先日はミュシャ展@うらわ美術館のことに触れましたけれど、実にさまざまなものを意匠を手掛けたミュシャ、
その中には劇場のポスターがある…とは、有名な「ジスモンダ」ほかがありますので言うまでもなくですが、
展示の中にあったモンテカルロの劇場用ポスター、こちらは真ん中に余白を大きく残した枠だけの作品でしたなあ。
つまり余白部分にはその時その時の演目を文字情報で刷り込むことができるようになっているわけです。
実際展示にあったのは文字情報入りのもので、
はっきり言ってしまえば演目自体にミュシャとのつながりはないわけながら、
いったい演目は何ぞとそちらにも興味が出て、ついしげしげと。
どうやら、ロシアの作曲家ニコライ・チェレプニンによる自作自演の演奏会の告知であるということで、
チェレプニンという名で思い出すのは、伊福部昭が「日本狂詩曲」で第1位を獲得した「チェレプニン賞」でしょうか。
ですが、この賞はニコライの息子でやはり作曲家のアレクサンドルが設けたものだったようで。
父親のニコライは1909年、ディアギレフのバレエ・リュスにパリでの旗揚げ公演から関わったそうですけれど、
指揮者として多くの公演に関わっただけでなく、自作のバレエ音楽も披露しているようですね。
そこでその音楽を聴いてみようかとなるわけながら、あいにくと手元にCDはありませんのでYoutube頼み。
1909年5月のバレエ・リュス公演でも取り上げられたバレエ音楽「アルミードの館」をば、まず最初に。
パリ公演に先立って、ロシア・マリインスキー劇場で初演されていたそうですので、
当時のチェレプニンは今考えるよりももっともっと有名な音楽家だったのでありましょう。
ただ作風として「アルミードの館」を聴く限り、同時代的にいささか洗練されたロマンティック・バレエのような。
リムスキー=コルサコフに師事したということですが、ロシア5人組のような民族的な要素は薄く、
同世代のラフマニノフほどにロマンが香り立つでもなく、一方では教え子プロコフィエフほどの革新性は無い…。
かような言い方をしますとダメ出しのように見えるかもですが、曲としては非常に聴きやすい。
踊り手にとってはとても曲に乗りやすく、自由に思いきり踊れたのではないでしょうかね。
おそらくは極端にロシアらしさを強調するでなく、チャイコフスキーからプロコフィエフへとつなぐような役割を
担ったのかもしれませんですね。チェレプニンも含めて、バレエ音楽を仲立ちとして。
ちなみに先に触れましたミュシャの外枠によるモンテカルロの劇場ポスター、
ニコライ・チェレプニンの音楽会には息子アレクサンドルも演奏家(ピアニストですかね)として参加してましたので、
後にやはり作曲家として知られるようになるアレクサンドル・チェレプニンの曲も聴いてみることに。
You Tubeで見つけられたいくつか、交響曲やピアノ協奏曲の一部などが聴けたのですが、
どうもそれだけでは真価のほどを知りがたいところでもあろうかと。
漠然と「遅れてきたシンフォニストでもあるか…」と思ったりもしましたけれど、Wikipediaに曰く
「生誕100年(1999年)を過ぎた現在、…日本でも演奏の機会が増えつつある」てな記述がありますし、
そのうちに実際の演奏に接することができるかもしれません。
もっとも、演奏会で聴けるのであれば父ニコライの作品の方が浸れるような気はしておりますが…。