さて、静岡・焼津にあって昼飯前のもうひと覗き。訪ねたのは「うみしる」の目の前を通る「オーシャンロード」という洒落た名前の海岸通りを隔てて向かい、海よりにあるこちらの施設「深層水ミュージアム」なのでありました(ちなみに「うみしる」同様、入場無料です)。

 

 

ところで、そも深層水とは?ということになりますけれど、すでに「うみしる」にも「深層水のひみつ」といった展示パネルがあったのですなあ。すぐ後に、深層水ミュージアムに立ち寄るつもりでおりましたので、これには触れませんでしたが。

 

 

ともあれ、深層水とは?ですけれど、「水深200mよりも深いところの海水」のことで正式には「海洋深層水」というのだとか(ちなみに浅いところは「表層水」というそうな)。でもって、日本でいちばん深い湾である駿河湾(深さ2,500m)から深層水を汲みだす取水地が焼津市であるということなのですなあ(これまた、ちなみに2番目は相模湾で深さ1,500m、3番目は富山湾で900mと)。

 

実は「うみしる」のあ水技研の隣接地も、こちらの深層水ミュージアムの隣接地も、いずれも深層水取水関連施設が広がっているという。例えば、こんな具合です。

 

 

 

では、なんだって深層水を取水しているのか?といったことを含め、ミュージアムの解説を振り返っておくことにいたしましょう。展示室はこんな感じでありまして、さほどに広くはありません。さすがに無料施設なだけありますなあ(笑)。

 

海洋深層水は、太陽光が届かないところに存在しており、植物プランクトンによる光合成がほとんど行われておらず、浅いところの海水と混ざり合わないことから、表層水とは違う「低温安定性」「清浄性」「「高栄養性」を持っています。それらの特徴を用いて、水産業を始め、食品の製造加工分野、医療分野、美容・健康など様々な場面で海洋深層水が利用されています。

駿河湾深層水利用者協議会のリーフレット「駿河湾深層水」にはこのような説明がありますけれど、ずいぶんと広範囲に利用可能なようですなあ。パネル解説で紹介されておりましたですよ。

 

 

簡単に言えば「ミネラルが豊富」というあたりに利点のある深層水、さりながら「表層水と混ざり合わない」とはどういうこと?…と思えば、海の中には「海洋大循環」という流れがあるのだそうですなあ。

 

 

表層部では黒潮や親潮、つまり大きな海流があることは知られておりますけれど、これは単に海の上っ面だけのことではなくして、しかも海の深くでは表層と異なる流れが動いているということなのでありますよ。上の図で言いますと、暖流として知られるメキシコ湾流がグリーンランド沖で海中深く沈み込み、それが海の底を這うよう流れて、遥か北太平洋で浮上するという壮大なものであると。グリーンランドの沈み込みから北太平洋での浮上まで、2000年以上かかるとも言われますので、なんともゆっくり。それが反って壮大さを感じさせもするわけですが。

 

こうした海底の流れがあることで深層水は一定の水質が保たれておりますが、ミネラルが豊富ながらも光合成ができないので植物プランクトンがほとんどいないというあたりが水産利用にもつながるのだそうですね。なんとなれば、栄養豊富な深層水を太陽光の届く表層にもってきますと、植物プランクトンはどんどん育成し、そうなるとそれを動物プランクトンが捕まえ、さらに動物プランクトンを餌とする魚介類が豊富になる…てな具合で。

 

単純に脱塩したものを普段の生活に利用することもできるわけで、ミュージアム入口にあった深層水の水サーバー(もちろん脱塩後ですが)でひと口飲んでみますと、なるほどまろやかな味わいでもあるような。山の恵みたる湧水とはまた異なる自然の恵みのように思えたものでありますよ。ミュージアムお隣の施設では、ポリタンク持参で深層水を買いに来ている人が結構いましたしね(取水はもとより脱塩にも元手がかかってますから、無料とはいかないようで…)。

 

 

とまれ、海洋深層水の利用は日本各地で行われているようで、その嚆矢は高知県室戸市であるとか。以前、室戸岬に立ち寄ったときにはちいとも気付きませんでしたけれど、「シレストむろと」なる深層水利用のスパ施設まであるようで。こちら焼津にも、深層水取水施設に隣接して「アクアスやいづ」というタラソテラピー施設(これがまあ、実に立派な箱モノで)が設けられておりましたですよ。利用はしませんでしたけれどね(笑)。

 


 

というところでだいぶ押し詰まってきておりますが、7月に引っ越しの手伝いに行ったその当人がまた引っ越し?!ということで、都心泊まり込みで再び手伝いに。なんだか葛飾北斎の引っ越しに突き合わされてばかりいた弟子の蹄斎北馬にでもなった気分でありますよ。とまれ、そんな事情で明日(12/25)はお休みを頂戴しまして明後日(12/26)にまたお目にかかりたく存じますです、はい。