ひとしきり長崎市遠藤周作文学館でもの思い(単に昔を思い出していただけかも…)にふけった後、隣接する道の駅で昼食を。定食類をオーダーしますとご当地名物の「ドロさまそうめん」が食べ放題となるのですが、このそうめんにつきましてはまた後に触れることといたしましょう。

 

で、道の駅から次に向かう出津(「しつ」と読むそうな)の集落までは程ない距離とも思え、海を見ながらゆるゆる歩いて行ってもいいかなと、当初は考えてもいたのですけれど、実際の地形を見て「やっぱり、バスだな…」と。道の駅から見下ろして、ちょうど入江を挟んだ向こう側、山肌の斜面にへばりついてあるのが出津の集落ということで。

 

 

乗っている時間は短いものの、海に落ち込む入り組んだ崖に沿ってバスが走ることしばし、「出津文化村」というバス停で下車しますとこんな看板が待ち受けておりましたよ。UNESCO世界遺産に登録されている「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成要素のひとつ、「外海の出津集落」にあたっておりまして。

 

 

左手の登り坂の先に「沈黙」の文学碑があるということですので、まずはえっちらおっちらと。

 

 

「人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです」

果てしない海の広がりを眼下におさめるこの場所に立ちますと、フェレイラやロドリゴといった『沈黙』の登場人物ばかりで無しに、先に読んだ『パシヨン』の小西マンショらもまたこの波濤を越えてやってきたのであるか…と、しみじみ思うところでありました。石碑の背景には(かすんでしまってよく分からないものと思いますが)実はしっかりと遠藤周作文学館の建物が見えているのですよね。そういう立地になってます。

 

ところで、ここが世界遺産のひとつである謂われとして、必ずしも潜伏キリシタンと関わるものでなさそうな要素もあるのですね。曰く「長崎市外海の石積集落景観」と。全体的に斜面にへばりつくようにある集落では、そこここで石積の擁壁を見ることができるのですね。

 

 

この後、家々の間を縫って歩いた中でもまた石積のようすは度々出てくることになりますけれど、ちとここで余談をひとつ。上の写真の石積の下あたり、遥かに幾株かの「よもや、この時期(10月初旬)にあじさい?」とも思しき花が咲いていたのですなあ。

 

 

小さくてかわいらしい花が寄り添って咲いているようすを眺め入っておりましたですが、そこを何やら虫がひょいひょいと飛び回っている。「すわ、蜂であるか?!」と及び腰になるも、翅が透明なためによく蜂と間違えられるオオスカシバと判明、ホッとした次第でありますよ。でもって、思いがけずもこんな瞬撮に成功したのですなあ。

 

 

花の蜜を求めて縦横無尽に動き回るオオスカシバを追って、カメラを構えたまま動き回った結果として得られた(自己)満足すべき一枚でありますよ。「おお、密を吸ってる吸ってる」。

 

と、文字通りに全くの余談になりましたですが、しばし出津の集落を歩き廻って世界遺産の要素たる文化財やら資料館やらを訪ねたというお話にこれからつながるということになりますですよ。