…ということで、群馬県に行ってまいりました。出かけるにあたって「古墳を見にいく」とは申しましたですが、それを主としつつも他に立ち寄ったところもありますので、そのあたりをこれからしばらく綴ってまいる所存でありまして。

 

ともあれ、群馬は東国の古墳大国なのですな。これまでにも高崎の周辺でレンタサイクルを駆使して、観音塚古墳やら観音山古墳やらを訪ねたことがありますですが、古墳はなかなかに交通至便の場所とはいえず…。今回目指した保渡田古墳群は高崎駅からおよそ8Km弱ですので、これまた自転車で行けないものではないですが、高崎市のコミュニティバス「ぐるりん」に乗っていくと、目的地まで徒歩約10分というバス停まで近づけるとあって、これを利用することにしたのですなあ。

 

まあ、コミュニティバスというだけで「本数は少なかろう」と想像がつくところで、万が一乗り過ごしでもしようものなら全て目論見はおじゃんとなるわけですね。それだけに、些か早めに高崎駅西口のバス停で待ち受けたところながら、なにやら妙にバス待ちの人たちがいるのですよね。いざバス(予想に違わず小さいバスです)に乗り込んでみれば、次々と乗り込む人がいて満席どころか満員の状態に。以前、このコミュニティバスの違う方面行きを何度か利用したことがありますが、だいたいはがらっがらだったのですが…。ともあれ、混雑の理由はこれでありましたよ。

 

 

林立する幟旗には相撲取りの名前が大書されておりまして、なんでも春巡業として「大相撲高崎場所」なるものが開催される当日に当たっていたという。道理でバスの中ではもっぱら相撲の話が交わされていたわけだと。会場である浜川体育館に直接乗りつける公共交通機関はこのコミュニティバスのみとあって、混雑も頷けるのでありましたよ。乗客の中には「朝、車で来たけれど駐車場が満杯で、いったん戻ってこのバスで」なんつう人までいたようですなあ。

 

それだけに、周辺の道路事情としてはあちこちから会場めがけて車が参集して渋滞を巻き起こしており、往路の遅れは多少だったものの、帰路に同じバスを使ったときにはちょうど相撲興行がはねたところらしく、往路を上回るぎゅうぎゅう詰めの車内、コロナはすっかり過ぎたのであるか…と思ったものです。さらも帰りの車で渋滞はなお酷く、通常は古墳近くと高崎駅前を30分ほどで結んでいるが、たっぷり1時間掛かりましたなあ。まあ、それくらいで済んで助かったというべきか…。

 

そんなこんなで思いのほか「遠いなあ」と感じたバス路線ですけれど、古墳最寄りとされるバス停で下車し、車通りのある道を外れて田畑の広がる道に入り込みますと、一気に眺めが広がったのですな。上毛三山と言われる赤城山、榛名山、妙義山が一望で、さらに浅間山も顔を覗かせていたりして。

 

 

ちなみにこれは榛名山系ですけれど、上毛三山と言われるように群馬県では「上毛」という言葉が今も生きておりますな。これは言うまでもなく、古代にこのあたりが「上毛野国」とされてきたことによるのでしょう。元々は「毛野」と呼ばれる地域、そしてそれを名乗る豪族がいたわけですが、これを二つに分けて「上毛野(かみつけの)」(今の群馬県)と「下毛野(しもつけの)」(今の栃木県南部、県北は「那須」という別勢力だったようで)になったところが、律令によって「国名をふた文字にすべし」とお達しがあったことから、それぞれに「毛」の文字をとって「上野(こうずけ)」(何故か「づ」でなくして「ず」であるようす)と「下野(しもつけ)」になったそうな。

 

どうして「毛」を厭うてしまったのかは定かではありませんですが、読みには「け」が残り、今でも「上毛」「下毛」「両毛」といった使われようはありますし、Wikipediaには「鬼怒川」の元々は「毛野川」などと紹介されていて、やはり「毛」の名残りがあることが窺えるのですなあ。と、そんな思い巡らしとともに畑の中の一本道を進んでいきますと、古墳らしき盛り上がりが見えてきました。

 

 

後にうっすらお椀を伏せたような形で見えているのは浅間山ですけれど、古墳はやはり見晴らしの良い場所に造られるのですなあ。周囲の遠望が利くということは、逆に遠くからも古墳の威容が見えるわけで、大阪の百舌鳥古墳群が(かつてはもっと近かった)海の上からよく見えて、その威容を外国使節などに見せつける意味合いがあったようですけれど、発想としては同じなのでしょうね。

 

とまあ、いろんな意味合いで遠かった道のりを経て保渡田古墳群にたどり着いたわけですけれど、古墳そのものに近づく前に「かみつけの里博物館」を覗いて、少々の予備知識を。さらにその前には、ちょうどお昼どきなので腹ごしらえを。高崎駅で仕入れてきていた駅弁を、博物館に隣接する上毛野はにわの里公園の休憩所で食すことにいたしました。

 

 

「榛名ポーク100%使用」を謳った「群馬特産チャーシュー弁当」をわしわしといただいておなかを満たしたところで、博物館と古墳群とを見て周ります…が、そのお話は次の機会ということに(笑)。