当たり前の日常が当たり前というわけにはいかない日常になってしばらく経ちまして、

以前はともすると日々の中でルーティーン化しつつあったオーケストラ演奏会に出かけることも

開催取り止めが続きますと、実は「ありがたいことであったのだなあ」と思ったりするわけでして。

 

他の演奏会などと同様に読響の公演も、3月、4月に続いて5月もまた取り止めとなりまして、

例によって当日の演奏プログラムによる自宅での再現イベントでもやろうかと思うわけですが、

今回はちとプログラムに取り上げられた曲で思い出すことなどをつれづれに。

 

 

2020年5月23日(土)、本来この日に行われるはずだった読響の第227回土曜マチネーシリーズ演奏会は

モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲、グザヴィエ・ドゥ・メストレをソロに迎えたボワエルデューのハープ協奏曲、

後半にやはりモーツァルトの交響曲第31番「パリ」、そしてラヴェルの「ボレロ」という曲目だったはずでありました。

 

場合によったら、2曲目もモーツァルトで「フルートとハープのための協奏曲」にすれば、

見た目のまとまり感があるような気はしましたけれど、このボワエルデューのコンチェルトも

かなりギャラントな印象のある曲ですから、これはこれでということになりましょうかね。

 

と、この曲のことをこのように知ったかできるのは、もう10年くらい前になりましょう、

旧ブログを書いている時分、コメントのやりとりがあった方がyoutubeにあるこの曲を貼ってらっしゃるのを見かけ、

一聴して気に入り、CDを探した…という経緯がありまして、ひと頃はかなりヘビーローテーションで聴いていたもので。

 

アカウントを変えてブログの新規開店に及んだところからすっかりご無沙汰しておりましたが、

お元気であろうかとものすごく久しぶりに覗きに行ってみましたら、去年くらいまでは継続しておられたようすが

窺えましたなあ。いやあ、懐かしい。

 

そもそも思い出すことをつれづれに…なども申しましたが、なにかの今の状況下では内省的になることもあり、

思い出話がやけに増えている今日この頃であるなと。単に老人力のたまものかもしれませんけれど。

 

と、そんなことはともかくモーツァルトですけれど、個人的にはとにもかくにもブルーノ・ワルターひいきでありまして。

もっともワルターひいきである点では、モーツァルトばかりの話ではありませんで、

ブラームスの4番など思いのほかパワフルなところがあったりして、いいですなあ(例によって個人の感想です)。

 

クラシック音楽を「聴く」ときに、作曲家を気に入ってその作品の演奏を探しまくるということもある一方で、

演奏家、指揮者もまた演奏家であると考えれば特定の指揮者の演奏にものすごく入れ込んで

その録音を探しまくるということもありましょうね。

 

そうしたときに、聴き始めの頃はとかく世評を頼りにするわけで「名盤紹介」みたいな音楽本がたくさんあるのも

需要があるからこそで、この曲を誰の演奏で聴こうかというときに、個人的にもかつては相当おんぶにだっこでしたなあ。

 

さりながら(ご存知の方はご存知のように)天邪鬼なたちでして、

例えば業界ナンバー1企業の製品にはあえて背を向けるようなひねくれ者ですので、

どの紹介を見ても「この曲の演奏はフルトヴェングラーで決まり!」みたいなようすでありますと、

それを見ただけでなんだか興が醒めたりしてしまうのですなあ。

 

ですので、独自路線を目指そうとするも、やっぱり闇雲にとはいかず、

当たりをつけてツボにはまったのがブルーノ・ワルターの演奏だったとうわけなのですね。

当時(中学生ころですかね)レコードを廉価に求める方法として中古盤で買うという方法を友人から教わり、

数寄屋橋にあった中古レコード店の「Hunter」にはずいぶんと通い、

ワルターのモーツァルト後期交響曲集なんつうセットものも(中古だからこそ)買ったりしたものでありました。

 

LP4枚組で、3枚に35番「ハフナー」から41番「ジュピター」までの交響曲が収まっていて、

残り1枚はおまけ的な小品集で、そうそう、この中に「ドン・ジョヴァンニ」序曲も入っていたのでしたっけ。

とまれ、個人的モーツァルト体験はここから始まったのでありましたよ。

 

ところで、ラヴェルの「ボレロ」のことですけれど、話の流れ的にやはり昔のブログに書いたことを思い出しました。

トスカニーニ指揮、NBC響ですので古い録音になりますけれど、「よくこれが残っているなあ」と思えるほどに

トロンボーン・ソロがへっぽこな演奏があるのですよね。

 

そんな話のついでに、ラヴェルとトスカニーニが曲のテンポについて言い争った…てなことも紹介したのでしたっけ。

ラヴェルはトスカニーニの演奏を速すぎるといい、トスカニーニはこのくらいのテンポでなければ聴けたもんじゃないと返す。

ラヴェルとしては具体的に「17分」を求めたようなのですが、トスカニーニの演奏は「14分余り」と確かに速いような。

ですが、ラヴェル自身が残した録音は「15分半」であったとは…。

 

いやあ、最初から最後まで、結局のところ思い出話になってしまいました(笑)。