ちょいと前に「民藝 MINGEI -Another Kind of Art」展@21_21 DESIGN SIGHT を見たことで、

予て一度は足を運んでみるかと思っていたところへ赴くことに。


渋谷と吉祥寺を結ぶ京王井の頭線の沿線に目黒区が登場するのは

ちとピンとこない折に来ないところながら、どうやら目黒区になる駒場東大前で下車。

日本民藝館に行ってみたのでありました。


旧柳宗悦邸(日本民藝館西館)

駅を出て歩くことしばし、閑静な住宅地に入り込みますと、やがてかような建物が。

といって、これは日本民藝館ではありませんで(民藝館の西館ということにはなってますが)、

民藝運動の提唱者である柳宗悦の邸宅だそうで。


公開日限定で内覧できる日もあるようですけれど、訪ねた日はお休み。

で、その通りを隔てて向かい合わせに建っているのが日本民藝館本館でありました。


日本民藝館本館入口

向かいの柳邸との近似性ある建物で、

結構個性的な(いかにも注文建築の)邸宅が並ぶ駒場にあっても相当な存在感ですな。

館内は写真撮影できませんので、ようすの一端は同館リーフレットからちと借用してみると、

このような。いかにも民藝の品々が並んでいるらしい面持ちではありませんでしょうか。


日本民藝館の館内(同館リーフレットより借用)

と、開催されていた展覧会は、柳宗悦の「直観」というタイトル。

柳はこのような言葉を残しているそうです。

美しさへの理解にとっては、どうしてもこの直観が必要なのである。知識だけでは美しさの中核に触れることが出来ない。

柳自身がこの言葉どおりに「直観」でもって「美」を見出だして、

収集した品々を特段の解説やらもないまま、館内にさりげなく飾られている。

そんな展覧会であるというでありました。


特別展・柳宗悦の「直観」@日本民藝館

「直観」で「美」を見出だす…というだけありまして、ざっくり言いますと
日本民藝館の館内はあたかも柳宗悦のヴンダーカンマーであるかのようでありますね。


唐突ながら、子供はガラクタを集めたがりますなあ。
例えばサイダーの王冠やらビー玉やら、大人の目から見ると
どう見てもガラクタとしか思えないようなものでも、子供たちにとっては宝物ですよね。


ひと品ひと品それぞれが「これ、いいでしょ。きれいでしょ」という光を放っていると
子供たちは受け止めているのでしょう。


そうしたことに、大人は気付かなくなってしまっていますね。
柳の言う「直観」の中には、子供の目を取り戻そうという意味合いも

読み取れるかもしれません(個人的見解です)。


金銭的価値基準ではどんなに無価値なものであっても、
何かしらの「好さ」が見えたならば、それはその人にとって宝物になりますものね。


そんな自分にとってのお気に入りを集めたならば、並べてみたくもなろうかと。
それぞれが宝物であるひとつひとつをどのようにならべるのか、
これがまたひとつの楽しみということにもなりましょう。


個々の持つ「好さ」とは別に、それらが配置される中で響きあう「好さ」が生まれてくる。
その響きを楽しむために、ああでもない、こうでもないと並べ替えを繰り返したり。
そして、うまく並べられたときには(子供時代の松浦武四郎 もそうであったように)、
人に見てみらいたくなって、「どう?いい響きが聞こえるでしょ」…となりましょうなあ。


日本民藝館の館内を見て回ってヴンダーカンマーのようと言いましたですが、
見たところではその「美」なり、「価値」なりを「なるほど」という思いで
受け止められるものばかりではなさそうに思われますね、当然に個人差はありましょうが。


されど、柳宗悦という言わば「目利き」が集めた品々ということになりますと、
「直観」とはいえ審美眼に適った物であるとも言え、そうなると
そうした品々に「美」を見出だせないのは「見る目が無い」てな評価が下されそうな気も。


確かに、先に引用した柳の言葉には「直観」を大事にしている一方で、
「知識だけでは美しさの中核に触れることが出来ない」とあったように
「知識だけではだめ」、つまり「知識」のあることは前提としてそれだけではだめと
言っているのですよね。


こうした辺りが素朴な民芸品を「民藝」なるいささか高尚さを纏った世界へと
押し上げてしまっている気がしないではない。なんだか矛盾あるな…てなふうにも思えたり。


前に「MINGEI」展のところにも書きましたですが、
素朴なものを素朴に見つめて「いいね」と思う感覚を持つと、
日々の生活でさえ少しばかり豊かに感じられる気がしてくる。
そうした感性があって、少しずつでも知識が増えたらもそっと豊かになる。


そんなサイクルで考えることが、変に身構える出なく一般的な身の丈にあった
「民藝」への接し方なのかなと、個人的には考えたりするのでありますよ。