瀬戸蔵ミュージアムの「生産道具展示室」を巡って、やきものの生産過程をそれぞれに使う道具の展示とともに振り返っておりますけれど、「土をつくる」工程に続きまして、次は「形をつくる」という段階に。
やきものの形をつくると言いますと即座にロクロが思い浮かびますけれど、成形方法はそればかりではないようで。ここでは代表的なものとして、「ロクロ成形」、「鋳込成形」、「タタラ成形」、「プレス成形」の4種類が紹介されておりましたよ。まずは最も知られた(と思う)ロクロ成形からです。
電動で回るロクロの上に置いた練り上げた土に濡れた手を添えて、にゅうぅ~と器を形づくっていく…と言う場面がピタリと来るイメージのロクロ成形ですけれど、まあ、大量生産用には機械を使うこともあるのでしょう。
手作業の方で使われる「蹴ロクロ」は「主に九州・北陸地方で用いられる」ということですが、確か大分県日田市の小鹿田焼(おんたやき)でも蹴ロクロが使われていたのではなかったかと。
展示品としては各種ロクロ(上は人の手を介するもので下は電動の自動ロクロですが、こうなるともはやマシーンですな)のほか、壁面にはたくさんのコテやヘラのたぐいがたくさん並んでおりましたよ(上の写真です)。ここで「コテ」とか「ヘラ」とか言ってますが、それぞれに役割の違いがあるようで。「コテ」の方はまずざっくりと形を整えるためのもので、「ヘラ」の方はコテを当てた後に肌をなめらかにするためのものであるとか。前者は主にヒノキから、後者は主にナツメやツゲから、それぞれ職人が手作りするそうで、この使う木材の違いも工程ごとに考えられた結果なのでありましょう。
お次は「鋳込成形」というもの。ざっくり言ってしまえば、石膏の型に原料を流し込んで作るタイプでありましょう。石膏の吸水性を利用するこの技術が入ってきたのは明治後半だそうで、「粘りの強い瀬戸の土が適したこともあって大発展し」たのであるとか。大量生産向きの手法であったようですね。「排泥鋳込」は空洞の製品に、「圧力鋳込」は中身のつまった製品に使われたそうです。
上の方にある鷲の置物などはいくつもの型を組み合わせて作り上げたものですけれど、もはや彫塑の世界のようでもありますなあ。で、続いては「タタラ成形」というもので。
「タタラ」と聞きますと、昔々の製鉄方法かと思ってしまうところながら、「押しのばして板状に切った粘土」のことを言うのだそうな。「ロクロではつくれないような角型や不定形の製品をつくるのに適してい」る成形方法であると。
形が独特な不定形という点で代表的な製品としては陶製便器(常滑でも見かけましたなあ)や瓦などが挙げられるようですね。さてと、最後には「プレス成形」の紹介でありまして。
「プレス成形」が要するに押し固めるのねと思ってしまうと、上で触れた圧力鋳込と区別がつきにくくなってしまうところながら、こちらで使うのは「乾燥させて粉末状にした土」であるというのが大きく異なる点ですなあ。
極限まで水分を少なくした土を使うことで、焼いたあとの縮みが小さくなるので、その特性を活かして、正確な寸法が要求されるタイルなどの建築資材や碍子・電磁器などの工業製品に多く用いられています。
こちらの展示解説からすれば、いわゆる「ファインセラミックス」なるものもこのプレス成形の発展形で製造されいるのかも。ま、瀬戸ではそこまでのものを手がけているのかは詳らかではありませんですが…。
ということで、陶芸という以上に陶磁器産業の製造過程として「形をつくる」工程を見てきましたですが、最後の最後、焼成の段階に至るまでにはまだまだ絵付けや施釉などがあるわけでして。そのあたりは次回に振り返ることにいたしましょう。