ちょいと用足しで八王子 に出たついでに夢美術館を覗いてみたのでありますよ。
開館日はいつも夜7時まで開いておりますものですから。
ちょうど「浮世絵ねこの世界」なる展覧会が開催中でありました。
特段、ねこに関心ありという方ではありませんので、
かくもたくさんの絵に猫が描かれていようとはゆめゆめ思ってもおらず。
猫が大好きで懐には常に2、3匹の猫を入れていたとも言われる歌川国芳 はもとより、
他の作家たちにも猫尽くしの絵を描いていたのですなあ。
これは毎度の幕政改革で役者絵や美人画が統制対象にされたりしたときに、
猫を役者や美人に見立てて描くという方法が、むしろ猫人気で最初から猫ばかりで
画面を仕立ててしまおうということになったのでしょうかね。
版元も人気が無ければ出さないでしょうし。
ただ、明らかに猫に焦点を当てたものがある一方で、
何らかの情景を描く際に点景として猫を配した作品の多さが
先にも言いましたように思いもよらずということだったのでして。
このことは江戸期の人たちは猫が好きだったんだね…とも言えるわけですが、
風俗を描いた作品にたくさん出てきて違和感が無いのは、
それほどに猫が飼われていたということの証しでもありましょうね。
それも身分の高い人やお金持ちというに限らず。
理由としてもちろん「猫は可愛い」ということがありましたでしょうけれど、
ねずみという害獣の駆除に役に立つという実利的な側面もあったでしょうから。
「風が吹けば桶屋が儲かる」てな良く知られたことわざ(?)の中にも
猫とねずみの関係は出てきますね。
この話は明和の頃の『世間学者気質』という本に出ているそうですから、
ねずみ退治には猫というのが江戸庶民にも定番となっていたのでありましょう。
ですが、ふと思うところでは五代将軍綱吉の治世 で猫の存在感はどうだったのでしょうかね。
もちろん「生類憐みの令」は猫も対象になるわけですが、
どうしても犬の存在感が大きい中では「はて?」と思ったり。
ただ、猫もですが、ねずみまでも大切に扱わねばということになっていたとすれば
疫病発生にも繋がりましょうし、過ぎたるは及ばざるがごとしの法令だったんでしょうか。
と、猫の浮世絵から話がすっかり逸れてますが、そうしたあれこれを思う展覧会なのでありました。