再現されたりもしていたわけですが、こうしたところまで取り上げては終わりが見えないことになりますので、少々端折って(昭和レトロがもてはやされる昨今、こうした再現はここにとどまらないでしょうしね)。
ということで博物館を後に、いよいよ遺跡・史跡に向かっていくことに。そのためにはまず、JR東北本線を越えねばなりませんが、博物館北側の目の前にある国府多賀城駅(JR仙石線の多賀城駅とは別物です)の自由通路を通り抜けた次第。ちなみに、こんな感じの駅舎になります。
妙に新しく見える駅舎は「これまた震災で?」と思うも、ここに至るまで山越えというか丘越えというか、登り坂に出くわしてきたわけですから、津波の被害が及んだとは思われず。早い話が、駅そのものが2001年開業と新しかったということでありますよ。JR都合とは別に駅を造ってほしいという要望を受けて造られた請願駅であると。
さりながら、仙石線多賀城駅は駅前すぐに住宅が立ち並んで、いかにも町の玄関口であったのに対して、こちらの駅の周囲はなんともひろびろとしたもの。住宅が無いわけではありませんが、駅のすぐ裏手に見える建物が東北歴史博物館ですので、博物館のための駅であるような印象が。もっとも、博物館を駅前に立地させることはできますが、昔々の遺跡を駅前に造ることはできませんので、鉄道の線路が通っているところとしては、特別史跡多賀城跡に至近ということなのでありましょう。
ただ、確かに多賀城跡には少々の歩きが必要なものの、駅の北西側すぐのところにちょいとした高まりがあるではありませんか。駅の南北自由通路からよく見えていたものですから、行き掛けの駄賃に寄っておこうと。果たして「館前遺跡」という特別史跡構成要素のひとつなのでありました。
現場の解説板からざっくりつかまえたところでは、多賀城政庁跡と多賀城廃寺跡の中間くらいに位置して、おそらく多賀城に赴任した国司の館跡であろうと考えられているようで。決め手は中央に位置する大型建造物が多賀城政庁正殿同様に格の高い「四面廂付建物」であったことのようです。時代は9世紀前半と。
今はただただ、解説板の置かれた広場然とした場所でしかありませんですが、ここでまた「これからが多賀城の本丸だ!と(お城の遺構ではないながら)勢い付いて、さらに先を目指すのでありました。