アムステルダム紀行 と称して昨夏に出かけたオランダの話をあれこれ書いておりますが、
そんな折にTVなどでオランダに関わりのある話が聞こえてくるというのは
なんとも不思議なものであるなと思うところでありまして。


例えば先々週でしたか、TV東京「美の巨人たち」 ではアムステルダム中央駅 を取り上げていて
何度も駅構内を通り過ぎながら「PLAY ME!」のピアノには気付かなったなあと思い返したり。


はたまた録画したまま埋もれてしまっていたEテレ「ドキュランドへようこそ!」の
「美貌のスパイ マタ・ハリ」という番組(確か9月の放送でしたか)を掘り出して見てみれば、
夙にその名を知られた世紀のスパイはオランダ人であったのですなあ。


スパイという点に関してどうやら実像はかなり疑問符が付くものであると紹介されてましたが、
マタ・ハリという東洋風の名前でもってエキゾチックなダンスを披露する踊り子の誕生には
オランダとインドネシアの関わり 抜きにはありえないところなのでもありました。
(「マタ・ハリ」とはインドネシア語で「太陽」の意だそうですね)


そして、CS放送を通じて英BBC制作によるドラマ(主としてはミステリーものですね)を
よく見るんですが、このほど「ミニチュア作家」なるシリーズもの(全3回)を見たところ、
あらあら、これが何と17世紀のアムステルダムを舞台にした物語だったという。


The Miniaturist

当然にアムステルダムを訪ねたときのことを思い出すわけですが、
こうした古い時代背景でドラマを作るのにもオランダは困らないだろうなと思ったものですよ。
(おそらくはアムステルダムよりももそっとこぢんまりした町でロケしたのでしょうけれど)

町の佇まいもさりながら室内のようすなども興味深いものでしたですな。
あたかもオランダ絵画を見るようで。


主人公は実家の借金の肩代わりを条件に、裕福な商人のもとに嫁いできた娘ネラ。
金で買われてきたような関係ながら夫ヨハンネスに対して

徐々に愛情を抱くようになっていくのですが、何やら夫は秘密を抱えているらしく…。


これにドールハウスとミニチュア人形という小道具立てがまた妖しさを醸すわけで、
ゴシックホラーとまでは言わないものの、実に雰囲気ある映像ではありました。


ま、話として評価するには評判のいい原作をこそ読んでみる必要がありそうですので、
これ以上触れるのは止めておいて、ひとつ「ん?!」と思ったあたりのことの方を取り敢えず。
それは、これの関係でありますよ。


アムステルダムのレンブラント広場

アムステルダムのレンブラント広場には画家レンブラントのきらきらした像の足元に
かの「夜警」を立体化した群像が置かれてあるのですなあ。


ですが、この「夜警」というのは絵の暗さから付けられた後世に付けられたものながら、
本当は白昼の出動風景であったとか。wikipediaには
「フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊」
というのがより適切てなふうに掛かれてありますね。


とまれ、ドラマの「ミニチュア作家」を見ていて「ん?!」と思いましたのは、
話の中にまるっきりこの像のような姿かたちをした「市民隊」が登場するのですけれど、
彼らの役割には「こういうこともあったのか」ということなのでして。



レンブラントの「夜警」というタイトルに親しんでいたものですから、
その「夜警」の印象から単純に夜回りのような役割だと思い込んでいたわけですが、
ドラマに出てきた彼らはいわゆる異端の取り締まりなども厳しくやっていたという。


考えてみれば、連邦国家としてあったオランダはいわゆる小さな州ごとに
治安維持のための警察力、はたまた対外的なところも考慮すれば軍事力が必要だったわけで、
そうしたいずれをも担うのが市民隊、もそっといえば市民軍ともいうべきものであったと。
いかつい武装もむべなるかなでありますなあ。


で、カルヴァン派プロテスタント主導であった権力構造の中では
「異端」の存在も自分たちを危うくする危機に含まれ、厳しく取り締まる。
そうしたことでもあったのでありましょう。


単なる夜回りであったら、要するに「火の用心!カチカチ」みたいなわけで、
およそイメージが掛け離れていたわけですが、遅まきながらようやくにして
軌道修正ができたのでありました。