NHKの「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」という番組の存在に気付いたのは
つい最近のこと。今さらながらではありますけれど、自宅では(未だに)BSアンテナが無いもので。
ともあれ、これが地上波で再放送されているのでありましょう、そして先日(録画していたものを)見た
「汚れた金メダル 国家ドーピング計画」という一編は、本来おそらくは先の東京オリンピックよりも前に
放送されたものだったのでしょうなあ。再放送の再放送というところかもです。
この間、台風の話にことよせて
「科学者とアスリートが持つような貪欲さはヒトの本能なのかも」てなことを言いましたですが、
今回の放送を見て、科学者とアスリート…まさにねえと思ってしまったものでありますよ。
ドーピングに関しては、スポーツ競技に参加する者の「勝ちたい指向」が強まった挙句、
勝つためには手段を選ばずとなって、薬を使い、禁止されれば、それを隠蔽する工作をしと、
いたちごっこの感がありますけれど、しばらく前に見た映画「疑惑のチャンピオン」などでも
知れるところでありますね。
ただ、この「勝ちたい指向」の強まりは選手個人、あるいはその選手の属するチーム内で、
「だめだとは知ってはいても、それでも…」と、それぞれが自覚的に薬を使っているわけですね。
さりながら今回の放送で取り上げられていたのは、旧東ドイツによる国家ぐるみのドーピング、
そこには医学者、科学者が関与していますけれど、実のところ、選手たちは何も知らなかった。
結果として、死に至ったり、後遺症に苦しむなどの被害を背負わされたのは選手たちであるにも関わらず。
なんともはやのお話です(ただ、疑惑レベルで言えば、旧東ドイツだけの話ではなさそうでもありますが)。
薬物の主なものはいわゆる筋肉増強剤で、要するに男性ホルモンであるようなのですが、
砲丸投げの女子選手などはこれを多量に撮り続けた結果として、体の機能がかなりの部分で
男性化してしまったのでしょう、その後の人生では性転換して男性として生きていかざるを得なくなったとか。
こうしたことを本人に知らせずやるとは…。
東ドイツという国は、とにかく西ドイツに負けたくない、それどころか共産主義国家の模範として
資本主義諸国に負けたくない、とにもかくにも国ありきでものごとを進めてきたわけですけれど、
そんな中でも「オスタルギー」という言葉があるように、後々一般庶民には旧東ドイツ時代を懐かしむ声が
あったりもするものの、ベルリンの壁崩壊に至る過程では多くの東ドイツ国民が西側に逃れたことは
確かなことではあるようで。
言うまでも無く…と毎度の繰り返しではありますが、「国」という器はそこに住まう人がいてこそのもので、
その「国民」を国境外とは区別(決して差別であってはならないのですが)して、
自国内ならでは措置を講じ、スケールメリットといいましょうか(ま、税金を集めてといいましょうかね)、
小さな単位の集落ではできないようなことを提供する、つまりは国民に利することをするものであろうかと
思うところなわけです。
ところが、どこをどう間違ってしまうのか、「国ありき」の方向に流れてしまうのはいったいどうしたことでしょう。
いささか話が広がりすぎてしまいましたですが、旧東ドイツの国家ぐるみドーピング計画もまた、
そんなところから起こったものではありましょう。
それにしても、1968年のオリンピック、メキシコ大会では東ドイツの金メダルは九つ、
それが4年後のミュンヘン大会では20個に、さらに4年後のモントリオール大会では40個に。
誰がどう考えても「何かある」と思うわけで、いくら隠そうという努力をしたとはいえ、そもそもやりすぎでしょう。
結果が出ることに酔ってしまったのでしょうなあ…。