ということで温泉に浸かってまいったわけですが、はて、行き先を申しておりませなんだ。
といってどこやら珍しい行き先でもなく、住まっております多摩方面からは各駅停車でも行けてしまうという
山梨の春日居温泉でありました。
エリア的にはお隣の石和温泉といっしょくたにされて、その一部とされてしまったりもしておるようですが、
石和温泉駅の方はJR中央本線の特急かいじも停まったりする駅ですが、
そのひとつ東京寄りに春日居町駅は完全に無人駅でして…。
むしろ石和温泉エリアとして広く知られる方が得策であろうということかも。
さりながら宿まで(自家用車でも送迎バスでもなく)歩くには春日居町駅で下車した方が近いものですから、
生涯で二度目となる春日居町駅利用。前の一回は、根津記念館を初めて訪ねたときでしたなあ。
と、それはともかくとして駅が無人なくらいとなれば、周囲には特段何もない。
さて昼飯をどうしたものか…と思いつつ、宿方向へと向かう道を歩いておりましたが、
すると突如として「欧風家庭料理とビールの店」という看板が裏道へと誘っておったのでありますよ。
誘いに導かれるまま、珍しくも?住宅が建ち並ぶ中へと入ってみますと、
果たしてそのお店はこのようにあったのですなあ。あたりのようすからは異彩を放って。
「Bierkrug」というお店の名前はドイツ語でビールのジョッキのことですな。
それだけにビールが豊富に置かれているというばかりでなく、この建物からして
そもドイツ人建築家の設計で、建築資材もドイツから取り寄せたものであるとか。
思いもよらぬ凝りようだったのでありますよ。
そうしたところで、またしてもビールをあれこれ楽しむことになったわけですけれど、
ドイツビールに交えて飲んでみた「SORACHI1984」、サッポロビールが出しているこの一杯は
後から鼻に抜ける香りが個性的な、なんとも魅力あるビールでありましたよ。
たぶん初めて飲んだわけではないと思うのですが、ここで初めて真価を知ったような。
食事メインで来られる方々には、どうやら種類豊富なパスタがおすすめであるようながら、
ビールのお供にはこのローズマリーを散らしてローストしたポテトや、
温かくもちっとして出てくるブレーツェル(プレッツェル)との相性がいいですなあ。
と、思わぬ場所で思わぬ食事をすることになったわけですが、
ふと思うのは「いったいこの店の客層ターゲットは…?」てなことなのでして。
立地からしてはおよそ観光客向けとは考えにくい、ただ近所の人も徒歩で来られる人は少ないでしょうから、
そうなると車利用となり、さすればあれこれ取り揃えたビールを試してはもらえない。
そうした想像から思い至るところは「果たしてこのまま立ちいくのであろうか…」と。
ともすると、余計なお世話でしかないのかもしれませんけれど、
何かにつけ「地場のお店、がんばれ!」てな思いを吐露しておるものとしては、
そこらへんが気になるものですから。
黙っていても人が行き交う観光地においてさえ、それらしい雰囲気だというだけでは立ち行きがたく、
体裁よく設えた店構えが廃墟化してたりするのに出くわすことしばし。
あちらこちらでそんな姿を見かけてきただけに、心の中で小さくエールを送ってしまった…
そんな店との出会いが山梨の春日居町であったのでありますよ。






