埼玉県の大宮にある鉄道博物館に行ってきたのでありますよ。2007年の開館ということですので、15年余りを経てようやくといったところ。そも同じ年に閉館した交通博物館(秋葉原駅からほど近い、旧万世橋駅舎にあった)の後継施設であろうかと想像して、交通博物館の方には何度も出かけたことがあっただけに、もそっと早く出かけていても不思議ではなかったわけですが、何かしら思うところがあったのでしょうなあ(と、我がことながら)。

 

今回もたまたまさる筋から無料入場券を入手して、その有効期限が2023年3月末であったので、ぎりぎりもぎりぎりで使うというのが背中を押すことになった次第。そうでもなければ、おそらくまだまだ行かずにいたことでしょう。ともあれ、出かけてみたわけですが、感想としては「やっぱり…」なのでありましたよ。

 

「やっぱり…」と申しますのは、要するに鉄道博物館は交通博物館の後継施設では無かった…ということ。鉄道を始め、自動車や船、飛行機までも交通に関わる展示を、狭い中にぎゅぎゅっと展開していた交通博物館が、広くなって新しくきれいになって…勝手に期待してしまっていたのが、「やっぱり」そうでは無かったと思い知らされたわけで。鉄道博物館はひとえに鉄道専門の博物館だったのですよねえ。世に鉄道好きは山のようにいて、個人的にも些かの鉄分は入っていようかと感じてはいるものの、こと博物館に対する期待は違うところにあったというわけですなあ。

 

と、ひとしきり個人的な思惑違いを開陳してしまいましたですが、折しも3月末のこの時期、学校が春休みなこともありましょう、平日にも関わらずなかなかに賑わっている鉄道博物館なのでありました。まあ、冒頭にぐだぐだ申したことは取り敢えずも、館内をひと廻りして全く面白くないということでは必ずしもありませんですね。

 

もともとJRの車両センターであるところを利用して展示空間を設けただけに、いかにも既存の線路を利用して展示車両を引き入れたのだろうなあと思われ、居並ぶ車両うぃ大きな天蓋が覆っているようすを見れば、ヨーロッパの都市のあちらこちらで見られるターミナル型駅舎(例えばライプツィヒ中央駅とかフランクフルト中央駅とか)を思い出させて、些かのわくわく感を醸そうかというものです。

 

 

ターミナル型駅舎の特徴には、線路の末端部分でしかお隣のプラットフォームとの行き来が出来ない点がありますけれど、そのため、ホームの途中に跨線橋を設けてあったりするわけで、なおかつその跨線橋に時計が付いているあたり、なおのこと駅らしさを思わせるところでもあろうかと。もっとも、こんなふうにごちゃごちゃと車両が置かれるに及んでは駅としての機能は麻痺するでしょうけれど(笑)。

 

 

まあ、そもそもが駅構内を模しているわけではありませんのでそれはそれとしてですが、ちなみにこちらは日本に鉄道が開業した黎明に活躍した1号機関車ですな。奥には駅名としてひらがなで「しんばし」と書かれてありました。

 

 

直近で読み終えた本が『東京新大橋雨中図』であっただけに、絵師として立つ前の小林清親はこんな蒸気機関車を横目で見ながら、荷捌きの労賃で生計を立てていたのであろうか…と思ったりもしたものでありますよ。

 

とまれ、数々の鉄道関連展示を眺めやりつつ、そういえばかつて交通博物館にあった鉄道「以外」の展示物はいったいどうしてしまったものであるかということがどうにも気になってしまったのでありました。一端は大阪にあった交通科学博物館に引き継がれたようながら、ここも閉館して代替施設としてできたのが京都鉄道博物館とすると、こちらもやはり鉄道メインでその他の関係はいったいどこへ…。航空関連の一部は静岡富士山空港の近く、静岡理工科大学静岡航空資料館に移されたてな話もありますので、機会があれば出向いてみようかと思った次第でありました。