サンクトペテルブルクにあってペテルゴフ宮殿
、エカテリーナ宮殿
と郊外を巡ってきた後、
夕刻に市街中心部にやってきましたのは、ツアーの旅程にバレエ鑑賞が含まれていたから。
まあ、ツアーのおまけですから演目が選べるでなく、
ましてバレエ鑑賞がオペラ鑑賞になることもなることもありますてな具合ですので。
当初の予定では翌日に組み込まれていたバレエ鑑賞が、当日朝にツアーバスに乗り込んでから
「実は今日になりました」なんつうこともまた、ツアーの常なのでありましょうね…。
とまれ、やってきたのはマリインスキー劇場…の新館。
川を挟んだ隣接地に2013年にできたばかりですので、まだまだぴっかぴかでしたですよ。
入口には「マリインスキー2」とあります。
これは休憩時間に撮りましたのでかなり暮れてきてますが、8時半くらいでしょうか。
ロシアではさらに日が長くなっていくのでしょう。
と、会場内に戻りまして、これは開演前のようす。
マリインスキー劇場というからには19世紀半ばに建てられた本来の劇場をこそ
訪ねたいところではありますが、新しいホールもまたこれはこれでいいですねえ。
ところで肝心な演目は?ということですが、
シチェドリン作曲の「せむしの子馬」という作品は全く存在さえ知らなかったですなあ。
ただ話としてはロシア民話であったか、子供の頃に絵本で読んだという記憶がありまして、
(といってストーリーはおよそ覚えておりませなんだが)
バレエとしても子供向け(でもある)作品なのだなと想像が。
そう思って周囲を見れば子供連れの来場者が実に多いなという印象です。
また、能のパリ公演来場者のように自発的、能動的に何らかの関心なり好奇心なりをもって
バレエを見てやろうという心積もりの人たちばかりでないツアーご一行様には
ちょうどいい作品なのかもしれませんですね。
予め添乗員から「あらすじ」が配られたので、
その筋が踊りによってどう進行していくのかというあたりを追っかけると分かりやすいですから。
それに…というとなんですけれど、民話的なるものには普遍性が隠れていて、
どこの土地でも似たような話が出来上がったりもするようなところもあるような。
例えば後半部分で、求婚された姫が相手に無茶な課題克服を要求するあたりは
まさしく「かぐや姫」ですものね。
曲の方はシチェドリン作曲ということでしたので、いささか晦渋なとも覚悟はしたですが、
そこはそれ、オペラで言えばフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」にも当たろうかという
作品ですから、それなりに楽しく、それでいてダンサーたちの動きはもちろん本物、本格的で
「ふむふむ」と思って見ておりましたですよ。
カーテンコールで、一人立つのがせむしの子馬役。
そして、向かってその右後ろ側に黒衣装の胸に大きな×印を付けたのが悪い廷臣でして、
こうした見た目の分かりやすさも子供向けたる工夫だったのでしょう。
この橋を渡って向こう側、右手前にちょいとだけ見えているのが本来のマリインスキー劇場。
いつかはともかく、次にはちゃんとこちらでバレエやオペラをと思いつつ
サンクトペテルブルクの夜は更けゆくのでありました。