瀬戸蔵ミュージアムの「生産道具展示室」を巡って、やきものの生産過程をそれぞれに使う道具の展示とともに振り返るというお話の続きでございます。「土をつくる」「形をつくる」と来て、その後は絵付け、施釉と進んでいくわけですが、その前に「乾燥・素焼」が必要でしたなあ。

 

成形を終えた製品は乾燥させます。乾燥が十分でないと、焼いた時に素地に残った水分が膨張して割れてしまいます。乾燥した製品は、破損を防ぎ、装飾・施釉の作業を行いやすくするため、一度素焼する場合もあります。
乾燥は急激に行うとひび割れたり曲がったりするので、室内でゆっくり乾燥させたのち、天日に干す自然乾燥が一般的です。

という説明に続けて、大量生産には自然乾燥にばかり頼っておられないようすが紹介されておりました。窯の廃熱を利用したり、熱源にガスを使ったり、はたまた「電子レンジと同じ仕組みのマイクロ波を使った乾燥機も登場するとか。

 

 

乾燥・素焼のひと手間を経て、器に装飾を施すことになります。装飾方法としては、先に瀬戸染付工芸館で見た「染付」などの「絵付け」が代表的ですけれど、それ以外にも「模様を彫る・貼るなど器面そのものを加工する方法、器の形や釉薬に変化をつける方法」もあり、いろいろと工夫される中では各種の合わせ技も編み出されてきたということでありますよ。

 

 

こちらはゴム判でぺたぺたと模様を付けた器ですけれど、スタンプラリーの台紙のように押しやすい平面ではありませんので、ずれないように判押しするのは結構難しいような(ゴム判は柔らかな素材を使って、曲面に対応できるそうですが)。まあ、ひとつひとつ筆で描くよりは大量生産向きなのでしょうけれど。

 

 

大量生産向きという点では、このスクリーン転写紙を使って模様を貼り付ける方法はさらに。最初はぴんと来なかったですが、要するにスクリーン転写紙というのは、プラモデルの完成段階で模様の印刷された紙を水に浸して貼り付ける、あれの類いであるようですな。子どもの頃は、「ああ、まるまっちゃったぁ、やぶれちゃった…」と結構悪戦苦闘させられた記憶がよみがえるわけですが(笑)、こうした印刷による手法も機械化されていったようですね。

 

 

さてと、施釉の段階に至りました。「釉薬は、やきもの自体を上武西、水漏れを防ぎ、表面に光沢を出して滑らかにするなどの効果をもたら」すものとして、必須の作業ですけれど、一方では上でも触れましたように「釉薬に変化をつける」ことそのものが装飾になるのでもありますね。志野焼などはとってもわかりやすいところでありましょう。

 

 

瀬戸で伝統的に使われてきている釉薬にはいろいろと種類がありまして、仕上がりもそれぞれに独特な風合いを醸すことになりますけれど、仕上がりの発色を左右する条件というのがいろいろとあるのだそうな。その代表的なところが焼成方法であると。

例えば織部に使われる銅緑釉では焼成室内に多くの酸素が存在したまま焼成される酸化焼成で緑色、酸素の供給量を減らして燃料を不完全燃焼させ、還元作用をもつ一酸化炭素を発生させながら焼成する還元焼成では緑色だけではなく深い赤色になります。また、素地土の成分や焼成時の冷却方法によっても釉薬の発色に変化が見られる場合があります。

こうした説明に接するたび、やきものは錬金術師のなせるわざであるか…と思ったりするのですよねえ。釉薬の組み合わせ、そして焼成方法との兼ね合いで実にさまざまな発色を生み出すのですから。

 

 

 

とまあ、釉薬の発色は焼成方法と大いに関わるわけですが、やきものづくりの最終段階として、次回はその焼成のお話を振り返ることにいたしましょう。